都市伝説 vol.59 【昔田舎で起こった恐ろしい話】〔閲覧注意〕4 | Let's easily go!気楽に☆行こう!

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映画、写真、B級グルメ、格闘技、そして少しばかり日常を語る雑記帳です。

せーの!と掛け声をかけながら

AB兄弟は力いっぱいドアノブを引っ張った。





何度目かのせーの!で

バコン!カシャン!

という音と共にドアが勢い良く開いた。

AB兄弟は勢い余って二人とも地面にぶっ飛んだ。

Aの左肘に出来た擦り傷が痛々しい。

ドアの向こうはかなり暗かったので、

懐中電灯を持ってこなかったことを後悔した。

まずBが、次にAが勝手口から土足のまま入っていく。

B「くせー、なんだこりゃーw」

A「カビくせーなーw」

すっかり怯えきってるCと顔を見合わせたけど、

俺は恐怖より好奇心が勝っていたので、

AB兄弟のあとに続いて家に入った。

それを見たCが鼻声で「待ってよ!」

と言いながらドタドタと家に入る。



勝手口を入るとそこは台所になっていた。

土間を改築したのか、台所部分は土の床が広がっている。

とにかくかび臭く、歩くたびに

土っぽい誇りがぶわっと舞うようだった。

台所には何も無く、奥に入ると畳の部屋があった。

台所と畳部屋の境目あたりの畳は特に損傷が酷く、

黒っぽく変色しグチャグチャに腐っていた。

その上にある鴨居は何かで

ガリガリ削ったような跡がついていた。

部屋には壁に立てかけられた大きな鏡があり、

鏡と反対の壁には昭和40年代のカレンダーがぶら下がっていて、

当時ですら20年近くも誰も住んでいなかったようだ。

カレンダーの下には幅1m、高さ50cm、奥行き50cmぐらいの

木製の重厚な葛篭のようなものがあり、

蓋の部分には黄色く変色した和紙の封筒のようなものが貼り付けてあった。



C「もう帰ろうよ、怖いよ…」

B「弱虫だなぁCはw」

A「折角ここまで来たんだから、なっ!」

ABは笑いながら葛篭を開けようとしていたが、

しっかりと閉じられていてビクともしないようだった。

数分葛篭と格闘したABだったが一向に開く気配が無いので

一旦諦め、室内の散策を続行することにした。

葛篭の部屋からは細くて暗い廊下が伸びており、

汲み取り式の和式便所と狭苦しい風呂が並んでいて、

特に風呂はグレーがかった黒い液体が

固まったようなものがあって汚かった。



そして便所と風呂から廊下を挟んで反対側に、

もう一部屋和室があった。

和室には全身を写せる鏡と、その鏡の反対側の壁に

小さな木箱が置かれていて、

木箱にはさっきの葛篭と同じく

和紙の封筒のようなものが貼り付けてあった。

A「うわ、まただよ。なんなんだ?これ」

B「中身、見てみようぜ」

Bはまず木箱が開くのか試してみたが、開かなかった。

そしてビリッと和紙の封筒を剥がして、

中に入っている紙を取り出した。

B「なんて書いてあるんだ?これ」

A「達筆過ぎて読めないな…」

そこにはミミズが這ったような文字が黒々と一行だけ書いてあり、

左下には何かをこすったような赤黒いシミが付いていた。



B「あっちの紙も同じようなもんなのかな?」

AとBがドタドタと先ほどの葛篭の場所へ移動する後ろを、

俺とCもついて行った。

A「ちょっと違うけど、似たようなもんだな。」

葛篭の文字も書いてある文字こそ違いそうだが、

一行だけ書かれた文字の左下に赤黒いシミが付いている。

首をかしげながらさらに家を調べる為廊下を歩き、

小箱の部屋を通り過ぎるとすぐ玄関に辿り着いた。

C「わっ!」

B「なんだよ?」

C「あそこに!人が!」

Cは顔を伏せて震えていた。

見てみると、鏡越しに人のような姿が見える。

恐る恐る玄関に行ってみると、

玄関横の壁にも全身を映せる大きな鏡があり、

その正面にガラスの箱に入った日本人形が飾られていた。

廊下からは壁の裏なので人形は死角になっていたのだ。

B「鏡に映った人形じゃねーかw」

C「…。」

B「ほんと、Cは怖がりだなwww」

Cはベソをかきながら真っ赤になっていたが、この状況だ。

突然鏡に人形が映ってるのを見たら怖がりのCじゃなくてもビビるだろう。

俺も少し肝を冷やした。

そして、この日本人形が入ったガラスの箱にも、

和紙の封筒がありその中に一行の文字と赤黒いシミがあった。

