本題に入る前に、先ず、地震の被害で亡くなられた方々に、哀悼の意を表します。









本題に入りますが、今回は、Avalanche Software開発、Portkey Games発売のオープンワールドアクションロールプレイングゲーム「Hogwarts Legacy」のレビューを書きます。

本レビューは、トゥルーエンド到達済み時点でのレビューとなりますが、メインストーリーのネタバレは極力控えています。





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「Hogwarts Legacy」レビュー (Nintendo Switch版)



☆良い点☆

①:驚異の移植度(Nintendo Switch版限定)
  このゲームのNintendo Switch版を評価する上で最も外せないポイントは、移植度だ。
完全オープンワールドでは無く、ホグズミード村をエリア化させる工夫を施しており、グラフィックスも見映えがそれ程崩れない程度にダウングレードさせているが、その程度しか他機種との違いが無い。
ゲーム体験そのものに全く変化が無く、違和感無くNintendo Switchで最新のAAA級ゲームが楽しめる。
正に驚異的な事だが、モバイルゲームの実績を積んでいるPortkey Gamesと携帯型ゲーム機向けのゲームの実績を積んでいるAvalanche Softwareのタッグだからこそ実現出来たのかも知れない。

②:充実のユーザー補助機能
  オプションで変えられる設定項目は、現代のゲームらしい充実度である。
蜘蛛恐怖症モードと言うものも実装されており、蜘蛛が嫌いなロンでも安心してプレイ出来る。(実際、蜘蛛や虫系が苦手な人にとってはキツい場面が幾つかある為、この機能は必須とも言える)

③:丁寧に再現された原作の世界観
  ホグワーツ城の再現度は然る事ながら、ホグズミードやホグワーツ周辺の地理等も、非常に高い再現度を誇っている。
本作で初お目見えとなるハッフルパフ寮の談話室のデザインも、読者のイメージにしっかりはまっている。
原作でお馴染みのキャラクターも登場しており、ポルターガイストのピーブズは相変わらず鬱陶しく、カスバートの授業は恐ろしい程退屈だ。
更に、フィニアス・ナイジェラスの校長時代の姿が拝めるが、ホグワーツ史上最も人望の無い校長と語られる所以を見る事が出来る。

④:完成度の高いサイドクエスト
  本作のサイドクエストは数が豊富で、しかも一つ一つのクエストのストーリーラインやキャラクターがどれも印象的で完成度が高い。
選択肢によってその後の展開が変わったり報酬内容に影響が出るクエストもあり、とても楽しめる。

⑤:必要の部屋
  本作の必要の部屋は、魔法薬の調合、魔法植物の栽培、魔法動物の世話、そして装備のアップグレードの為に利用する事になるが、必要に応じて変化する【必要の部屋】である為、カスタマイズ性が高い。
部屋のビジュアルを各パーツ毎に変える事が可能で、部屋内に設置するアイテムのビジュアルやサイズも自在に変更出来る。
勿論、動く肖像画を飾る事も可能だ。

⑥:サウンド
  本作のボイスアクト(英語)は素晴らしく、サウンドエフェクトは世界観に忠実で、サウンドトラックは一流である。

⑦:アクションゲーム初心者にも入り易いアクションと難易度
  本作の戦闘アクションは、コーエーテクモゲームスの「無双シリーズ」並みに初心者でも入り易い。
また、難易度設定の幅も充実していて、ベース部分はどんなゲームユーザーでも楽しみ易い設計となっている。


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✯惜しい点✯

①:一部の呪文の再現度
  開錠呪文のアロホモラは、何故か唱えただけでは鍵を開ける事が出来ず、プレイヤーはボウトラックル並みの錠前破りの腕を試される事となる。
このミニゲームは最低難易度でスキップする事が出来るが、そもそもここでミニゲームを要求される事自体が疑問である。(どうせミニゲームを用意するなら、Ubisoftの「Assassin's Creedシリーズ」のテーブルゲームの様な形で、魔法使いのチェスを実装すべきだった)
魔法界最古の浮遊呪文であるレヴィオーソは、呪文対象に杖で直接触れなければならず、また単純に浮かせる事しか出来ないが、この呪文が決闘用の呪文として扱われており、何故か杖で直接触れなくても良い事になっている。
本作のレヴィオーソは謎解きにも使うが、正直レヴィオーソは杖で直接触れなければならない、謎解き専用の呪文として、レベリオの様に扱える程度が理想だった筈で、決闘用の呪文としてはレビコーパスの方が望ましかった。
石化呪文のペトリフィカス・トタルスは、何故か基本的にステルス状態でしか使用出来ず、しかも何故かこちらの方が本来のレヴィオーソ並みに対象に近付かないと発動出来ない。
無制限に使えると流石に強過ぎる呪文ではあるが、クールタイムを相当長めにした状態で決闘用の呪文としても使用出来ればより理想的だった。

