アメリカ海軍の考え方は違っていました。日本がミッドウェー島を押さえたら、アメリカはそれを長距離爆撃機と潜水艦で包囲しようと考えていました。ミッドウェーは日本本土から3000キロ以上離れており、しかも完全に孤立しています。補給は海に頼る以外にありません。日本は太平洋における補給の問題を充分理解していませんでした。日本がミッドウェーを占領しましたとしても、補給上、新たな難問を抱え込む事になっただけでしょう。
 日本は補給の問題を軽視する一方で、「軍事的な名誉」を重視しました。つまり、日本はアメリカが何が何でもミッドウェー防衛に出て来ると踏んだのであります。しかし、アメリカは別の考え方をしました。
 アメリカは日本の暗号を多数解読していましたので、日本の計画のあらましを知っており、ミッドウェー周辺の太平洋上にいました3隻の空母の全てを日本艦隊の奇襲に振り向けました。アメリカ側は幸運に恵まれ、日本側の計画はずさんでした。日本は空母4隻が撃沈されたのに対し、アメリカは1の空母を失いましただけでした。日本海軍はその後、遂にこの敗北から立ち上がれずに終わりました。空母建造のスピードは、アメリカの方が日本より遥かに早かったからであります。
 アメリカ海軍首脳部は日本の空母機動部隊、特に6隻の大型空母と最終的には戦わねばならなくなることを悟っていました。1942年6月迄アメリカが太平洋で保有していました大型空母は僅かに3隻。新造のエセックス級大型空母24隻の1号艦が到着するのは、新年迄待たねばなりません。それまでは潜水艦と地上基地の航空機で、防衛ラインを死守しなければなりません、と覚悟を決めていました。ミッドウェーの戦いはアメリカ海軍にとって回避することの出来ない戦いであり、だからこそアメリカは日本を出し抜く事が出来たのであります。
 日本の暗号を解読するという有利さがなかったら、アメリカは虎の子の3隻の空母を危険に晒しはしなかったろう。その結果、ミッドウェーは日本の手中に落ちていたかもしれません。しかし、そうでしたとしても、それは戦争の大きな流れの中では、実際には比較的小さな影響しか与えなかったでしょう。