レンタル料が半額だったので、以前から見たかったDVDを
借りてきた。
「ヒトラーの贋札」
悲惨な戦争とは、全く無縁のような海辺の景色から始まるこの映画は
実際に国家主導の贋札製造事件にかかわったアドルフ・ブルガーの原作を
元にして製作された。
自らが生き残るために加担しなければならなかった
マウトハウゼン強制収容所での贋札つくり。
どんなことをしても戦争が終わるまで生き延びなければならない。
たった一つしかない命を惜しんで、どこが悪いのだ。
そんな心の叫びが響いてきた。
パスポート・紙幣の偽造を行うプロの贋作師サリーが病気の仲間を
救うため、一人正義感に燃え、皆を混乱させた仲間を救うため
プライドを投げ捨てて、やり遂げたあと、襲ってくる罪悪感と悲しみ。
強制収容所での過酷な場面はあまりないけれど、
精神的圧力もまた暴力にはかわりないのだと思い知った。
ウィーンのエゴン・シーレの名前が冒頭の場面に出てきた。
サリーは贋札よりも、絵を描きたかったのだ。
この時代に生きてさえいなければ、現代の私達に感動を
与える絵を残した人だったのかもしれない。