小さい絵 | 謎のこうのとり 

昨年、11月に訪れたローテンブルク




城壁に囲まれた旧市街は歩いて回っても

1時間くらいの小さな町。

ショーウィンドウはクリスマスの飾りつけで

子供のような浮き立つ心を誘う。

聖ヤコブ教会の中に入り、奥の階段を上がった所に

有名なリーメンシュナイダーの聖血の祭壇がある。

臨場感溢れる場面は「最後の晩餐」

まるで一瞬にして、時がとまったかのような緊張感に

満ちている。



教会を出て、市庁舎の方に向かう小さな路地

看板に蔦がからまり、風情のある

小さな小さな画廊があった。


その画廊の主人は日本人で画家でもあった。

画家のお嬢さんが絵の説明を丁寧にしてくださった。

旅行中の私には荷物になるし、高価な絵なので

見せてもらうだけとお断りをした。


目立たない壁の隙間に小さな絵があった。

マッチ箱よりも小さい黄色の花の油絵。

「可愛い絵ですね」と、お嬢さんに言うと

「それは画家のお気に入りで売り物じゃないのです」

こーなに小さいのにちゃんと油絵なんだ。

しかも、優しくって、あたたかくって、いい絵だなーって

素直に思った。

製作に励んでいた画家が振り向いて

「いいですよ、お譲りしますよ」とおっしゃってくれた。

とても恐縮する私・・・・幾らなんだろう?

画家は「幾らでもいいですよ」と・・・・。


絵の値段など、さっぱりわからない。

ましてや、ご本人を前に失礼な金額を言うのも

はばかれるしと、かなり困り顔の私。


お嬢さんが「このくらいでしたら」と金額を提示してくださった。

とても寛大な金額だったと思う。

今、その絵はわが家の部屋にちょっこんと飾っている。

旅の思い出とともに、かけがえのない私の宝物として。