日本において、十月とは忙しい時期も終わり、冬支度を準備していく。
しかし、私たちの村ではハロウィーンを毎年、十月の終わりにしている。
村おこしの一貫としてだ。なにせ、過疎化していく村では何かしないと
補助金も出なければ、人手も去っていく。
そこでいつの間にか、村おこししてのハロウィーンが行われるようになった。
その理由にそれほどの理由はない。しかし、ハロウィーンとは西洋の行事であるが、
この村にはハロウィーンがよく似合っている。
元々、この村にはある時期に仮装をする風習があり、甘いモノを好む人が多く、
生活用品に困っても、お菓子には困っていない。
十月の終わり。
つまり、三十一日に村の行事として大々的にハロウィーンを行う。
地元の子供達はもちろん、ほかの所からも子供達が仮装してこの村へとやってくる。
そして、仮装コンテスト、『ご馳走をくれないと、悪戯するぞ』と村の人たちを脅して、
お菓子をもらったりと西洋でよくあるハロウィーンの祭りを行っている。
過疎化の一途をたどる村もこの日ばかりはハロウィーンの陽気な
妖精(モンスター)達のように、村は陽気になる。
しかし、この日には陽気な妖精の他にもいろんな者達がやってくる。
その者達は陽気に誘われたり、人気に紛れてやって来たり、人を脅かすためにと
その者達の個々の目的や興味などの理由からやってくる。
そして、ここにも一人。
普通にスーツを着た中年の男は小さめのカボチャのランプと随分大きい旅行カバンを
手に持って、仮装した子供達の前へとやって来た。
子供達は陽気に「トリック・オア・トリート?」と叫んでいる。
しかし、男は子供達を集め、こう語りだした。

『さあ、さあ、よってきなさい。甘いお菓子と怖いお話をあげるから。
怖い話を聞きたくない子は甘いお菓子はあげないよ。
それに怖い話はこんな陽気な時しか聞かない方がいいからね』
子供達は相談を始める。顔も知らない者同士も相談をする。
そして、中には逃げていく者もいるが、大半の子供達は男の前へと残っている。

『おやおや、君たちは逃げないだね。それじゃ、怖い話を始めよう。
さて、はじめだから少しおかしなお話をしようかな』
~灯り火~
ハロウィーンの夜、男の子はお化けに出会った。
そのお化けの手にはランタンを持っていた。ランタンといっても金属製ではなく、
時代劇に出るような紙製の提灯だがね。男の子ははじめはそれは
仮装した人間だと思っていた。そう自分もお化けの格好をしていたからね。
しかし、提灯の明かりがお化けの顔を照らして、その顔がじっくり見てみると
明らかに仮装したものではなかった。その顔は動物のイタチのような顔で、
明らかにそれはきぐるみではなかった。
そして、動物の特有な臭いや気みたいなモノが発しられていた。
男の子は間違いなく、それがお化けであることに気付いた。
しかし、気付いたときには足が動けなくなっていた。お化けの方は何もせず、
じっと男の子を見つめている。
そして、しばらく彼を眺めているとお化けは彼に対してこう訪ねた。
「何か、ようかい」
男の子は驚きは消え去り、呆れかえった。
それはそうだ。男の子の目の前にいるのは妖怪だったのだから。
『ふっ、ふふふふ。これはほんのお遊びだよ。何せ、秋の夜中ほど
恐怖に対して敏感になるモノはないからね。
さて、心がほぐれた所で本当に怖い話を語っていこう。
しかし、次からは怖い話だよ、逃げるなら今の内だよ。
しかし、甘いお菓子はあげないよ』
~木霊~
これはハロウィーンとは少し関係がないが、森のお話だ。
森というのは大抵いろんなモノが住んでいる。例えば、リスをあげてもいいが、
これは一般的に森の中にはあまりいないんだ。むしろ、動物でなく、
昆虫なら、多種多様にいる。
森というのは、いや、自然というのは小さな生き物達がせっせと作った世界に
我々動物たちがその作った世界の一部をもらって生きているんだ。
人間だって、そうさ。
昔は人間だって、夜の森はよほどのことがなくちゃ入らないし、そうじゃなくても、
悪い心を持って入ったりすると罰が当たると信じていたんだ。
今では少しばかり、それが薄れているがね。
しかし、これは迷信じゃないんだよ。悪い心を持って森に入れば、
本当に罰が当たるんだよ。今から話す話がある森に入ったひとりの悪い心を
持った男のある結末なんだから。
その男はいろんな悪さをしていた。と、いても、最近の事件のように人は
たくさん殺してはいない。しかし、人の迷惑になるようなことばかりして、
人々を困らしていたんだ。そんな男がみんなから逃げるようにある森へと逃げ込んだ。
もう、男が逃げ込んだ頃には周りは暗くなり始めて、その男を捜していた者達も
