S銀行のYさんは毎週水曜日に事務所にやってくる。
約半年前、秘かに恋心を抱いているSホテルのフロントの女の子に
声をかけ、失敗している。
その時、きっとチャンスはやってくるから、今は引くのだと指示を出した私。
今日、仕事を終えたYさんが、なにやらモゾモゾしながら話しかけてきた。
「フロントの子に彼氏いるかと聞いたら、ヒミツって言われたっす」
えっー以前、私が聞いた時はいないって言ったけど、その後出会いがあったのかな。でも、おばさんデカの私・・・・「ヒミツ」っていう言葉に何やら含みがありそうだと
推理する。
「Yさん、ヒミツってことはいないってことだよ、きっと」
沈んでいた真っ黒の顔のYさんは心なしか嬉しそう。
おばさんデカの私が探りをいれてあげると約束する。
「でもね、Yさん、いざデートの時、何か楽しいこと、例えば駄洒落とか言って
彼女を笑わせることできるの?」
「うーん、駄洒落言いますよ、酔ったとき」
「だめだめ、シラフで言わなくっちゃ。どれ、おばさん相手に今、駄洒落言って
笑わせてみ」
「えー無理っすよ」
「じゃぁダメずらね、彼女の前だとよけい緊張して言えないずら」
素直なYさん、いい子なんだけど、若い女の子にとったら物足りないのかもしれないな。でも、Yさんの素敵なところ、きっと気づいてくれる運命の人は現れる。
今年中に彼女作りたいと焦らずに待つのだ、Yさん。