夕方になり新人の絵美ちゃんの歓迎会へ出かけた。


精神的なショックもあったが、幹事ということと今の自分の状況を忘れたいというのもあって参加することにした。


電車に乗り20分ほどの街に下り、店に歩いて向かう。


途中、会社の人と出会い一緒に店に入る。


他には誰も来ておらず、しばしそのまま待つ。


ひとりひとりと店に現れ、歓迎会が始まった。


幹事なので、司会進行を行う。


・・・。


会話のなか、ボクに元気がないことに気付いたヨシコちゃん。


「なんで元気ないの?大丈夫?」


と声をかけてきた。


ぼくは「大丈夫よ!」と答えなんともないそぶりをみせた。


その質問を皮切りにみんなが「本当に大丈夫?」


「なにがあったんですか?」


と質問攻めにあったが


「だいじょうぶよ!なにもないって!」


っと笑顔で返した。


みんな納得いかないような顔をしていたが、これ以上は聞かないほうがいいと察したのかそれ以上の質問はしてこなかった。


飲み会の楽しい時間が過ぎていく。


ただ、ぼくはいまいち楽しむことができなかった。


病気のこともあったが、片耳が聞こえないせいで会話がいまいち聞こえず会話についていけなかったからだ。


右から話されるとまったく聞こえないので、右を向いて左耳で聞き取らないと会話もできないほどだった。


さらに、店内の騒がしさがより一層聞き取りにくさに拍車をかけていた。



・・・。



飲み会も終わり、それぞれが家路につく。


ぼくも帰ろうかと思っていたが、仲のいい先輩が


「カラオケいこう!!」


と誘ってきた。


他の女の子たちも、「森永さんいきましょうよ!」というので、ボクと先輩の川田さん(35男)、ヤスコちゃん(26)の三人でカラオケにいくことに。


カラオケで三人で盛り上がる。


ぼくの番がきたが片耳では音程がとりずらく、わずかに聞こえる自分の声をたよりにミスチルのSIGNを歌った。


他に、GREEEENやコブクロ・・などなど。


2時間ほどいたが、あっという間だった。


これで、しばらくはカラオケも来ることができない・・・もしかしたらこれが最後になる可能性だってある。


そう思い思いっきり楽しんだ。


そして、終電間近になりいそいで駅へ向かった。


川田さんはバスだったので、降りる駅が一緒だったヤスコちちゃんと一緒に電車に乗って帰ることに。


副腎皮質ホルモン剤とは


腎臓のそばにある、副腎と呼ばれる臓器で産生されているホルモン。


この副腎皮質ホルモンを含む薬剤を、総称して副腎皮質ホルモン剤(別名:ステロイド剤)と呼び、内服薬・注射薬・外用薬など、色々な剤型があります。


強力な消炎作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用などを有し、その作用にも、強いもの、弱いもの、その中間のものなどのたくさんの種類があり、各々使用目的が違います。


