いざ出陣 | 謎のこうのとり 

2004年8月 マドリード


添乗員さんが後ろ髪を引かれるように去っていった。

プラド美術館のゴヤの絵の前で秘かに誓う。

絶対、お目当ての絵を観て、明日の朝

元気にお会いしますと・・・・。



ヒエロニムス・ボスの絵のある部屋でのこと。

若い日本人女性がフラッシュをたいて写真を撮った。

警備員が飛んでくる。

英語で「カメラをバッグにしまえぇー」と怒っている。

動転した女性はカメラを警備員に差し出している。

その時、息子は後ろ向きになって、

携帯のカメラのフラッシュを解除していた。

もしや、おぬしも・・・・いやいや、ずっと側にいたから

大丈夫・・・・。

小さい声でバッグへ入れろと教えてやった。


ベラスケスの絵の前でまたもやフラッシュ。

6才くらいの女の子を連れた日本人夫婦だ。

警備員がやっばり飛んできた。

もう、恥ずかしいったらありゃしない。

ノーフラッシュは絵を保護するために不可欠。

日本人の常識は一体どこへいくのだろう。


添乗員さんに指示された場所からタクシーに乗る。

たった2分・・・・あっという間に着いた先は

ソフィア王妃芸術センター。

日曜日は無料だけど、14:30で閉まってしまうのだ。



カフェで昼食をとる。

四角い建物のようなパンの中に沈んだ目玉焼き

ボリュームたっぷりのサンドイッチ(?)

息子は満足げだった。

私はチーズの匂いがきつすぎて、口の中に

入れるとき、息を止めなければならなかった。



ピカソの「ゲルニカ」

モノクロの絵なのに、鮮血が流れる残虐さ

悲しみ、絶望が色彩となって、心に突き刺さる

ようだった。

戦争は何も生み出さない・・・失うものしかない。

この絵を見れば、誰だって、きっとそう思うだろう。


スペインを代表するダリやジョアン・ミロの絵を

堪能、あっという間に閉館の時間となった。


建物を出ると、「近づいてはならない駅」

アトーチャ駅にたくさんの人が集まっていた。

添乗員さんの指示を破り、徒歩で向かった先は



ティッセン・ボルネミッサ美術館

外観は歴史が感じられる建物だが、

内部は新しく、個人が収集した美術館としては

相当の規模だろう。

地下のカフェで休憩し、展示室へ向かう。

疲れ切った息子は最後の部屋で待っていると

とっとと行ってしまった。


この美術館の絵画は幅広く、収集していて

どんな方も楽しめる展示となっている。

ミュージアムショップであれこれお土産を購入し

ここから徒歩5分のホテルへ戻る。


ホテルで闘牛場のライブをテレビで見ていたら、

息子が腹減ったーと騒ぎ出した。

ホテルのレストランへ行くはずだったけど、

ちょっと冒険・・・近くのスーパーマーケットへ

いざ出陣。

エントランスホールには、これからご出発の闘牛士と

ファンの方々。

あんまり興味がないので、横目で見るだけ。

私は牛の味方なのっ。


スーパーマーケットでいろいろ買い込んで

無事帰ってくる。

テレビでは、出掛けに見た闘牛士が最後の

トドメを刺していた。

闘牛士よ、来世は牛となって蘇れーと小さく呟くのであった。



   コルドバのメスキータ