息子の弘一は、本が好きだった。
とくに夜、床に入ってから本を読むのがくせになっていた。
「ひゃあっ、出た!」
と、パジャマ姿の弘一が、本を片手に握り締めて、
部屋からとびだしてきた。
「どうしたんだ・・・。十五歳にもなって、みっともない・・・」
父親の私は、夜遅く子供のように騒ぐ弘一を叱りつけた。
だが・・・。
「お父さん、竹が・・・」
弘一の言葉を聞いたとたん、私も真っ青になった。

弘一の部屋にきてみると、青竹の先が
四、五十センチほど畳を突き破って出ている。
ごく普通のものだが、わが米山家にとっては
恐ろしい村の呪いの竹なのだ。
米山家は代々静岡県の三島市に住んできたが、
十二年前、突然この青竹の呪いを受けるようになった。
部屋に竹が出た日から、井戸の水がぷたりと出なくなり、
私の父親が、急にどす黒い血を吐いて倒れた。
あわてて医者を呼んだが、病名のわからない奇病だという。
父親は、全身が紫色になって、だんだん意識がなくなり、
数日後に死んでしまった。
すると、井戸野水がもとどおりに出はじめ、
部屋の青竹はひとりでに枯れてしまった。
この奇怪な現象は、その後二回起り、
妻と娘の命をうばっていった。
「たぶん、なにかの祟りか、呪いだ」
私は、何度か神主にお祓いをしてもらったのだが、
効きめはなかった。
そのうえ、恐ろしい呪いの竹が、
こんどは息子の部屋に出たのである。
翌朝、調べてみると、蛇口をひねっても
水道の水が出なくなっていた。
「いやだ。僕は死にたくない!死ぬのはいやだ」
弘一は泣きわめいた。
これまでは、竹の出た部屋に寝ていた者が、
かならず死んでいるのだ。
「大丈夫だよ。お祓いをしたんだから・・・」
私は、弘一をなだめた。
しかし、むだだった。
翌日、弘一はどす黒い血を吐いて倒れ、
床に伏してから八日目に、息をひきとった。
「きっと、この家が呪われているのだ」
とうとう私は、家をすっかり壊し、別のところに移った。
しかし、まだ、私は恐ろしくてたまらない。
米山家の者が死に絶えるまで、
呪いがとけないのではないだろうか?
いちばん最後に残された私の部屋にも、
いつ青竹が出るかわからないのだ・・・。
『世にも不思議な幽霊談』(中岡俊哉・著、二見書房)より
この青竹の話って、もうずーっと昔に
本で読んで知っていました。
青竹が畳を突き破って出てきたら怖いなあ~
なんて思っていました。
で、あるとき。
僕(hiko)が父親と話をしていたとき、会話の流れで
竹が畳を突き破って生えてくる話を
したことがあるんです。
(僕の父親は建築の仕事をしていました)
すると、
「むかしは、本当に竹が部屋に生えてきたことがあるから
別に珍しい話なんかじゃないよ」
「ええっ!本当!」
「むかしは(畳の下に)エンコ板を張っていたから、
その隙間から生えた竹が、また畳の境目から上に
伸びてきたことは、よくあったことなんだ」
「ふーん・・・」
「今じゃエンコ板でなくて、コンパネを張るから、
隙間ないし丈夫だから、床下から竹が生えてくるなんて絶対ないよ。
それと畳を突き破るってのは、聞いたことがないな。
(畳の)境目から生えてきた、の間違いじゃないか?」
そりゃそうだな・・・と、親父の言葉に思いっきり納得しました。
これが、エンコ板です。
昔はこれを畳の下にみっちり敷き詰めていました。

こっちがコンパネ。
ボンドでしっかり重ね合わせた合板で、
隙間なく敷き詰め、釘を打ち込みます。
竹がこれを破ったら、かなり怖いです(笑)


結論!
今の建築技術で、竹が床と畳を突き破って
生えてくることは絶対ありません!
終わり
※2010年9月14日の記事の再掲載です。
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