ちょっとした用事があって、名古屋に行った。
到着してすぐにその用事を済ませ、時計を見ると、まだ午前10時前。
咳がひどくてバスで眠れなかったので、早くホテルにチェックインしたかったけれど
午後2時にならないと部屋には入れない。
とりあえず美術館に行こうと思い立ち、「島田章三展」を見た。
皮相浅薄ゆえに初めて聞く画家の名前。
全く予備知識もなく、鑑賞する。
息子には 「一時間もかからないから、どこかでコーヒーでも飲んでいて」と言って
入場した。
具象的な絵が多く、幾何学な模様と人物を合体させた絵が多く。
画家の意図がよくわからない。
でも、ひとつひとつ見ているうち、なぜだか自分でもよくわからないまま
独特の絵の世界に引き込まれていた。
特に「ノイローゼ」という絵の前にかなりの時間を費やした。
更年期障害だった母を描いた作品らしい。
この女性、時計を胸にしっかりと抱き、どこへいったらいいのか途方に暮れているように見えた。
まさに今の私ではないか。
50才前から徐々に兆しが訪れていたとはいえ、受け入れたくない・・・
でも皆通る道なのだと自分に言いきかせはしているけれど、コントロールできない感情に
押しつぶされそうになったり、そんな自分が情けなくて・・・・腹が立つ。
嵐がいつか通り過ぎるように、時間が解決してくれるとわかっているけれど
ただ嵐の中を右往左往している自分。
とにかく何もかにもが「不安」につながる材料となるのだ。
この絵の中の女性も私もいつか絵の中の重苦しい空気から
解放されるときがくるかもしれない。
その時、あらためてこの絵を見ようと思った。
今はその時のことを考える余裕すらないけれど。
気付いたら2時間も絵を見ていた。
息子は当然待ちくたびれて、コーヒーをお代わりしたり、ぶらぶらと時間を
潰していたらしい。
「暇」という時間が流れる時計を持って、ウロウロしている若い男の絵が
浮かんだ。
このあと、美味しいランチで少しは機嫌が良くなったずらね。