耳鼻咽喉科領域では、突発性難聴・顔面神経麻痺・めまい・亜急性甲状腺炎などの病気に使用します。



副作用について


医師の指示通り服用すればあまり心配要りません。

しかし、可能性は低いとはいえ、副作用が出現することがあります。


①易感染症: 免疫機能を抑える作用があり、長期間服用すると感染症に罹りやすくなることがある。


②胃炎・胃潰瘍: 胃酸が増加する一方、胃の修復力が弱くなり、胃が荒れることがある。


③精神変調: いらいらしたり、不眠のほか、幸せな気分になることもある。


④緑内症・白内障: 症状が悪化することがある。


⑤骨祖鬆症: 大量長期間服用すると、骨がもろくなることがあります。


⑥高血糖: 一時的に高血糖をきたします。 服用終了すると、治癒することがほとんど。


⑦血圧上昇: 服用中は、一時的に血圧上がります。


服用方法


毎日同じ量を服用するのではなく、午前中多めに服用して、3~7日毎に段階的に量を減らす。


薬の量や服用間隔は、病気の種類、程度、治り具合、副作用の程度により異なる。



服用の注意点


①症状がなくなったからといって、治療途中で勝手に服用を中止すると、病気が再発したり、副作用がでることがあるので指示された通りに服用する。


②服用中は、週に1~数回、病気の治り具合と副作用のチェックをするので決められた日に来院すること。


③女性では、服用中は妊娠、授乳は避けること。



ペタしてね

朝起きるとすぐに事態の深刻さに目が覚めた。


右の耳の聴力が完全になくなっていた。


痺れがあり、ほとんど感覚もない。


右耳を触ってみる。


左は耳のまわりを触るとガサガサ聞こえるが右はまったくといっていいほどの無音。


それどころか触っている感覚さえも皆無。


しかも、キーンという耳鳴りが頭に響く・・・。


事態の深刻さにあせりを感じる。


とりあえず会社に出かける。


有給がほとんど手付かずで残っていたので、午後からは休むことにした。


しかし、今後のこともあると思い上司の今田さんを会議室に呼び自分の病気のことを話した。


その結果、午後の検査の結果で今後を考えるということに。


会議室からでてくると、後輩のみんなが心配そうに


「だいじょうぶですか?」


「なにがあったんですか?」


と声をかけてきた。


上司を会議室に呼び出して深刻な話をしていたのが不安を煽ってしまったのかと思い。


「だいじょうぶよ。なんにもないから」


と、まあーそういっても心配するだろうなと思いながらも、はっきりした診断結果がでるまでは余計な心配を煽るだけだと思いとりあえずその場はそう応えた。


午前の仕事が片付き、午後病院へ向かった。


待合室で


(なんともありませんように汗


と祈るように診察の順番を待っていた。


「森永さん!」


と看護師さんに呼ばれ診察室へ。


診察イスに座り、先生が


「耳の方はどうですか?」との質問。


素直に「一旦よくなったのですが・・・・」


とこれまでの経緯を説明。


とりあえず聴力検査をしてみましょうとのことで無音の検査室へ。


イスに座りヘッドホンを付ける。


「まずは左から音が鳴るので聞こえたらボタン押してくださいね。」


「はい。」と応えていろんな音が鳴るたびボタンを押す。


「じゃあ続いて右ですね。」


「はい。」と応えるが音がまったくわからない


耳鳴りのキーンという音がうるさくてどんな音が鳴ってるのか、そもそも音が鳴ってるのかさえわからない。


ボタンを押すこともなく。


「はい。じゃあ終了です。待合室のほうでお待ちください」


といわれ、待合室で待っていた。


その間、待っている間すごく時間が長く感じた。


絶望と恐怖が入り混じっていてなにを考えていたのかあまり憶えていない。


そして、診察室に再び呼ばれ。


「だいぶ悪化してますね。」


といって前回の聴力のグラフと今回のグラフを見せてくれた。


強めの薬を出します。来週早い段階でもう一度これますか?」


「来週1週間丸まる広島に出張で、帰るのが金曜の夜なんですよ・・・」


「なんとか、火曜。遅くても木曜には来れませんか?」


「仕事上、代わりがいないもので・・・。」


「もし、この薬が効かないようであれば入院してもらう可能性があります。薬が効けばいいんですが、そのことも考慮して話し合ってみてください。薬は一応土曜までの分出しておきますから。」


