ゴシック後期のフランボワイヤン様式とルネッサンスが混合したこの建物様式は
15世紀から現在までほぼ変わらないそうだ。
そもそも中世美術の中で、ゴシックとロマネスクはどこが違うのか。
せっかくクリュ二ー中世美術館を訪ねるのだから、そのくらいは予備知識を
得なければと出発前、本を読んだ。
木俣元一氏著書の抜粋を要約する
まずは中世美術が他の時代の美術と最も異なる点は、登場人物が
つねにドンと中心に構えていて、背景や周囲の状況の描写は最小限に
切り詰められていること。
その結果、人物とその行為が最前面に出てくる。
そして、ロマネスクは11世紀にはじまり、12世紀中頃~後半に終わり
ゴシックは12世紀中頃~15・16世紀に終わったと考えられているそうだ。
ロマネスクの聖堂建築は比較的小規模で直方体や円柱、円錐などの積み木の
ような単純明快なヴォリームで構成、窓・扉は小さく、分厚い壁。
深い陰影のなかで光が劇的な効果を発揮している。
美術は、写実から解放された自由な形や構成。
人物の力強い身振り、・リズミカルな衣文、幻想的な怪物などが特徴。
一方、ゴシックはロマネスクが地域的な個性とするならば、ヨーロッパ
全体で様式としての統一感が強まったもの。
聖堂の規模は大きく、高く高く聳える塔のシンボル性や内部空間の
垂直性が強いのだそうだ。
窓の割合が増えて、壁が存在感を失い、巨大な内部空間は見る人を
圧倒する。
ロマネスクからゴシックへの変化は当時の経済的繁栄が関係しているそうだ。
世俗権力も教会の人々も自分たちの土台となるヨーロッパを意識しはじめる。
キリスト教の名のもとに諸地域をひとつに結び合わせることに力を注ぐ。
その結果、キリスト教を中心に美術が花開くこととなった。
例えば、教会のステンドグラスは信仰のため、犠牲となった聖人の物語を
伝えるため、生命を宿したような彫像は聖書の世界へ人々を導くため
象牙細工や精緻な写本の挿絵など小ぶりな美術品は、人々の日常生活に
入りこんでいく。
キリスト教の世界観を広めるためにゴシックは見る人の精神や感情により
強く、より細やかに働きかける美術となったのです。
木俣元一氏著書より
つづく