昨年、妹と訪ねた「佐川美術館」
滋賀県守山市の琵琶湖畔に建つ。
この美術館の大きい池の下には
「楽吉左衛門館」があり、茶室が池に浮かんでいる。
池の下の階段を下りていくと、黒い打ちっぱなしの
無機質なコンクリートに囲まれた広い空間がある。
その空間の片隅からは池の底がガラスとなっているため
ゆらりゆらりとやわらかい光が射し込んでいる。
また、その反対の隅には、巨木が横たわり
立礼の席となっている。
秘密の迷路のような細い通路を抜けると
うす暗い空間の中、浮き上がるように
楽吉左衛門の作品がひとつひとつ
充分な間を置き、並べられている。
ごつごつと歪な、力強い一碗。
それぞれの碗の中に異質な宇宙が広がっている。
ゆっくりと時間をかけて、この異次元を堪能する。
生憎、茶室は予約制のため拝見できなかったが
妹も私も至福の時間を過ごすことができた。
すばらしい芸術作品で心は満たされても
腹は減るものだ。
よって、付随のレストランで腹を満たす。
見た目もお味も結構でした
京都にある楽美術館に何度か訪れたことがある。
代々の名品は、轆轤を使わず、すべて手捻り。
その過程において、どんどん作者の想いが込められて
いくのだろう。
息子が中学生の時、楽美術館の受付の方に
「お母さんのお供で来たの?」と質問された。
息子はきっぱりと
「 自分の意思で来た」と、のたもうた。
えっー、うっそー
嫌がる息子を一緒に行かせるために
さっき虎屋茶寮で甘味を堪能して、おまけに羊羹まで
私に買わせておいて
外面のよさは、誰の遺伝子かっ
間違いなく、あの子の父親のそれだ。
そして、「腹減ったー」が口癖の息子の所望で
楽美術館近くのラーメン屋に入る。
せっかくの沈香の移り香が台無しだ。
息子 「お母さん、ミズ餃子って、どんなが?」
私 「さぁ、水に浮いてるのかなぁ。頼んでみたら」
息子 「ミズ餃子ください」
店の人「スイ餃子ね」
恥ずかしいったら、ありゃしない。
高尚な鑑賞のあとの苦い思い出となった。