BS放送開始から今年の6月で20年たちましたが、地上波だけで十分だと思っている人にとっては、またその機器(BS用チューナーか内蔵テレビ、BSアンテナ)を買うことに躊躇している人にとっては、なくてもさほど困らないので、あまり普及しているとはいえません。
また解像度を上げるために開発されたハイビジョン技術は本来国家プロジェクトとしてアナログ地上波用に開発されたものでした。ヨーロッパに持っていこうとしたら、もうそこはデジタルの研究が進んでいて、アナログ時代は終わりを告げようとしていました。NHKと総務省が考えたのが、デジタルへの移行でした。追いつかないと世界から置いてきぼりにされる。そして、デジタルにもハイビジョン技術を載せました。もともと解像度がいいものに、さらに解像度が良くなったと。もうこれは、技術屋の世界です。

 そして出来上がったデジタルの技術、放送波も替えなくてはなりませんが、アナログで見ていて何の不都合もないのですから、このままでは、BSの二の前です。普及しません。そして、地上波アナログ局のデジタル設備投資を考えると、アナログを廃止して、初期投資を回収しようと考えても当たり前だったわけです。それで、考え出されたのが、本放送開始まで猶予期間を設け、期限を切ってアナログ放送を停止することで、受像機(デジタル受信できるテレビ、デジタルチューナー)の買い替えを促す方法をとりました。それでもまだ、期限切れまで待つ人と、受像機が替えない人がいます。
 デジタル地上波は本当に必要だったのでしょうか、確かにテレビの映りが良くなるに越したことはないのですが、国民の誰がそれを望んだのでしょうか。まさに技術屋の独りよがり的な側面は、否めません。テレビを見るだけなら、デジタルでなくアナログで十分だからです。
 デジタルのよさは、双方向通信ができること、その内容が他人には盗み見ることが容易ではないという利点があります。でもそれを必要としている人なんて、ほんの一握りです。映像以外の情報も流せるということです。テレビの解像度を上げる技術ハイビジョンにしても、あたかもデジタルハイビジョンと言い換えて、さもこのために開発したかのように宣伝していますが、本当に国民にとって必要な技術だったか疑問です。再度いいますが、テレビを見るだけなら、地上波アナログ受像機で十分だったのです。