A「誰に聞いたんだ…?」
B「□□(別地域)の奴に。いわくつきの家らしいよ。」
A「面白そうだな。」
B「だろ?今から行ってみようぜ!」
AB兄弟はノリノリだったが、年少者で臆病なCは尻込みしていた。
B「Cはビビリだなwお前夜小便行けなくて寝小便が直らないらしいなw」
C「そんなことないよ!」
B「やーいビビリwおい、Cはビビリだから置いてこうぜw」
C「俺も行くよ!」
俺たち4人はわいわい騒ぎながら県道を峠方向に歩いていった。
集落から歩いて10分。
製材所や牛舎を抜けると、山側に大きな墓地がある。
そこからさらに5分程歩くと、
Bが言う「鎖の道」が右手にあった。
車に乗ってたらまず気付かないであろう、
幅2m程藪が薄くなっているところを覗くと、
5m先に小さな鉄柱が2本あり、
ダランとした鎖が道を塞いでいる。
鎖を跨ぎ、轍が消えかけ苔と雑草だらけの砂利道を少し歩くと、
道は徐々に右へとカーブしていく。
鬱蒼とした木々に囲まれて薄暗いカーブを曲がっていくと、
緑のトンネルの先からひときわ明るい光がさしこんでいた。
そこで川にぶつかり、道は途切れた。
今居る道の対岸にも、森の中にポツンと
緑のトンネルのような道が見える。
対岸まではせいぜい10~15mぐらい。
川幅ギリギリまで木々が生えてるため左右の見通しは利かない。
足元には橋台の跡と思われるコンクリートの塊があった。
A「やっぱ行き止まりじゃねーか」
B「まぁ待ってよ。ほら、コレ橋の跡でしょ?
あっち(対岸)にも道があるし。」
A「ほんとだ」
B「戻ろうぜ。旧道の目印も聞いてあるからさ。」
そこから引き返してカーブを曲がっていくと、
カーブの付け根あたりでBが道の脇を指差した。
B「ほらこの石。これが旧道の分岐だ」
人の頭ぐらいの大きさの、
平べったい石が2つ並んで落ちていた。
ひとつは中心がすこし窪んでいて、
B曰く昔はここに地蔵があったんだとか。
県道方面から見てカーブの入り口を左側、
濃い藪が広がってるなかで
確かに藪が薄い一本のラインが見える。
藪の中は緩い土がヌタヌタと不快な感触だが、
このライン上は心なしか踏み固められているように思えた。
藪を掻き分け、笹で手を切りながら進んでいくと、川に出た。
B「ほれ、橋だw」
Bがニヤケながら指差したのは、古びた吊り橋だった。
A「橋ってこれかよw行けるか?これw」
B「ホラ、結構丈夫だし行けるだろw」
まずはBが先陣を切って吊り橋を渡りはじめた。
ギギギギと嫌な音はするけど、見た目よりは丈夫そうだ。
Cは泣きそうな顔をしていた。
いっぺんに吊り橋を渡って橋が落ちたら洒落にならないので、
一人ずつ順番に対岸まで渡ることになった。
一番ノリノリのBが渡り終えると、次にA、
そして俺が渡り終えて最後に残ったCを呼ぶが、
モジモジしてなかなか渡ろうとしない。
B「おいC!何怖がってんだよ!大丈夫だよ俺らが渡れたんだから
一番チビなお前が渡っても橋が落ちることはねーよ!w」
対岸からあーだこーだとけしかけて、
5分近く掛かってようやくCも渡ってきた。
涙で顔をグショグショにしたCの頭を、
笑いながらBがグシャグシャと撫でていた。
橋までの道と同じような藪が少し薄いだけという、
獣道にも劣る旧道を2~3分程歩くと、
右手から苔と雑草だらけの砂利道が合流してきた。
流された橋の先にあった車道だろう。
そこから100m程だろうか、
クネクネとS字カーブを曲がっていくと、
広場のような場所に出て2軒の家があった。
元々は他にも数軒家があった形跡があり、
奥にはすぐ山肌が迫っていた。
家があったと思われる場所は空き地になってる為、
鬱蒼とした森の中でかなり広いスカスカな空間が不気味だった。
2軒の家は平屋建てで、道を挟んで向かい合うように建っている。
どちらも明らかに廃屋で、左手の家には小さな物置があった。
広場の入り口には風化して顔の凹凸が
なくなりつつある古い地蔵があったが、
何故か赤茶けていた。
AB兄弟はすげーすげーと興奮してたが、
俺とCは怖くなってしまい、黙り込んでいた。
Cはキョロキョロしながら怯えている。
どちらの家も玄関の引き戸や窓は
木の板を×印の形に打ち付けて封鎖されていた。
B「どっかから入れないかな」
AB兄弟は家の周りをグルグル眺め回していた。
とても帰ろうなんて言える雰囲気ではないが、
Cは小声で「もう帰りたい…」と呟いていた。
物置がある家の裏手からBがオーイ!と声をあげた。
皆でBの声のする方に言ってみると、
裏手のドアは鍵が閉めてあるだけで、
木の板は打ち付けられていなかった。
B「兄貴、一緒にコイツを引っ張ってくれよ」
Aはニヤリと笑ってBと二人でドアノブを引っ張りはじめた。
C「ダメだよ、壊れちゃうよ!」
B「誰も住んでないんだから、いいだろw」
せーの!と掛け声をかけながら
AB兄弟は力いっぱいドアノブを引っ張った。
続く
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