ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎著
俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか?
内容(「BOOK」データベースより)
仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界―、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。
伊坂幸太郎の本を初めて読んだ。
時間の交差、登場人物それぞれの感情が入り乱れて、最初は混乱したけれど、
絡まった糸が解けるように、すぐに物語に感情移入できた。
登場人物の会話に個性があって、人物像が私の中ですぐに形作ることができ、
ひとりひとりに愛着を覚えるような、親しみがわいた。
内容は、これは実際にあり得ること、もうすでに起こっていることかもしれないと
背筋が凍る思いがした。
私達は常に大きい力に支配され、気づかないうちに氾濫する情報に
踊らされているのだ。
そして、真実がある一部の人達の手によって、隠蔽され
虚偽だけが真しやかに横行する。だけど、それさえも気づかない私達。
今、世間を騒がせている事件、ホントにこの人が犯人なのだろうかと
何でも疑心暗鬼になる自分と、今、自分がホントに信頼できる人とは?
でも、救いはある。文中でも何度も出てくる言葉。
信頼。
大きい力がいくら引き離そうとしても、心から信頼し合っていたら、
決して離れることのない絆。青柳君はそんな信頼で繋ぎあった細いけど
何よりも強い絆を大学時代に育ててきた。
無駄だと思った日々が今になって大切だったと思うこともあるのだ。
いろいろ感じ入った本であった。