それにしても、家財道具など一切無いのに、

箱や葛篭、日本人形があり、そして鏡が置いてある。

ただでさえ薄気味悪い場所なのに、

その状況は輪をかけて不気味だった。


B「何もねーなー、もう一軒の方行ってみるか!」

A「そーだなー。」

裏口に向かって廊下を歩いていく時、

何気なしに玄関を振り返ってみた。

さっき鏡越しに人形が見えた場所だったが、おかしい。

そうだ、おかしい、見えるわけが無い。

この位置から人形は壁の死角になってて、

俺たちは斜め前から鏡を見てる。

鏡は人形に向かって正面に向いてるわけだから、

鏡に人形は映らない。

今も、人形ではなく何も無い靴棚が見えてるだけだ。

俺は鏡から目が離せなくなっていた。

その時、前を歩いていたCが声を上げた。

C「開いてる!」

和室にあった小箱の蓋が開いて、

蓋は箱に立てかけられていた。

A「え?何で?」

B「ちょ、誰だよ開けたのw」

AB兄弟はヘラヘラしていたが、額には脂汗がにじんでいた。

A「おいB、隣の葛篭見て来い」

C「何で、Bが悪戯したの?何で開いてるの!」

B「あ、開いてる!こっちも!開いてるよ!」

A「なんだよそれ!何で開いてんだよ!?」

今でも何でこんなことしたのか分からないが、

AB兄弟が叫んだのを聞いて急いで玄関に向かった。

ガラスの箱に人形は無かった。

人形は…玄関に立っていた。

俺は叫び声を上げた、つもりだったが、

声がかすれてゼーゼー音がするだけだった。

口の中がカラカラで、ぎこちなくみんながいる方に歩いて行くと、

AとBがもみあってる声が聞こえた。


A「B!やめとけ!やばいって!」

B「畜生!こんなのたいしたことねえよ!離せよ兄貴!」

A「おいやめとけ!早くココ出るぞ!おい手伝え!」

AはBを羽交い絞めにして俺に手を貸せと声を上げた。

その時、AB兄弟の後ろに立てかけてあった鏡が突然倒れた。

AB兄弟にぶつかりはしなかったが、

他の部屋の鏡も倒れたようで、

あちこちからガシャンと大きな音がした。

鏡の裏には…黒々とした墨汁で書かれた小さな文字が

びっしりと書かれていた。

鏡が倒れたことに驚いたAがBの拘束を緩めてしまったのだろう。

Bは「ウオォォォォォ」

と叫び声を上げ激しく暴れ、Aを吹っ飛ばして葛篭にしがみ付いた。

B「ウオオオオォォォォォォォォォ!」

A「おい!B!おい!おっ…」

A「うぎゃああああああああ!!!!」

Bの肩越しに葛篭を見たAが突然叫び声をあげ、

ペタンと尻を突いたまま、手と足を

バタバタ動かしながら後ずさりした。

B「fそいあlzpwくぇrc」

もはやBが叫んでいる言葉が分からなかった。

一部聞き取れたのは、繰り返しBの口から発せられた

「○○(人名)」だけだった。


腰を抜かしてたAが叫びながら勝手口から逃げ出した。

パニック状態だった俺とCも、Aの後を追った。

廃屋の中からは相変わらず

Bの何語かも分からない怒号が聞こえていた。

Aは叫びながらもう1軒の廃屋の戸をバンバンバンバン叩いていた。

俺とCはAにBを助けて逃げようと必死で声を掛け続けたが、

Aは涙と涎を垂らしながら、バンバン戸を叩き続けた。

B「おい4くぉ30fbklq:zぢ」

Bは相変わらず葛篭の部屋で叫んでいる。

×印に打ち込まれた木の板の隙間から、

Bが葛篭から何かを取り出しては暴れている姿がチラチラと見える。

そして、Bの居る廃屋の玄関には、明らかにBでは無い人影が、

Bの居る部屋の方に向かってゆっくりゆっくり移動してるのが見えた。


バンバンバンバンバンバン

カタカタカタカタガタガタガタガタガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン

Aが戸を叩いてるもう1軒の廃屋は、

Aがバンバン叩いているのとは別の振動と音がしはじめていた。

そしてAも、B同様「○○!」とある人名を叫んでいた。

Bのいる部屋を見ると、Bのそばに誰かが居た。

顔が無い。

いや、顔ははっきりと見た。

でも、印象にまるで残らない、のっぺらぼうのようだった。

ただ、目が合っている、俺のことを見ていることだけはわかった。

目なんてあったのか無かったのかすらもよくわからない顔。

俺はそいつを見ながら失禁していた。






続く

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