以下、実話。(hiko)
僕はかつて、父が経営していた建築関連の会社で
勤務していたことがあります。
(この会社は解散いたしました。倒産ではありません。)
建築業界を知らない方にちょっとだけ説明をいたします。
どの建設屋もそうですが、一つの工事現場がきれいに片付いてから
次の現場を手掛けるのではなく、たいがい複数の現場を
並行で手掛けるスタイルで作業を進めます。
さて、そんな会社で仕事をしていた昔の話なんですが・・・
当時いくつかの現場を持っていたhiko建築会社(仮名)。
その日僕は木造の、それもかなり大きな注文住宅に
一日中かかりっきりになっていましたが、夕方になっても
仕事が終わらず翌日もまたくることになりました。
ま、この辺はスケジュール通りではあったんですけどね。
しかし事務所に帰ると、予定が急に変わり明日は別の工事現場に
行くことを伝えられました。
今日行った現場に行くつもりだったので
道具をすべて置いて来てしまいました。
何だよ、と少し思いながらまた道具を取りに
今日の現場へ車で向かいました。
現場に到着したのは午後8時近かい時間でした。
工事途中の建物は、まだ屋根と外壁ができたぐらいの
もので、大工さんたちがせっせと作っている最中ですが
当然この時間では誰もいなく、建物の中は真っ暗です。
大工さんたちは室内の組み立てを行うので
照明用の電球をぶらさげていますが、僕はそれに灯りをつけずに
中に入っていきます。真っ暗だけど今日昼間来て構造は分かってるしね。
外の街灯や月明かりがサッシが組み込まれていない
窓から、光がかすかに建物の中を照らしています。
どんどん奥に進み、道具を置いた部屋に入り
道具にかぶせたシートをはぐり、しゃがんで
道具を物色していると手元にあたっていた光が
影で消え一瞬真っ暗になります。
hiko「ん・・・?」
後ろを振り返ると、僕のすぐ後ろ・・・僕の真後ろに、
大男が外からの光を遮るように逆光で浮かびあがって立っていました。
「誰?」
立ち上がると目の前の作業着を着た男は僕をニヤニヤ笑って見ていました。
「えっ、水道屋さん?」
「あ・・・ああ。(ニヤニヤ)」
「寸法を測りにきたの?じゃ、電気つけてあげるよ」
その大男、無言でニヤニヤしながら僕を見ています。
大工さんが使っている照明電灯に電気をつけて
室内が暗闇からパッと明るくなりました。
「これでどう?」
男の人のほうに目を向けると
さっきまでいた男の人がいません。
本当に煙か何かのように消えてしまった感じです。
「水道屋さーんっ!」
と呼ぶも男の人は建物からいなくなっていました。
帰宅して、僕と父との会話。
hiko「さっき水道屋が来たてよ」
父 「え、水道屋?水道屋が(現場に)入るには
(工程上)まだ早いだろ」
hiko「あ!そうだね・・・。まだ先だよね・・・。
じゃ、さっきの職人みたいの誰だったんだろ?」
父 「(考えて)・・・現場ドロかな」
工事現場では置いてある資材や道具を夜中に盗んでいく
『現場泥棒』がよくあります。
hiko「現場ドロ・・・だったのかもね」
翌日、僕が仕事の休憩中に
その話を職人さんたちにしていたら
話を聞いていた一番年をとった職人さんが
「hiko、よかったねぇ。やられないで・・・。
あいつら刃物持ってるから、危ないんだよ。
自分らがヤバイと思ったら構わず刃物を
突きつけてくるから、次は気をつけな」
そういえばあの時、あの男・・・
作業ジャンパーのポケットに両手を突っ込んでいました。
そして暗闇中で僕の肩を叩けるほどの近さで
道具をあさっている僕に声をかけるわけでもなく
上から見下ろすように立っていた。
後ろには目がない
後ろには目がない
後ろには目がない
こういう状況に出会う人は少ないでしょうけど
気をつけたいものですね。
※
ピンクパンサーのテーマ
A Shot In The Dark(暗闇でドッキリ)
ピンクパンサーシリーズ第2弾!