今日はあきらめようと家路につこうとしていた。男には帰る家はない。
それに森から出ることは捕まる可能性がある。男はしょうがないから、森に寝ることにした。
男はうとうとし始めると、こんなこそこそと音が聞こえ始めた。
はじめは葉が風に揺らされてなっているのかと思ったが、次第に音は声へと変わっていった。
声はこんな風に語っていた。
「ああ、あの人だね」
「うん、あの人がわるさをするんだ」
「じゃ、私たちもなにかされるのね」
「そんなことはないだろう。いくら何でも、彼一人で俺達をどうこうしようとは思わないよ」
「でも、こわいわ」
男は周りに人がいるのだと思い。周りをうかがいながら、隠れた。
しかし、いっこうに声を出している者達が何処にいるかは分からない。
声は近くから聞こえている。いくら暗くなったとはいえ、近くに人がいるかいないかはわかる。
しかし、それでも周りには人がいない。そして、その声はまだ続いている。
「しかし、あの人を私たちの声で起こしてしまったね」
「そうだよ。起こさなければ、まず何もしなかったよ」
「いまさら、言ってもしょうがないよ。今はもしもの事を考えよう」
「そうだね」
「じゃ、どうしたらあの人から私たちを守るの」
「そうね」
しきりに声は相談している。声の話の中に出てくる、あの人とはおそらく
男のことだろうと、男は分かったが、しかし、その声の主はまだ分かっていない。
男は自分を追ってきた者達が近くにいるのだと思っているが、男を捜している者達は
今は家の中でゆっくりと寝ている。まあ、これは男には分からないことだけど。
「そうだ、こうしよう」
「え、何」
「なんだい」
その声は小声を出して語り始めた。
「いいかい、まず僕があの人を縛る。そしたら、みんなも縛るんだ」
「でも・・・」
「心配ないよ。まだあの人は僕らのことに気付いていない。それに・・・」
男はだんだんと不安になっていた。何せ、探しても探しても、声を出している者達が
見つからないのに声ははっきりと聞こえている。それに自分を捕まえようとしているのだから。
「・・・今あの人は僕の下にいるのだから」
その言葉に男は上を見上げた。しかし、上には誰いない。
上から見下ろしているのは木だけだ。
そして、声はなにやらさっきよりも小声で相談を始める。
その声はなにやら隠し事を秘めたひそひそ話のように進んでいく。
「それで何で縛るの」
「もちろん、僕の根っこさ」
「じゃ、君が縛った後、僕はこのツルであの人の体を縛ろう」
「私も協力するわ。そうね、私はこの枝を・・・」
男は驚いた。心臓が止まるぐらいに。
その声の主が周りの木々であることに。そして、男は足がふるえた。
なにせ、相手は人間じゃない。捕まったら、本当に何をされるか分かったモノじゃない。
男はふるえる足を一生懸命前へと出し続けた。一歩でもしゃべる木から離れるために。
男はその足で人のいる所へと逃げ出した。
「よかった。あの人が逃げてくれて」
「ああ、僕らが根っこやツルを動かせるわけがないんだから、
あの人には脅かして逃げてもらうしかなかったんだ」
「しかし、うまくいったモノだ。本当に悪い心を持ったモノなら、
こんな脅しには載らなかっただろうな」
「それ以前に私たちの声なんて聞こえないわ」
木々はそうささやいているが、すでに男は森の中にはいない。
男は必死に灯りのあるところへ逃げていたのだから。
男やっとの思いで、一軒の家へとついた。
その後、男はどうしたかは別のお話だ。しかし、少しだけ語ると男はそれ以来、
悪いことを控えるようにはなったとだけは言っておこう。
『どうだい、怖かったかね。おじさんはね、以外に恐がりだから、
怖い話をするのも一苦労なんだ。でもね、甘いお菓子は好きなんだ。
特に・・・。うん、今の話は怖くなかった、て。じゃ、とっておきのお話をしよう。
誰もが怖がるような話を』
~髪を切る、顔を剃る~
これはある散髪屋での話だ。
ある男はいつもとは別の散髪屋に行き、髪を切ってもらった。
男は髪を切り終わり、顔を剃るっている時、目をつむっていた。
そして、いつもとは違う感じがしていた。顔を剃っているのだが、
なにか剃られていったところが、すうすうする感じになっていったんだ。
でも、痛みは感じてはいない。普通に顔をあの散髪屋で使われている顔を
剃るかみそり剃られている感じだ。
男は別に気にすることはないと気にしてはいなかった。
そしていると男は、うとうと眠気に誘われてきた。
「どうも、この人の顔はよく剃れるな。どう思う」
店主が誰かに対していっていた。男はうとうととしていて何の事を言ってるかも
気にならなかった。
