先日読んだ三上 延さんの本のあとがきで
「新刊の本にはない、古本の独特の雰囲気が好きです。人の手を経るうちに
目に見えない薄い膜をまとっていったような・・・・」
確かにそう思う。
古書店に入ると、その店独特の匂いがする。それはかび臭さとか
本に染みついたかつての所有者の生活の匂いであったりする。
匂いに敏感な私にとって、それは不快な匂いではなく
寧ろいろんな妄想をかき立てる好ましい匂いである。
サイエンスに関する話題をわかりやすく解説するチャンネルによると
科学的にその匂いの元はインクや紙や装丁に入っている化合物なんだそうだ。
バニラやアーモンドなどの香り成分と同じ化合物が含まれていて
それを調べることで本が作られた年代が特定できるそうな。
私が古書店に惹かれるのは
科学的に解明できる本にまとっている匂いではなく、
名もない一冊一冊の本には必ず来歴というものがあり、
本棚に並んだ、または積み上げられた本を手に取り
文字は判別できなくても、想像するというその瞬間が楽しいのだと思う。
もう一軒の古書店はそれはそれは几帳面に本が分類されていて
店主はお客さんが探している本の在り処を尋ねたら
即答できるくらい整えられていた。
この古書店は写真撮影不可のマークがあり、はてどうしようかと
少し考えて、もう来ることはないかもしれないこの古書店
思い切って「私の趣味は世界中の古書店を巡ること、それであなたの店の
写真を撮らせていただけないですか?」とお願いしてみた。
すっすると、「それは素晴らしい、どうぞどうぞ、あの奥の部屋もいいですよ」と快諾してくれた。
言ってみるもんずら
そんなこんなでポルトでのこの旅の目的は完遂したのであった。
この古書店とカオスの古書店で買ったのは
この通りにある老舗の石鹸屋さんでお土産も買ったもんだから、
私のリュックサックは大きくふくれ、でかい岩を背負っているくらい重くなった。