このゲーム


世界市場を意識して製作された「MONSTER HUNTER WORLD」が、セールス面では大成功を収め、続く「MONSTER HUNTER RISE」も堅調に売り上げていた、そんな時期に出されたスピンオフタイトルで、初動の売り上げこそ好調だったものの、そこから徐々に伸び悩み、全世界累計出荷本数は150万本を突破して以降何のアナウンスもありません。
ワールドが1,800万本以上のセールスを記録し、続くライズも1,000万本超えと、セールス面だけで見れば文字通りモンスター級のタイトルとなった狩りゲーのスピンオフで、何故この程度のセールスしか出せなかったのか?(言うまでも無く、ワールドワイドでの売り上げが100万本台と言うのは、ごく一部のマニアが購入した程度の数字でしかありません。)
今回は、その点も含めつつ、このゲームに対する俺の評価を今更ながら書きます。

先ずは良い点から。
グラフィックスは、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」を彷彿とさせる、アニメチックな3Dグラフィックですが、単純に綺麗ですね。

ゲーム部分に関しては、モンスターのタマゴを頂戴し、孵化させ、そのモンスターをオトモンとしてフィールドに共に赴き、共に闘い、共に成長して行く、と言う進行がシンプルで解り易いですし、戦闘も攻撃属性の三竦みでジャンケンをするシンプルな基本部分と、少し考える余地のある応用部分がバランス良く揃っていて、楽しいです。
…「タマゴから産まれそうも無い、と言うか、設定上胎生である事が確定しているモンスターも居ますが?」とか、「何で産まれた時点から【ドスファンゴ】やねん。」とか、野暮なツッコミは入れてはいけないw
そして、このゲームの最大の魅力と言えば、何と言っても、モンハンシリーズの数多くの魅力的なモンスターを手懐けられる事です。
シリーズファンにとっては喜ばしいポイントだと思います。
ついでに、ストーリー本編クリア後のやり込み要素がそれなりにあるのも良い事ですね。
続いて、悪い点。
先ず、ストーリーについて。
とは言え、肝心のストーリー内容ははっきり言って子供騙し以下です。
無口な主人公、その主人公の代弁者を気取る出しゃばりなキャラクター、そしてやたら主人公の祖父の話ばかりして来る周囲の人物に苦しめられながら、全く予想を越える事の無い、「王道」と言う言葉を盾にした陳腐な展開を見せられるので、ストーリー体験は何の面白味もありません。
世界観の構築も雑です。
「モンスターハンターストーリーズ」と言っておきながら何故かモンスターライダーが中心の話な訳ですが、「モンスターと絆を結ぶ事が出来る存在」として描かれているライダーが実際にやる事は、クルルヤック並みのタマゴ泥棒ムーブ(厳選作業付き)と、遺伝子操作(スキルの組み換え)と、モンスターに対するドーピング投与(強化アイテムの使用)であり、絵面が終わっています。(自然に対する冒涜)
その上で何故かハンター同様の戦闘も行う(装備の作成手順もハンターと全く同じ)ので、「モンスターと絆を結び、モンスターと共生する存在」としてのオリジナリティーや魅力をあまり感じられません。
また、ハンターサイドは劇中で「モンスターと絆を結ぶとかイミフ」等と言ってライダーサイドと対立して来ますが、本家モンハンの方では普通にアプトノスやポポが家畜として扱われていますし、ライズのゴコクはテツカブラにライドしていますし、何ならモンスターをモロにペットに出来るタイトルもあった訳で(モンハン2及びフロンティア)、対立する意味が全く解りません。
ついでに、フィールドでは様々なモンスター達が気ままに生きている様にパッと見では見えますが、縄張り争いが全く発生しません。(前作では発生していた)
皆互いに争わず、仲良し小好しで、敵が人間だけの様なので、モンハンの世界観を台無しにしています。
そして、やり込み要素が「それなりに」あると先述しましたが、「それなりに」程度しか無い事も問題です。
竜の拠り地と言うダンジョンは、やっている間は色々文句を言いつつも楽しめますし、最終ボスとの戦闘も面白いですが、一度クリアしてしまったらそれで終わりです。
一応、拠り地にはいつでも行ける様になりますが、通常のフィールドがもう一個増えただけの扱いとなり、ボスとの戦闘は二度と出来なくなります。
その為、そのモンスターとの戦闘を再び楽しむ為には、マルチプレイコンテンツである共闘クエスト(一人でプレイする事も出来る)をプレイする必要がある訳ですが、共闘クエストは、6体までオトモンを連れて行けるシングルプレイとは違い3体までしかオトモンを連れる事が出来ず、戦闘演出のスピードは2倍速固定(デフォルトのスピードや3倍速に変更する事が出来ない)で、討伐対象外の野良のモンスターに絡まれたら強制的に戦闘しないといけない(シングルプレイで使える一掃攻撃や逃げるコマンドが使えない)ので、一人でやる場合においてはシングルプレイの劣化仕様のコンテンツでしか無く、それ自体が面白くありません。
戦闘も、基本的には楽しめますが、狩猟笛の旋律効果である「回避のメロディー」が強過ぎるのと、オトモンの性能バランスも悪い為、強いモンスターを連れて笛を担ぐだけで簡単なゲームになってしまう事が残念です。
ついでに、部位破壊の旨味があまり無かったり(例えば、燼滅刃ディノバルドは尻尾を破壊しても爆熱状態になる)、野良でうろついているだけでオトモンに出来ないモンスターが地味に多かったり(ガノトトス、ドボルベルク、テツカブラ等)、本家でお馴染みの狩猟BGMがほぼ全く無かったりと、細かい不満点もあります。
総じて、モンハンとしてもRPGとしても中途半端な印象を受けるゲームで、「モンハンのモンスター達をオトモにして、愛でながら、難しいアクション操作をせずに気軽にモンハン風の戦闘を味わえるゲーム」以上でも以下でも無いタイトルです。
10点満点でスコアをつけるなら、6.9点になります。
でまあ、そう言ったゲーム内容自体が売り上げを伸び悩ませた要因の一つだとは思うんですが、それ以外にも要因はあると思います。
例えば、シリーズのモンスターをオトモンに出来ると言うセールスポイントですよね。
アニメチックなグラフィックス自体、リアリティーを重視した本家モンハンとはイメージがかけ離れてしまいます。
あと、主人公が子供固定なのも、本家モンハンと比べると謎です。
ヤングアダルトと言う概念はあらゆる創作物で使い古されていますし、モンハンの世界観にマッチするかどうか?を考えると、微妙であり、「別にモンハンじゃ無くても良くね?」と言う印象を受けてしまいます。
後はまあ、単純に、「モンスターハンターストーリーズ」と言うタイトルのミスリードですよね。
先述の通り、モンスターライダーの話ですから。
とは言え。
もし興味を持たれたなら、プレイして損は無いゲームです。
充分なボリュームはありますし、モンスターが可愛いですからねw
と言う訳で、今回の記事は以上!