主人が出て行ってからは、もの凄く落ち込んだ。
楽観主義で、自殺など一度も考えたことのない私が
「死んだほうがいいのかもなあ…」と思っちゃったほど落ち込んでいた。
半年位の間、ずっとグレーのサングラスをかけて歩いているかのような、
悲しみで現実が見えないような状態が続いた。
こういうとき、いつもは臭いと思っていたお線香の匂いが
心が慰められるように感じ、墓地を見るとそこで休みたくなった。
それで、死者がここで線香のよい香りに包まれて
安らかに眠っていることがすごくよく理解できた…
不思議な感覚だった。本当に、気持ちは「死」に
限りなく近づいていたのかもしれない。
そこまで落ち込んでいた私が、現在のように再び元気を取り戻すことが
できたのは、ともかく「時間」のおかげだと思う。
人間の脳の、記憶を消してゆく素晴らしい機能のおかげだ。
たとえばニューヨークの町のことも、懐かしくて帰りたくて、
帰国してから半年くらいは毎日のように思い出して泣きながら寝ていた。
だけど1年を過ぎると、「ん?夢の中で起きたことだったかな?」
という程度に記憶が薄まり、あまり悲しまずに済むようになってくる。
元主人については、これほど簡単には忘れられなかったけれど、それでも
徐々に記憶が薄れ、悲しみが軽くなってきたのだった。
立ち直るのにとても助けてもらったのが…これを言うと軽蔑される
かもしれないが、なんと!!日本の若い男性アイドル達だったのだ!!
アメリカ人である夫を忘れるのに、テレビに映る日本の若く美しい
男の子達は私の心を、誰にもできないパワーで慰めてくれた…。
「そうよ、私は日本の女の子(?)よ。日本は素晴らしいわ、こんなに
素敵な男の子がたくさんいるのよ。日本にいることは幸せなのだわ!」
そんなふうに思うことができた。それは、J事務所のメンバーの正月ライブを
母と見ていたときの私の気持ち。今でもはっきり覚えている…
母も、少しだけ明るくなった私を見て嬉しそうだった。
誤解されないように弁解しておきますが、私は今まで
アイドルのファンだったことはないし、美形の男性を特に
好んでいる訳でもありません。
(ちなみに主人は白人だけどひどく太っていて鼻も低く、
およそハンサムなタイプではない)
そして、自分がもういい年したオバサンであることも分かっています。
ただ、その瞬間だけは、本当にアイドルの方々に助けられたなと感じたので、
それに対して感謝の気持ちを表したい…と思ったのです。
以前は元主人に似た、太った白人男性を見かけると親近感を感じて
つい目で追ってしまっていたのが、現在は
街で日本人の格好いい男性達を見て、気持ちがさわやかになる、という
ことのほうが多くなりました。
もちろん、実際に素敵な男性と出会ってどうのこうの…なんてことは
ないのだけれど…気持ちが前向きになったことだけは確かだ。
日本の男性方、本当にありがとう。