「そうかい、俺にはそんな風には見えないがね」
「それもそうだ。客のあんたに言っても仕方がないな」
どうやら、店主は客と話しているようだった。
「でもな、この剃り具合は良すぎるぜ。何せ、皮を薄く、薄く、剃っているような感覚だ。
この人、自分の顔を見たら、随分驚くだろうな」
「そうか、俺にはそんな感じでやってほしいモノだ」
「あんたは無理だ。若くないから、ひげを剃るのも大変なら、産毛も大変だからな」
店主と客は笑っている。
そして、店主は顔を剃る泡を取りにその場を立った。
男は店主達の言っていたことが気になり、顔を触ってみる。
しかし、何も変わっていない。変わった点と言えば、いつもよりすべすべに顔の
ざらざら感がなくなっていたぐらいだ。
男はどうやら、ここの店は顔を剃ると言うことに関してはプロなのだと思った。
そのまま、また目をつむり、店主が顔を剃りだす。
そして、しばらくすると顔を剃るのが終わった。
男が顔を見たとき、自分の顔の変化に驚いた。
男の顔は皮が薄くなっており、人体模型の顔の様に筋肉の赤みと白い線が
うっすらと顔に浮かび上がらせていた。
その顔は誰が見ても、驚くことは間違いないだろう。当然、自分自身も。
「どうだい、うまい具合に顔が剃れただろう。あんたが、顔を剃ってくれといったから、
いつもより力が入ったんだ」
店主はその後にこう言葉を繋げる。
「しかし、あんたは変わった客だ。普通なら、顔の毛を剃ってくれと言うのに、
顔を剃ってくれと言うんだ。私も顔を剃るのは久しぶりだから、緊張したよ」
そういって店主は笑い始めた。
店主は文字通り顔を剃っていたのだ。

『どうだい、この話はさっきまでの話と違った怖さだけど、怖くなかったかい。
次で最後にしよう。そうしたら、約束通り甘いお菓子をあげよう。
今、逃げて帰ってしまうのは損だよ。甘いお菓子はお預けだからね』

『そうだ、最後こそはハロウィーンの話をしよう』
~ハロウィーンの夜~
ハロウィーンというのは何時、何処で、どのように、始まったかは分からない。
お化けが出る時期として恐れられたのかどうかも、分からない。何せ、
日本の行事でないからね、詳しいことは分からないのだよ。
しかし、日本でもこの頃には要するに十月の終わり頃だね、
日本でもこの時期はお化けが出るんだよ。
そんな話だよ。ハロウィーンと日本の妖怪達の話だ。
確か、この村にこないだ来たときに聞いた話だ。ある年のハロウィーンの際に
十人近く子供達は夜を過ぎても、帰ってこなかった。
心配しても、探しても見つからない。仕方がないので大人達は明日の朝調べることにしたんだ。
そのころ、子供達は肝試しをしていたんだ。
こんな噂が子供達に出回っていたからだ。
「知っているか」
「ああ、あの噂だろう」
「ああ、出たらしいぞ」
「裏山からだって」
「いや、林からだよ」
「実際に見た子がいるんだって」
「嘘だろう」
「お化けはいるんだよ、裏山には言っていたんだ」
「どうせ、みんな噂だよ」
毎日がこの噂で子供達の中ではつきなかった。しかし、噂はいつも同じ事の繰り返しだ。
しかし、子供達は噂を繰り返しても、繰り返しても飽きなかった。
そんな十月の終わりに一人の男の子がこんな事を噂の中にこんな話題をのせた。
「十月の終わりに俺は裏山に行く。付いてきたい奴は付いてこい」
その噂はみんなに伝わって、十人のグループを作りだした。
それが夜になっても帰ってこない子供達であった。
子供達はいまは夜の山をじっと観察している。
じっとしていても、何も来ない。それでも恐怖はやってくる。
物音でも、動物の鳴き声でも、静寂でも、自分の心臓の音でも……
子供達の恐怖はピークに達している。でも、誰も泣き出そうとも逃げ出そうともしない。
その理由は分からないが、多分、肝試しだから泣いたら恥をかくことになるから、
誰もが逃げも泣かなかったのだろう。
そうして、恐怖をしながら時を過ぎるのを静かに待っていた。
しかし、お化けなどいっこうに出ようともしない。
そのうち、一人の子供が口を開いた。それまで山には入ってから、誰もがしゃべらなかった。
ここに来て、やっと話し始めたんだ。
「もう、お化けも出ないことだし、帰ろうか」
その言葉に皆は安堵の息を吐いた。みんなは帰りたかったのだが、
その一言が言えなかった。まあ、意地だろうね。
「じゃ、出たら帰らないの」
誰がそう呟く。子供達はその言葉に怒り出す。さっきまではお化けが出るまで
帰らないつもりだったが、今は早くここから逃げて帰りたいのに出たらの話をすることは
当然怒らずに入られない。
もし、ここでみんなが怒らなかったら、恐怖するしかなかっただろう。
