【連続小説】薔薇の棘(バラのとげ)第1話(※再掲載) | Let's easily go!気楽に☆行こう!

Let's easily go!気楽に☆行こう!

映画、写真、B級グルメ、格闘技、そして少しばかり日常を語る雑記帳です。


今、テレビでストーカーの放送している・・・・。

あれは怖いよな、と考えていたところ

2011年に掲載した「ある記事」を思い出しました。

これから書く話は実際にあった話を

ほぼ忠実に書かれていますが、

特定のモデルについては言及いたしません。

(hiko)









初夏を思わせるような陽気の土曜日の午後-。

藤川正(仮名)は、東京の新宿駅近くにある

ある高層ビルにひとりで向かっていた。

向かう理由は、「お見合いパーティー」に参加するためだった。

歩きながら正彦は、1カ月ほど前に行った、

別のパーティーのことを思い出していた。





◇第1話~


「ついこの間、お見合いパーティーに取材に行ってきたぜ」

話しを切り出したのは正彦の古くからの友人で

テレビ局で報道を中心に、主に外回りを担当する

VE(ヴィデオ・エンジニア)の神岡駿(仮名)だった。

神岡は話しを続けた。

「パーティーっていうから、もっと堅苦しいものかと

思っていたら、普段着で来ている人もいるのね。

で、主催者に聞くと、やっぱり怪しいパーティーってのも

あるらしいんだよ。取材に行ったそのパーティは健全だって

主催者が自分で言ってたけど、テレビに向かって自分を

悪くいうやつなんかいないよな」

正彦は、あまりそういうパーティに特段に興味がある訳では

なかったが、神岡のあまりの熱心な話しぶりに適当に

頷いたりして聞いていた。

「でさ、最後はカップリングが成立したら主催者が

発表するんだけど、これがまた、結構な確率で

カップルが誕生するわけよ!その日はまた成立率が

高かったとは主催者も言っていたけどね」

「へぇ、そうなんだ」

「その主催者から、今度は仕事でなく、いらしてくださいよと、

タダ券もらったんだけど、正彦も今は彼女いないんだろ?

パーティにちょっと行ってみないか?」


強引な神岡は正彦から「うん」を言わせると

さっそくパ-ティースケジュールなどを確認して

連絡をすると言った。

パーティーか・・・正彦は、あまり気乗りはしなかった。


数日後、正彦は神岡とも友人である田沼真一(仮名)と会っていたとき

「今度、神岡とお見合いパーティーに行くんだよ」

「えっ、本当!あのさ・・・」

と田沼は自分の会社の男性同僚数人が、この何ヶ月かで

パーティーに参加して彼女ができた話をすると

「正彦、お前が行くなら俺も連れて行ってくれよ!」


結局、神岡が行ったパーティーへはスケジュールが

会わなかったので、違う主催のパーティーへ行くことになった。

正彦たち一行は待ち合わせをした後、三人で会場に向かった。

「いい女がいたら、正彦たちとは完全に別行動とるからな!」

田沼が熱くなっているのが、正彦には可笑しくてしょうがなかった。




会場に入ると場内は室内の左右に分けた感じで椅子が並び置かれ、

片側に男性、片側に女性が座っていた。

「パーティーは司会の進行で、ちょっとしたゲームみたいな

感じで自己紹介を順番に続けて、後半はフリートークになるから

前半で目ぼしい女がいたら、積極的にいくんだぜ。

ソコから先は、みんなの腕のみせどころって訳さ」

神岡はごく簡単な説明をした。



パーティーが始まると司会が全て進行を仕切るので

言われたとおりに、正彦たちは次々と女性たちと

挨拶と自己紹介を繰り返していた。

そしてパーティー後半、フリートークの時間がきた。

場慣れしている人たちに、おそらく一番重要なイベント・タイムである。

ここで異性に好印象を与えられないと、カップルとして成立しないのだ。

このフリータイム中は自由に席を移動でき、

狙った異性に再接近できるのである。

ただし、男性が気に入る女性というのは、

たいがい他の男性も目をつけているので

静かだが、実はかなり熾烈な争いになるのだ。



「それではフリータイム、スタートでーす!」

イベント進行がよく分からない正彦はぼやっとしていたら

司会者がフリータイム突入宣言をしたので少しあわてた。

いきなり周りは男女がお目当て同士、あるいは適当に

カップルとなり話し込んでいた。

ちっ、出遅れたか!

