色々と考えさせられる物語でした

 

 

今回ご紹介するのはコチラ

 

 

 

一人の日本人学生が

東ドイツへ留学するところから物語は始まります

 

彼は音楽の聖地である東ドイツで

純粋に「自分の音」を求めるためにやってきました

 

大学に入ってすぐ

レベルの高さに圧倒され

音の世界に溺れていきます

 

東ドイツ到着後

すぐに出会ったオルガン奏者に惹かれ

彼女とそのオルガンを忘れられません

 

自分の音と彼女を探しながら

シュウジは東ドイツの波に飲み込まれていきます

 

 

大学で出会う留学生は

天才バイオリニストのハンガリー人

ピアニストのベトナム人と中国人

全てが社会主義国からの留学生

そして東ドイツも社会主義国の時代

西ドイツとはベルリンの壁で隔てられています

 

その中に

島国の民主主義国家である日本から

シュウジはやってきます

 

入学時から

その差はハッキリと出ます

 

シュウジが東ドイツにいるのは

ハッキリ言って自分のためです

しかし

他の留学生は違います

死ぬ思いで留学してきました

 

それでも

平和な民主主義国家で暮らしてきたシュウジは

彼らの奥にある苦しみを理解できません

 

しかし

これは

留学生や音楽の話ではありません

 

東ドイツという社会主義国家で暮らすということは

こういうことなのか!

愕然とする物語です

 

それぞれの物語が複雑に絡み合います

社会主義国家では

誰も彼もが信じられない世界です

 

お互いに監視し合っている時代

家族だろうが

友人だろうが

隣人だろうが

全てが信じられません

 

だからと言って

悪い人ばかりではありません

むしろ

悪い人なんていません

 

なのに

なぜお互いが密告し合い

監視し合うのか

 

それは自分を守るため

家族を守るためです

 

何かを護るために

何かを犠牲にしなければならない

何かを救うために

何かを諦めなければいけない

 

これが

未来がないということか

これが

社会主義国家で生きると言う事なのか

 

心が痛くなります

 

これを読むと

日本のように

島国の民主主義国家が

どれだけ平和かを

思い知らされます

 

地続きの国々は

例え自国が平和でも

常に近隣国との関係に脅かされていることが

この本を読むと感じられます

 

国境を接していない国

そして豊かな国である日本

この平和度は

他に類がないのではないかと思った

 

しかし

社会主義国家の人々が

「悪」な訳ではありません

 

彼らはお互いを想い合い

自分の正義を貫いて

時には手を繋ぎ

時には利用しながら

出来る限りの抵抗をしつつ

自国の繁栄を願っているのです

 

何でこの物語の背景に

常に音楽があるのか

 

それは

音楽や芸術には国境がなく

敵や味方も関係なく

お互いを切磋琢磨しながら高められるから

 

音楽で人々は

繋がっていくことができるからじゃないかと思う

 

音楽をやっているときだけ

彼らは自分らしさを出せます

何も関係なく

純粋に音楽だけを語れます

 

そういう時間って

そういう関係って

社会主義国家では

大切なのかもしれない

 

 

今現在

私たちが享受しているものは

ある国では与えられていないのかもしれない

どこかの国では

手に入らないものなのかもしれない

 

日本は

なんて幸せなのだろうかと思う

 

この平和を

ただただ受け取るだけでなく

どこかの誰かに返していきたいと思った

 

 

静かに始まった物語が

ラストに向けて大きな波になっていく

 

音楽を聴いているような

そんな壮大な物語でした