母がその宗教に入ったのは、私の姉が十才ぐらいで病死してからだった。
母の宗教の名称など言いたくもない。
ただ、政党を持ったりしていない宗教だった。
父は、その宗教か、あるいは宗教全般が嫌いだった。普通の仏教はともかく。
母は姉の死後しばらく寝込んだ。
喋っていたが、様子が変だった。
しばらくして、父と母はよく言い争うようになった。
その宗教で、一番嫌いなのは、薬はダメ、と教えていることだった。
市販の薬だけではなく、病院で出た薬もダメだと言うのだ。
風邪をひくと、よく咳が出た。
それでも、飲み薬はいけなくて、ノド周辺に塗る塗り薬はよくて、マスクをして学校に行かされた。咳は止まらなかった。
大人になり、働いた自分のお金で咳止めシロップを買って飲むと、咳は止まり楽になった。
薬の注意書きを読むと、咳で体力が消耗すると書いてあった。
そうか、咳止めシロップはこんなにいいものなのか、と思った。
母は妙なことを押しつけると思った。