私が産声を上げた日

其れは私と云う罪が、此の世に生まれ堕ちた日だと、思って居た



小さき、幼子の頃は、恥も知らずに傲慢に振る舞い

其の愚かさで周囲を振り回した


其れから時が少し経てば、私の存在其の物が周囲に不快を齎し

私は罵詈雑言を浴びせられ、首を絞められ、石を投げ付けられた


私は幾度と無く泣きそうに成ったが

外で泣くな、男が泣くなと

其れが恥で在るのだと教わり、私は涙を堪え続けた


又少し時が経って、私は上辺だけの処世術を身に付け、周囲に愛嬌を振り撒いた

己の心を偽り乍ら

其れは私に、ほんの一時の平穏と、糠喜びを齎したが

家ではそうは行かなかった


酒に呑まれた父の暴行や暴走に振り回され、

私の心が休まる瞬間等無かった

でも、其れは私の様な人間が受けるべき罰なのだと考え、

其の苦しみを心に刻み込んだ


其れから又時が経ち、私は周囲に愛嬌を振り撒く事に疲れてしまった

父は警察に捕らえられ、居なくなったが

別の理不尽な大人達に苦しみを与えられた

其れは罰なのだと、思い続けて居た


何故、私は其れ等を罰だと思い続けて居たのか

私はずっと、上の兄弟姉妹と比べられ、私の方が低く評価され続けて来た

我儘で、不勉強で、忍耐力も無いと

良かれと思って何か行動を起こせば、どうせそうするならもっとこうしろと言われたり、其れ位やって当然だと言われ、

まともに褒められる事が少なかった


実際、私は周囲に迷惑ばかり掛けて居たと思う

私が産まれて来たのは間違いだったのでは無いか

未だにそう思う事が有る

私は夜な夜な、己の罪を数えて居た

だから私は、苦しみを罰だと思い続けて居た


ある時、私は全く涙が出なく成っていた

泣きたい時にすら涙が出ない

其の時、私の心は壊れる一歩手前の状態だったが、

私は、涙が出なく成った事に安心して居た


私は宇宙に思いを馳せた

どうして宇宙等と云う物が生まれ、地球が生まれたのか

其の様な現実が無ければ、此の私の存在さえ無かったのにと


だが、其処で視点が変わった

広大な宇宙から見れば、地球等蚤の様な存在にしか過ぎず、

其処に住む生物は蚤以下の塵に過ぎない

其の様な存在が、等しく死ぬ為に産まれ、

無意味なる意味や無価値なる価値を追い求めて生きて居るのだと


其れから私は漸く、多少なりとも己を受け入れられる様に成った

未だに己を責める事は有るが



私は、未だに自己肯定感が低い

だが、朝毎に懈怠なく死して置くべしと云う、葉隠の一説を胸に、

今日一日を生きて居る



貴方は、どう生きて居るだろうか