Sさんは夜中、息苦しくなって目が覚めました。
Sさん「この辺りに立ち込める怪しく重苦しい雰囲気は何かしら?
何かこの世のものとは思えない得体のしれないものを感じる」
すると突然、
「ヒヒヒヒヒ・・・」
なんとそれは、目が釣り上がり、口が耳まで裂けた恐ろしい幽霊でした。
Sさん「きゃぁぁぁぁぁ。なんて恐ろしい幽霊なの!
食べられたらどうしよう!」
幽霊「ヒヒヒ・・・なんておいしそうな娘なんだ。
いままで沢山食べた中でこんなにおいしそうな娘は久しぶりだ。
どこから食べていいのか迷ってしまう・・・」
Sさん「はやくここから逃げなくちゃ!でも足が動けない」
Sさんは必死に逃げようとするが、あまりのその恐ろしさに
足が竦んで動けないのでした。
幽霊「よーし決まった。おしりから食べることにしよう。
ヒヒヒ…大分待たせたな」
そう言って、幽霊はSさんに一歩一歩ゆっくり近づいて行った。
Sさんはただベッドの上で毛布を掴み、じっと震えているだけだった。
Sさん、絶体絶命のピンチ!
そして幽霊が毛布を剥ぎ取ったその瞬間、
幽霊「うわー。おまえの首に掛けているその聖なるものはなんだ。」
それは十字架のお守りだった。
Sさん「そうだ、確かおかあさんが、魔物に襲われたら、
この十字架を魔物に向かってかざしなさいと言っていたんだ・・・」
Sさんは幽霊に向かって十字架をかざしました。
幽霊「うわあああー苦しいー。まさか十字架を持っていたとはー。
でももう少しでおいしそうな娘に牙が届きそうだ。」
それでも諦めずSさんは一心に祈った。
Sさん「神様、神様、どうか私を守ってください。お母さん、守って・・・」
幽霊「これには耐えられない。うわわわわ・・・」
幽霊は、聖なる力のあまりの強さで消えてしまったのであった。
Sさん「わ~い助かった。神様、守っていただいてどうもありがとう。
え~んお母さん怖かったよ~」
こうしてSさんは幽霊の恐怖から救われたのであった。
Sさんは、友人宅から車を運転して帰る途中、
あるトンネルに差し掛かりました。
Sさん「なにかすごく嫌な感じがするわ。とても気分の悪くなるわ。
不気味な空気を感じるし。このトンネルには何となく入りたくないわ」
Sさんがふとバックミラーをみると、何かが後部座席に座っているのが見えました。
「いやだわ。私の車の後ろに座っているものは何?わたしをどうしようというの。」
なんとそれは目が飛び出し、キバの突き出た恐ろしい悪魔のようなの幽霊でした。
幽霊「ウッフッフッフ、かわいいお嬢さんだ。その首筋に噛み付いて
生き血を吸ってしまいたいよ。」
Sさん「いやぁぁぁぁ。なんて恐ろしい幽霊なの!
どうしたらあなたはわたしを助けてくれるの!」
幽霊「それはだめだ。今晩の食事はお嬢さんの生き血に決めたんだ。
神様にでも祈ることだな。」
そういうと幽霊はSさんの肩に手をかけました。
Sさん「まぁ、怖いことをする幽霊だわ。
このままでは気がおかしくなってしまいそう。
神様、どうかこの恐ろしい幽霊から私を守ってください!」
Sさんは、両手を胸の前で合わせ、目をつぶって神様にお祈りしました。
幽霊「そんなことをしても無駄さ!
さぁこの間におまえの生き血をもらうことにしようか。」
Sさん(ああ、こんなときにおかあさんの十字架があればいいのに。
ああ、わたしはなんて不幸な少女なの。神様なんてもう信じられないわ、しくしく。」
ついにSさんは泣き出し、涙をこぼした。
そのとき、Sさんの流した涙が肩にかけた幽霊の手に落ちました。
幽霊「うわー。体が燃えるように熱い!恐ろしいことをしやがって。
聖水をかけやがったな。うわー。くるしいー!」
幽霊は煙となって消えていきました。
Sさん「わ~い助かった。神様、守っていただいてどうもありがとう。
え~んお母さん怖かったよ~」
こうしてSさんは幽霊の恐怖から救われたのであった。
Sさんは家でテレビを見ていました。
するとテレビの画面に急にノイズが走り、
恐ろしい悪魔の顔が浮かび上がったのです。
悪魔「きさま。よくも私のかわいい子分たちを倒してくれたな。
この私があいつらにかわっておまえを呪い殺してくれるわ!」
Sさん「きゃーなんということなの!
私のしてきたことはみんな間違いだったというの?
このままでは恐ろしい悪魔に呪い殺されてしまうわ。
いったいどうすればいいのかしら。」
悪魔「ははは。どうした小娘。私を倒そうとでもいうのか。」
Sさん「そうだわ。!にはおかあさんにもらったこれがあるじゃないの。えーい」
Sさんは十字架をかざしました。
悪魔「それがどうした。ふはははははははは。」
Sさんの十字架ははじけ散ってしまいました。
Sさん「ああ、私の大切な十字架が壊れてしまったわ。
このままではやつの思うつぼよ。あっそうだわ」
Sさんは涙を絞り出しました。
悪魔「そのような聖水なぞ悪魔の王に通用するものか」
Sさんの涙は枯れ果ててしまいます。
Sさん「そんな・・・ではわたしはどうすればいいの。
どうしたら許してくれますか」
悪魔「おまえの罪はおまえの死を持ってしか償えないのだ」
Sさん「このままでは死んでしまうわ。
こうなったら手当たり次第にものを投げるしかないわ。」
Sさんは狂ったように物を投げはじめました。
するとどうでしょう。悪魔の王が苦しみはじめたのです。
悪魔「なぜ私の弱点がにんにくだとわかったのだ。
うぎゃあこれはたまらんひとまず退散だ。」
Sさん「にがしはしないわ。これで終わりよ。えーい。」
Sさんの大いなる気持ちを込めたにんにくが飛んでいきます。
悪魔「口に入ってしまった。これはたまらん。ぎゃぁぁぁ」
悪魔はほろんでしまったのです。
するとどうでしょう。悪魔の王はみるみるうちに王子さまへと姿を変えたのです。
王子「う・・・ここはどこだ?」
Sさん「あなたは呪いによって姿を変えられていたのです」
王子「そうだったのかたすけてくれてありがとう。
ぼくといっしょにこないか?」

Sさん「王子さま!」

こうしてSさんは王子様とどこかへいってしまい
風の噂で幸せに暮らしていたそうです。
めでたし、めでたし・・・
【魔物が来たりて】 終わり