②:メインストーリー
  本作のメインストーリーは、古代魔術の謎と、そこに絡んで暗躍する者たちを追う物語となっているが、正直無難な内容であると感じる。
原作の物語の魅力と言えば、克明に描かれる差別問題と、一見大した事の無い要素が後々の重大な伏線になっている巧妙な構成、そして【死】であるが、本作でしっかり描かれているのは【死】の部分のみであると言っても過言では無い。
差別問題は、原作において象徴的な血筋の差別が本作では驚く程に殆ど描かれておらず、魔法族とゴブリンの種族間の確執位しか触れられていない。(しかも描写は割りとあっさりめ)
伏線は、解り易いものしか無い。
本作の製作にJ.K.ローリングは一切関わっていない為、謂わばファンメイドのゲームではあるのだが、それにしてももう少し深みが欲しかった所だ。

③:モラリティーシステム未実装
  発売前に公表されていた通り、本作にはモラリティーシステムが実装されていない。
が、ホグワーツの学校生活を真に満喫する為には、モラリティーシステムが欲しかった。
プレイヤーの行動が寮のポイントに影響し、許されざる呪文を使えばアズカバン行きになる。
そんな生活を送りたかった訳だが、本作では不可能だ。
申し訳程度にエンディング分岐が用意されているが、どうせなら、密猟者と協力して目障りな学生を始末したり、闇の魔術に溺れようとしている学友を阻止したりと、より自由な、よりウィザーディングワールドに忠実な体験が味わいたかった。


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★悪い点★

ほぼノーヒント且つ開発者の意図の通りに設計されていない謎解き要素
  本作には、ビデオゲームにおいて人を選ぶ要素である謎解き要素が存在するが、何故かほぼノーヒントである。
一応、レベリオを使えば謎解きのパーツを発見する事は出来るし、主人公が匂わせ程度のヒントらしき発言をする事もあるが、それだけである。
CAPCOMの「BIOHAZARDシリーズ」並みに解り易いヒントがあるかと言うと、全く無い。
また、本作の開発者は、サイドクエスト等での難しい謎解きを無視してストーリーだけを楽しむ事も出来る、と言う主旨の発言をしているが、メインストーリーの謎解きの方がその辺の脇道の謎解きよりも難しい内容になっている。
つまり構想通りの設計が出来ていない為、この点は明確に悪い部分である。
より解り易いヒントは用意すべきだったし、【誰でも出来る簡単な謎解き要素】については、CAPCOMの「BIOHAZARD REVELATIONS」の謎解き要素をお手本にするべきだ。


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☆総評★
Portkey GamesとAvalanche Softwareにとって初めてのAAA級オープンワールドゲーム製作の挑戦となった本作は、世界中のファンの期待に応えるレベルの素晴らしいゲームとなっている。
原作の世界観を丁寧に再現しているし、魔法バトルは映画さながらの体験を味わえる。
音楽も世界観に忠実で極めて完成度が高いし、お馴染みのキャラクターも登場する。
肖像画は一つ一つが動くし、ゴーストはその辺を彷徨いているし、ファン待望のハッフルパフの談話室を拝む事も出来る。
ただ、だからと言って、このゲームの全てが称賛出来る内容であるとは言い難い。
物足りないメインストーリーと再現度が今ひとつな一部の呪文、そしてモラリティーシステムの欠如はホグワーツの学校生活を体験したいと言う願いにケチを付けて来るし、不親切な謎解き要素はレイブンクロー生でも無い限り有難くない部分だろう。
また、基本的に戦闘は単純なので、勇敢なグリフィンドール生や、血気盛んなダームストラングの生徒の様なプレイヤーにとっては味気無く感じられるかも知れない。
だが、このゲームは細かい所までよく作り込まれており、探検していて発見が尽きない。
サイドクエストは一つ一つが印象的だし、景観は最高で、可愛い魔法動物とも触れ合える。
このゲームをプレイして、最も強く感じられたのは、ウィザーディングワールドにおいて古くから存在する魔法である。
【愛】。
古代魔術を巡る物語を有したこのゲームには、製作陣の【愛】と言う、古くから存在している魔法がかかっている。
このゲームを【質の高いファンメイド作品】と受け取れば、ファンにとって、非常に満足度の高い作品だと感じられる筈だ。

…因みに、原作を知らない人でも比較的楽しめる内容で、オープンワールドゲーム初心者にはお勧めしたいゲームだが、ノーヒントの謎解きには御注意を。
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☆「Hogwarts Legacy」レビュースコア (各項目10点満点)★
グラフィックス:8/10
サウンド:10/10
ストーリー:7.8/10
バリュー:9/10
リプレイ性:8.5/10
トータル:8.7/10