【漫画】 楳図かずおの「眼」 (注意。ネタばれ有り) | Let's easily go!気楽に☆行こう!

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映画、写真、B級グルメ、格闘技、そして少しばかり日常を語る雑記帳です。

100年に一度永い眠りにつくことによって

その若さと美しさを保っている「おろち」という謎の美少女。

彼女は手首に包帯の巻かれた右手から人の心を読み取ったり念動力を使ったりできるのだ。

ある時は屋敷のお手伝い・またある時は看護婦……。

行く先々で起こる不思議な現象や人間の業からなる悲劇を、

おろちは時に見守り、時に妨害してゆく……。

彼女がどこから来てどこへ行くのか、誰も知らない








◇おろち「眼」

おろちは横断歩道で杖を突いて歩く少女を見つけ、大丈夫かと後をつける。

だがその足取りはスムーズだった。おろちは彼女の様子を見て安心する。

生まれつき眼の見えない恵子。

だが住み慣れた社宅では不自由なく生活できるし近所の人たちもみんな親切だ。

父と二人暮しなので父が会社に行っている間は1人だが、

盲学校で一緒だったさとるという男の子が手術で眼が見えるようになってからも

毎日遊びに着てくれるので寂しくはない。

恵子の手伝いをしたり漫画を読んで聞かせてあげたりと弟のように接してくれる。



今日もさとるが遊びに来て、そして帰って行った。父の帰宅を1人待つ恵子。

今日はやけに遅い……。突然玄関で救いを求める声がする。

引き戸を開けると、男性が「殺される!」と駆け込んできた。

奥へと逃げ込む男性を追って、男が乱入してきた。

台所からナイフを持ち出し抵抗する男性。だが逆に刺されてしまう…。

男は恵子にも血のついたナイフを突きつけるが、恵子にはわからない。

男は恵子が盲目であることを悟り、ナイフを置いて逃げて行った。



手探りで男性を探し、死んでいることにショックを受けて気絶する恵子。

そこへ父が帰ってきた。玄関に落ちている血のついたナイフに驚き、手に取ってしまう。

奥には父の友人が死んでいて、恵子も意識を失っていた――。



恵子の父は疑われて逮捕されてしまう。

恵子は警察に男のことを証言する。背の高い怖い顔をした男だ、

声の位置と足音でわかるのだと言うが、警察は信じてくれない。

近所の人はそんな男は誰も見なかったと言う…。

1人部屋で泣く恵子は、何か落ちているのに気付く。たずねてきたさとるに見せると、

怖い顔の男の写真が貼ってあると言う。男の身分証明書らしい。

さとるに警察の人を呼んで来てもらうが、待っている間にストーブを倒してしまう。

貴重な証拠がなくなってしまった……。



恵子はくじけずにさとるに男を捜してもらうように頼む。

視力がない変わりに嗅覚に敏感な恵子は、男からこのあたりの工場の臭いと

飲食店の臭いを感じ取っていたのだ。

事態の重みを知らないさとるは探偵気分で男を見つける。

が、逆に男に探りを入れられ、身分証明書のことを話してしまう…。



翌朝、恵子の家にガス点検の人が来る。

いつもの人と違うことを不審に思う恵子。他に誰かの気配を感じて警戒する。

犯人の男が仲間に点検人の振りをさせて家捜しに来たのだ。

犯人の臭いを感じ取りガス会社に電話をすると言う恵子。

ガスを少しだけ噴出させて臭いをごまかし身分証明書を探すが、どこにもない。

あきらめて「点検は終わりました」と声をかけ帰ってゆく…。犯人の気配も消えた。



お昼になってもさとるは来ない。不安になる恵子。

近所の人が盲学校から電話があったと知らせて来たので出かけることにした。

学校に行くと誰も電話などしていないと言う。

帰宅した恵子は、窓ガラスが壊れているのに気付く。家中引っ掻き回されて荒らされていた。

「私が燃やしてしまった身分証明書を探しているのだわ!!」

雨が降ってきた。恵子は手探りで扉や窓を釘で打ち、杖を持って警戒する。

玄関の外でさとるの声がした。身分証明書のことを男に話してしまった、

だから一緒に逃げようと言う。

きっと男が恵子に身分証明書のありかを吐かせようとやってくるに違いない。

男の姿が近付いてきた、とさとるが言う。角のポストのところで待っていると言い残して

走って行った。

男が来て、家中の窓を調べている。トイレの窓が開いていることに気付いて焦る恵子。

身分証明書が燃えてしまったことがわかったら男は安心して逃げてしまうだろう。

だがこのまま身分証明書を持っている振りをしていたら恵子が危ない!


恵子はこっそりテープレコーダーを仕掛ける。

そして侵入してきた男に壁に隠したと嘘をつき、男が壁中を探しているうちに部屋の電気を消す。

が、作動ランプでテープレコーダーに気付かれ、恵子を殺そうとつかみかかってきた!

もみ合ううちに男の上着の縫い取りに指が触れた。

点字のわかる恵子には、それが名前の刺繍であるとすぐにわかった。

「仲川!!」

「なに!!」

突然名前を呼ばれ動揺した男の手を噛み、トイレの窓から逃げ出す恵子。武器は杖だけだ。

近所の人に片っ端から声をかけ助けを求めるが、誰も家から出てきてくれない…。

さとるのいるポストとは逆方向に逃げてきてしまった。

男が玄関をぶち破る音がする。とにかく逃げなくては!

父や社宅の人々の勤める工場らしい袋小路に追い詰められる恵子。

雨音も激しく、工場の臭いで犯人の匂いがわからず、気配がつかめない…。

「お前さえ死ねば誰も殺人のことを喋る者はいない。

そしてお前のおやじは殺人犯人の汚名をきるのだ!!」ナイフを持って近付く男。

恵子はせめて人を殺した理由を教えてくれと頼む。



この工場で使用する薬品が川に流れて人体に恐ろしい影響を与えることがわかった。

煙突から出る煙が周囲住民の身体を蝕むことも……。

死んだ男は正義感からそれを社会に公表しようとして殺されたのだ。

工場の実情が知れれば会社に勤める者は職を失くしてしまう。

上司から命じられて男は人を殺した。逃げたところを近所の人に見られたが、

近所の人はみんな同じ会社の人間だ。すぐに連絡をして秘密を守り通した……。

「すると近所の人もみんなぐる!!」

恵子が杖で男の顔面を思いきり叩く。眼に直撃して視力を失う男。

これで公平な立場になった。いや、暗闇に慣れた恵子の方が断然優勢だ。

男を階段の下に突き落とし、危機を逃れることができた。



さとるが警官を呼び、杖の跡を辿って探しに来てくれた。

こうして男は逮捕され、恵子の父は釈放された。

翌日の新聞には犯人と事件の原因が詳しく報道されていた。

だがそれ以来近所の人は恵子と父を腫れ物に触るように接するようになった。

顔を曇らし何も言わない恵子。父は会社にい辛くなり、恵子とともに社宅を去って行った…。

去って行く車を見送るおろち。

「恵子さんは眼が見えないと言うのに、苦しさと孤独と困難ににも負けずに

眼が見える人も及ばぬ活躍をしたのだったわ。

これから知らない土地へ行っても負けずに頑張るだろう」

おろちは未だに煙を吐き続ける工場の煙突を見つめ、文明社会に疑問を抱く――。





ー終わりー





◇おろち「眼」より。


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