「片方が先に死んだら、さみしくないように壁に埋めよう」
と言い交わしていた。
しばらくして、婆さんが先に死んだ。
爺さんは悲しみ、約束通り婆さんの死骸を壁に埋めた。
すると、ことある事に壁の中から
「じいさん、じいさん…」
と婆さんの呼ぶ声がする。
爺さんはその声に
「はいはい、爺さんはここにいるよ」
と答えていたが。
ある日、どうしても用事で出なくてはいけなくなったので
村の若い男に、留守番を頼んだ。
男が留守番をしていると、壁の中から婆さんの声がする.
「じいさん、じいさん…」
男は答えた。
「はいはい、じいさんはここにいるよ」
最初のうちは答えていた。
けれどしかし、婆さんの声はなんどもなんども呼んでくる。
「じいさん、じいさん…」
やがて、男は耐えきれなくなって叫んだ。
「うっせえ! じいさんはいねーよ!」
すると、壁の中から鬼の形相をした老婆が現れ、
「じいさんはどこだあああっ!」
と叫んだ。
すると突然、まばゆいばかりのスポットライトが
飛び出したばあさんを映し出す。
「JI-I-SA-Nは」
「どこだ!」
ステージにばあさんの声が響く。
詰め掛けたオーディエンスは、
ばあさんの久々のステージに期待で爆発しそうだ。
今晩も伝説のリリックが聴ける。
ストリート生まれヒップホップ育ち。
本物のラップが聴けるのだ。
キャップを斜めに被りオーバーサイズのTシャツをきたじいさんが
ターンテーブルをいじりながら目でばあさんに合図する。
重たいサウンドがスピーカーから響く。
ショウの始まりだ。
「 ここでTOUJO!わしがONRYO!鬼のGYOUSO!ばあさんSANJYO!
違法なMAISO!じいさんTOUSO!壁からわしが呼ぶGENCHO!
(ドゥ~ン ドゥンドゥンドゥ~ン キュワキャキャキャッキャキュワキャ!)
年金減少!医療費上昇!ボケてて大変!食事の時間!
冷たい世間を生き抜き!パークゴルフで息抜き!
どこだJI-I-SA-N老人MONDAI!そんな毎日リアルなSONZAI!
SAY HO!(HO!) SAY HO HO HO HO!」
じいさんのプレイも好調だ。オーディエンスの熱狂はこわいくらいだ。
まだ、俺らの時代は始まったばかりだ、
そんなメッセージがばあさんの口から飛び出していく。
本物のヒップホップが、ここにあるのだ。

今日4月10日は、『統一地方選挙』です。
有権者の皆さんは、投票に行きまSHOW!
センキュー、チェケラッ♪