バランギボウシ
先日、道の駅で買った山野草
薄紫色の花弁に濃い紫色のにじむような線があり
ここ数日の残暑の中、ほっとするような涼しさを感じる。
土曜日、上林暁文学館に行く。
階下の図書館が空調修理中のため閉館していて
2階の展示室はいつもにもまして静かだった。
入場者はこのガラスの器に貝殻をいれるのだが、
毎回、私一つ分が寂しげにポツン。
作家たちとの書簡交流から上林の人間像を見るという展示内容で
歌人・國見純生との書簡交流が主だった。
通信手段がハガキや手紙だったからこそ
通信のやり取りが文献として残っていることは
文士の人間像を見るうえで貴重なものだなと思った。
上林は「悲観しない病者」の中で述べている。
「私は中風で、もう11年寝ついている。
60歳になってから、一度も風呂に入らないし、
一度も歩いたことがない。利くのは左手だけで
右手や両足は利かない。
幸いに頭が呆けていないので、
作家としての渡世ができている。
おかげで、生活がかつかつにできているほどの
原稿料や印税がはいる。
おまけに芸術院会員としての年金があるので、
生活の不安はない。・・・・・
まさに私と同じ年齢で上林暁は病者となり、寝付いてしまったのだ。
「七度生まれかわったとしても文学をやりたい」と言った文士は
自分の不運に対して、ひがみや恨みを持たず
文学一筋で生涯、貫き通したのだ。
世の中の慣習に縛られて、自分自身の世界を狭くしたり
人と比べて、あれこれ悩んだり、羨んだり、悲観したり
時には自分を見失うことがあったとしても
もっと違う世界があることを知るために
考えるために、何をするべきか
ヒントをもらったような気がした。
途中、小さい港町の小さい美術館に立ち寄る。
「花」がテーマの企画展だった。
林 武 須田剋太
典子 光男 越智 明美
安井 曽太郎 林 武
この日も貸し切りで、良い絵を見せてもらって、
至福の時間だった。
この美術館、小さい町ながら、素晴らしい絵画を所蔵している。
しかし、港町ゆえ、いつか必ず来る地震と津波。
大好きな美術館だけに対策は万全なのかな?と心配になる。
せめて高台に移築できないものかなぁ。