福田平八郎
私の好きな日本画家の1人である。
初めて、安来にある足立美術館で福田平八郎の絵を
観たのは、17年前。
牡丹雪が降る寒い1月のことだ。
当時、最寄のJRの駅から足立美術館に向かう
路線バスの便数が限られていて
なんと贅沢にもタクシーを利用した。
うっすらと雪化粧をした日本庭園が美しくて
時間を忘れて、見入ったものだ。
そして、横山大観、魯山人、浜田庄ニの作品を
時間をかけて鑑賞した。
その中に福田平八郎の「茄子」の絵があった。
あまりにもシンプル、単純、素朴。
だけど、味がある。
ひと目でお気に入りの絵となった。
ミュージアムショップで茄子を印刷した色紙を買った。
毎年、秋になると部屋に飾る。
昨年の5月、京都近代美術館で大規模な回顧展があり
妹とともに、美術館を訪ねた。
画風の変遷がひと目でわかる展覧会。
緻密な魚の絵、抽象画のような絵、南国を思わせる
ような斬新な絵、1人の画家が描いたとは思えないような
豊富な画風であった。
しかし、すべてに一環して感じたことは
対象物に敬愛の心が宿っていること。
翌日、中京区寺町にある一保堂茶舗に行った。
店内の喫茶室「嘉木」にはさりげなく福田平八郎の
タケノコの絵が飾られていた。
愚問だと知りながら「本物ですか?」とたずねたら
「はい」・・・・贅沢な喫茶室であった。