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尾崎さんと遠距離恋愛を始めて、

十ヶ月が経った、4月上旬。


伸ばしていた髪が、ようやく胸のあたりまで来た。



短大生になったあたしは、
高校卒業と同時に、マックも卒業し。



この十ヶ月の間に、尾崎さんの手の中で
また少し大人になった。



身も心も、愛してくれる人がいて、
包んでくれる人がいる。



そんな幸せを感じながら、
尾崎さんが来週から

本社勤務になるという知らせを受けて、

今日は駅のホームまで、迎えに行くべく、

切符を買うために券売機に並んだ。



今日で遠距離も終わる。



長かったような、

あっという間だったような。



改札を抜けて、ホームに上がる前にトイレへ寄る。


鏡を覗き込み、買ったばかりの

薄いピンクの口紅を唇に乗せてから、

新幹線のホームへの階段を上がる。



やがて新幹線がホームに着いた。



新幹線のドアの前に立つ人影を見つけると、

ドアが開くのも もどかしく、手を振るあたし。


尾崎さんも、あたしを見つけて笑顔で手を挙げる。




新幹線のドアが開くとき、

ふわっと、春の風の匂いがした。



春の匂いは、

マックに入ったあの時と全く変わらない。



だけど、あたしと尾崎さんの

“新しい春”の風。



春の風の向こうに、

尾崎さんのいつもと同じ温かい笑顔があった。




今日からあたし達の間にも、

新しい春が来る予感がする・・・。


                           おしまい


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