みんなは怒ったことによって、恐怖から回避したのだ。
しかし、みんなが怒りあっても、誰もが何もいっていないと言い合う。
確かにみんなはうそを言っている様子もない。
では、誰が言ったのかと考えると答えは出ない。
そして、一人がこう語り出す。
「お化けがしゃべったのだろうか」
一同は黙ってしまった。
そして、しばらく黙ったまま子供達は家へ帰ろうとし始めた。
「うーん、帰ってしまうのか」
「誰だ!」
子供達はいっせいに周りを見回した。
しかし、誰一人として何も見つけることができなかった。
「おや、おや、誰を捜しているのかな」
声と共に子供達の前に現れたのは、子供だった。
しかし、顔にはカボチャのランタンをかぶっていた。
「僕を今まで捜していたんだろう」
カボチャをかぶった子供はそう話し始める。
しかし、それがお化けとはとても子供達には思えない。
どう見ても、ただの変わり者だとしか見えない。
「このカボチャは取ったら、君たちは逃げ出すからね。付けているんだよ」
「お前は何者なんだ」
「当然、お化けだよ。こんな夜遅くに出歩く子供はいないだろう」
「じゃ、そのカボチャを取って見ろ」
子供の中の一人がそう言うと一同もそういい始めた。
「いいけど、逃げないと約束できるなら、とってもいいよ」
子供達は相談を始めた。しかし、相談といっても、一同の答えは決まっていた。
「わかったよ。でも、逃げないでね」
子供はカボチャを取るとそこにあったのは空間だけであった。
何もなかった。あるはずの頭がなかったのだ。子供達は驚いた。中の何人かは逃げ始めた。
「だから言ったのに、僕の顔はこのカボチャだから、取ったらとれるだけなんだ」
逃げそびれた子供達はその場に立ち止まるしかなかった。もう、逃げ出すことはかなわない。
「さて、君たちは驚いたけど約束通り逃げないでくれたね。
約束を破った奴らをどうしようかな」
カボチャのお化けは自分の頭であるカボチャを胴体に乗せると頭をかかげて考え始めた。
たまに落ちそうになる頭を戻しながら、考えはまとまったようだ。
「逃げたしたのは、とりあえず僕の仲間に無事に村まで案内させておこう。
君たちも村まで送っていくよ」
子供達はカボチャのお化けの後をついていくが、さっきまでの勇気は何処にもなく、
ただ足が前へ進んでいるだけだ。
今の子供達の心の中には恐怖何もない。あるのは何もない。放心状態である。
そして、いつの間にか村に着いていた。
そして、村までつれてきたカボチャのお化けは消えていた。そして、
子供達の近くに小さなカボチャのランタンが灯りを照らしていた。
灯りの下にはこんな事が書いてあった。
『トリック・オア・トリート?』
子供達はまるで狐に騙されたように、家へと帰っていった。
しかし、恐怖はまだ終わっていない。家へ帰れば、親が待っているのだから。
さて、逃げた子供達はどうなったのか。
朝には無事に帰ってきたが、その日のことは二度と語らなかったという。
そして、子供達の噂はその後こんな風に伝わっていった。
「あの裏山には妖怪達が住んでいて、迷い込んだ子供達を無事に村までを見守るのだが、
普通には見守らない。なぜなら、裏山の妖怪達は子供よりも陽気で悪戯好きだから。
そして、特に十月の終わりは特にその悪戯に滑車がかかるそうだ」
「うーん、そうなんだ」
そんな噂が子供達の中に広まっていき、大人達にも広まっていった。
そうして、十月の終わりに祭りが行われるようになった。
『さて、最後まで聞いてくれた子供達には甘いお菓子をあげよう』
『どれがいいかな?』
男は持っていた旅行カバンを開くと、様々なお菓子がつまっていた。
単色でありながら、どれもおいしそうだ。
『この黄色いキャンディがいいかな?』
『この赤い飴玉がいいかな?』
『それともカボチャのケーキはどうだい?』
『一人一個だよ。何せ、材料がなかなか手に入らないからね』
『え、なぜ手に入りにくいって?』
『それはね・・・』
『これは、やめておこう。最後まで怖がらせるのはかわいそうだからね』
『また、来年も怖い話をしてあげよう』
『でもね、本当に怖い話はね・・・』
『君たちの身の回りのことなんだよ』
『これは例え話もできないぐらいに怖いんだから』
『それは大人になっても聞かない方がいいんだよ』
『本当に夜が眠れなくなるからね・・・』
『いつか大人になったら、してあげてもいいよ』
『でも、聞いたら後悔をするだろうけどね。ふっふふふ・・・』
『さて、おじさんはもう行くとするよ』
『じゃ、また何処かで・・・』

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