正彦は要領が飲み込めないでいたので、パーティーに

乗りにくかった。

今回のパーティーでもっとも鼻息の荒かった田沼は

早速、お目当ての女性にアタックしていた。



ぼやぼやしてたら

わたしは誰かの

いい子になっちゃうよ♪

(山本リンダ/狂わせたいの)



そんな歌が聞こえてきそうな状況で、

正彦もたまたま近くにいた女性と会話をするものの、

何かしまらない会話が続いた。

「たまたま近くにいた」というだけの女性選びだっただけに

正彦自身、あまり乗り気ではなかったせいもある。

元来、正彦は趣味が多い上に、話好きで人見知りもしない性質なので

初対面でも、あまり苦にしないのだが、今日はどうにものらない。

女性と話しながら正彦は、ときおり視線を会場内に移し

神岡と田沼を目で追った。

『ふ・・・あいつら、必死だな』


そうこうしているうちにフリートークは終了し、

男女それぞれに離れて、対面する壁際にさがった。


そして、カップル発表となった。

これは参加者それぞれが気に入った異性の胸番号

(入場時に番号を書いたネームプレートを渡される)

を紙に書いて、主催者に渡し、それを会場裏で照合し

男女双方のお気に入りが一致したカップルを発表するやり方だ。


そして発表!


次々とカップル成立が発表されてゆき、

なんと友人のVE・神岡がお目当ての女性と

カップル成立となったが、正彦と田沼は不成立で終わった。

正彦と田沼は、お互い少なからず自信があったので

軽いショックがあった。


パーティー終了後、会場から二人で立ち去る神岡を

見送った正彦と田沼は近くの喫茶店に入った。

席に着くなり

「チックショー、神岡に負けた・・・!」

田沼は相当腹立たしかっただろう。

「正彦、俺・・・絶対彼女をつくるからな!

それも近いうちに絶対だ!」

その自信があればパーティこなくてもいいだろうにと

正彦は考えたが、「そうだね、お前ならできるよ」

と適当に返事した。



2週間後、正彦は用事で田沼に電話をしたところ、

「俺、彼女できたぞ。すっげえ可愛い子!

近いうち紹介すっからさ!昨日は横浜に行って・・・」


電話を切った正彦は、取り残されたかのような

孤独感を少しだけ感じた。


神岡や田沼に彼女ができただぁ?

くそっ!俺のケツに火がついたぜ!

俺もいっちょ本気出してキメてやる!


正彦はちょっとだけ熱くなったが、しばらくして

じゃ、どこでキッカケを作るか冷静に考えた。

そういえば、と、この間のパーティーで話した女性が

言っていたことを正彦は思い出した。


「お見合いパーティーに来る女性は一人参加の人や

友達何人かで来る場合とか、いろいろですけど、

男性の場合はたいがい一人参加ですね」、と。


そうか、お見合いパーティーか。

男は一人参加が多いって言ってたな。

正彦は前回は初めての参加で要領が掴めなかったから

イマイチ手際が悪く、周りの人より対応で

1テンポ遅れていた。しかし、今度は何とか

進行もつかめたから次は案外いけるかも。


よし、パーティで再チャレンジだ!

パーティーで受けた借りは、パーティーで返す。

正彦は不思議とやる気がみなぎってきているのを感じた。




<第1話 終わり。> 


第2話に続く




この後、リベンジだと意気込んだお見合いパーティーで

正彦は、一人の綺麗な女性と知り合うことになるのだが・・・。

まさに想定外の出来事が次々と、正彦にふりかかる!



※この物語は、実際にあった話に基づいて書かれています。