保健師さんに言われて、夕方、堤防周辺を散歩していた時だった。

ふと見ると、下の道に子供が何人かいるのが見えた。通り過ぎようとしたが、えっと思った。

子供は四人いたが、保護者である大人がいない。

下の道に降りて、多分、「お父さんかお母さんは?」と聞いたと思う。一番上の男の子が、

「お父さんに追い出された」

みたいなことを言った(ちょっと記憶が曖昧)。

男の子が小学一年生ぐらいに見えて、赤ちゃんがいた。その二人のあいだの子供が二人いた。四人きょうだいか、と思った。

「家、どこ?」と聞くと「団地」と言う。

もう薄暗くなっていた。

「帰ろう」と言った。それで、赤ちゃんは一番上の男の子が抱き、私が乳母車を押し、残りの二人が後ろを歩いていた。赤ちゃんは泣き始めた。

なぜ泣くのかわからない。哺乳瓶もなかった。

それにしても、いくらなんでも赤ちゃんまで追い出すってどうなのよ、と腹立たしかった。

なんとか子供たちの団地に着いた。

ちょっとやり過ぎだと言ってやろうかと思ったが、「すみません」と言うと、男の人の声で返事があり、こわくなった。

そして。驚いたことに、もう一人女の子がいた。最年長だと思う。四人きょうだいかと思ったら五人きょうだいだったのだ。年長の女の子とさっきの男の子(多分、長女と長男)が乳母車をたたみ始めた。女の子に名前を聞かれて、名字だけ教えた。あービックリした。団地に五人きょうだい。

あのきょうだいは今どうしてるのだろう。

「その男の子はわるいことをしたのをあなたに言いたくなかったのかもしれない。よそのうちのことに口出ししなくていい」と人に言われ、保健師さんに、こういうことがあるから、散歩できないのだと言うと「五人きょうだい。団地。ああ、わかった」と知ってる家らしかった。