『プレドニン錠(副腎ホルモン剤)、アポホスコーワ腸溶錠、メチコバール錠、セルベックスカプセル』の4種類。

「わかりました汗


その診断結果を上司の今田氏に報告。


とりあえず薬の効果をみて考えていこうということになった。


今日は新人の絵美ちゃんの歓迎会があるので、幹事のボクが出席しないわけにはいかないのでとりあえず一度家に帰り、支度をしてお店へ向かうことにした。


家に帰りひとりソファーに腰掛け考えていた。


これからのこと。


このまま、一生聞こえなくなったなら会社も辞めなければいけないであろうことも


どうやって生活していこうかとも。


(いくら考えてもいい事なんかひとつも浮ばないや)そう思った。


もともと、ウジウジ考えるのは好きじゃない。グー


しばらく成り行きに身を任せてみようと思った。





帰りの車の中、片方からだんだん音が遠ざかっていく・・・


昼を過ぎ、夕方近くなっても一向によくなる気配がない。


どんどん耳の中に圧迫感が増し、音がコモっていく・・・。



途中休憩を何度かはさみ、そこでみんなと会話をするが


自分に何か異変があることを悟られないよう明るく振舞う。



何度か休憩の後、ようやく会社に戻った。


丁度、駐車場で広島の出張組と戻りが一緒になり前日の飲み会の話やメールの話をしながら


会社へ戻る。


会社に戻り出張の事後処理をし、しばらく昨日の件をみんなで談笑しながら家路についた。


ひとりになると急に怖くなる。


自分はこれからどうなっていくのだろうという不安と薬で一旦はよくなったのだからと自分の中での葛藤。


自分の部屋でソファーに座り、電器もつけずボーっとしていた。


音を聞くと聞こえない不安に駆られてしまうので一切の音を流さず暗闇の中、心をなんとか沈めようとしていた。


(そうだ!!)


(一昨日はお風呂に湯をためて、アロマのバブを入れてゆっくり温まって早めに就寝したらよくなった。


だから、また同じようにリラックスすればよくなるかも)


そう思い、一昨日と同じようにして早めの就寝をした。


電器を消し真っ暗な部屋の中、ぼくはベットの中で何も考えないようにしていた。


必ず明日にはまた、よくなっているはずだからと・・・。


今日は飲みすぎと出張の疲れでこんな症状がでたんだと・・・


そう何度も、自分に言い聞かせるかのようにして深い眠りについた・・・。



ペタしてね

朝、目を覚ますとうるさく目覚ましがなっている。


いつものように重いまぶたを必死に持ち上げて、なかなか起き上がらない体を重い足取りで顔を洗いにバスルームへ向かう。



冷たい水を顔にかけ、いっきに目を覚ます。


コンタクトをつけ、髪形を整えて1Fのフロアに朝食をとりに向かう。


そこには、すでに朝食をとっている面々。


「おはようございます。」


そう声をかけるとみんなも返事を返す。


ひとりで食事を取っているアリサを発見。


「おはよう!こっちで一緒に食べようよ!」


「うん。」


「昨日ちょっと飲みすぎたかなーあせる朝ちょっと食欲ないし・・・」


「あのくらいで?ユウキくんまだまだやねにひひ


「さすが、アリサシラーさすがやね・・・」


そんな会話をしていると・・・


新人の絵美ちゃんがやってきて朝食券をどこに渡したらいいのかわからずオロオロしていた。


「おーいパーそこのカゴにいれといていいらしいよ得意げ


そう声をかけるとそそくさとカゴに入れてお盆をもってこちらへかけよってきた。



「おはようございます。」


そうちょっと元気ない声でやってきた。


「飲みすぎた?」


「いや、朝弱くてあせる


「そうなんだ汗


「はい・・・」


そういって彼女はバイキングの朝食をとって席に座った。


三人で昨日の話でそこそこ盛り上がったあとアリサはいったん部屋に戻った。


ばくは優雅にコーヒーをブラックで飲みながら絵美ちゃんの食事が済むまで会話を混ぜながらまっていた。


・・・・。


食事が終わると


「じゃあまた、時間がきたらフロント集合ね!」


「はーいアップ


そう応えて2人それぞれの部屋へ戻っていった。


その後、部屋でしばらくゆっくりした後フロントで全員が集まり仕事へ出かけた。


・・・。


10時すぎころだったか違和感を感じる。


会話が微妙に聞き取りずらくなっている。


右耳が詰まったような間隔に陥る。


また、あの時の症状だと思い少し不安を感じながらも仕事を続ける。


時間が経つにつれて少しずつ悪化しているようだった。


それでも、薬ですぐ治ったのだからと自分に言い聞かせた。


          


                                    つづく