8月4日いよいよパトルにとって初陣の日が来ました。リビアへ偵察に飛ぶライサンダー偵察機の護衛が任務でした。
 国境線を超えると間もなく7機のブレダ65型がライサンダーを狙って降下してきました。そうはさせないと8機のグラディエーターが立ち塞がり、壮絶な格闘戦が展開されました。パトルが1機のブレダに食いついた時、もつれ合うように別のブレダとグラディエーターが砂漠へ落ちて行くのが見えました。「仇討ちだ」。流行りたったパトルは300メートルから射弾を浴びせたが決め手になりません。「そうだ。もっと接近しないと」。スロットルを全開にして距離を詰めて行くと、突然左翼の機銃が動かなくなりました。「大事な時に故障だ」。パトルは舌打ちしましたが、尚も追いすがるとブレダは致命的な誤りを犯しました。早く味方基地へ逃げ込もうと、方向を北に切り替えたのです。ブレダは旋回の一瞬、150メートル前方に停止し、大きく横腹を晒しました。
 残る2挺の機銃から斉射を送ると手応えがありました。エンジンから白煙が出るとくるくる回りながら落下し、土煙を上げて砂漠に激突しました。
 生まれて初めての撃墜戦果でした。一息ついて上昇し、国境へ向かって飛びながら故障しました機銃の修理をやっていると、北西方から5機のCR42が降ってきました。パトルは気付かぬふりをしまして飛び射点に届く寸前でさっと切り返して格闘に入りました。1対5の劣勢の上フィアットも連携が良く、苦戦に陥りました。それでも降ってきました。1機をつんのめらせて素早く一撃を加えると見事に命中しまして敵機は墜落しました。2機目の戦果であります。ですが残る2挺の内1挺の機銃が動かなくなりました。幸運にもフィアットは空戦を断念しまして帰路に着いたので、パトルもほっとして帰りを急いでいると、又も15機のフィアットとブレダの混成編隊がやってきました。
 もはや逃げ回る以外に方法がありません。そのうち1機の射線を交わしました途端に別のCR42の命中弾を受け、愛機の操舵が利かなくなりました。これまでと思ったパトルは機を上昇姿勢に移すと落下傘で飛び降りした。