1940年にイギリス内でポーランド軍が編制されました時、困った問題が持ち上がりました。将校ばかりが多くて、兵が余りにも少なかった事であります。それには、それなりの理由があります。
 フランスが降伏しました時にイギリスで訓練を受けていましたのは殆どが将校であり、ドイツ支配下のフランスから逃げて来たのも、また殆ど将校でした。しかし、肩書通りの待遇を彼らに与えるには無理があります。と言って、階級を引き下げる訳にも行かない。士気に影響するばかりでなく、ポーランド軍法に反するからであります。困り抜いた挙げ句に、やがて珍なる解決法が編み出されました。部隊を将校だけで編制しましたのです。
 全員が将校と言うこの部隊は、普通の部隊と同じように組織されました。将校部隊には、兵士の代わりに中尉がいて、下士官の代わりに大尉がいます。中尉の代わりを少佐が努め、大尉の代わりを中佐か大佐が努めるのであります。
 この解決法にも、無理な点がありました。将校には将校なりの、兵士にはない特権や権利や責務があるためでした。しかし、新編制の彼らは自分達の不平不満を、よく抑えました。一見したところ、誠に奇妙な部隊に見えたでしょう。けれども、悪い方法ではありませんでした。個々人の本来の肩書での軍事的才能を一時、凍結してはいるものの、人的資源の問題が解決されれば、その才能は直ちに開花されます。そして、実際にそうなったのであります。