驚くことに、ドイツ軍と連合軍の戦車比較をすれば、多くの点で連合軍の方が優っていました。保有台数はドイツ軍が3227台で、連合軍がイギリス590台、フランス3437台、台数で25%も上回っています。けれども戦車について数の比較は、さほど重要ではありません。問題は質であります。
 クラス1の戦車はスピードがあり、敏捷で、時速は最低時速25マイル(40キロ)を出します。クラス2は時速18マイルがぎりぎり、クラス3となると最高に出しても時速12マイル、それも道路の上でです。連合軍はドイツ軍より25%も多い数の戦車を持っていましたが、ドイツ軍の機動性に匹敵し得るのは、そのうちの3分の1しかありませんでした。
 この敏捷性のお陰で、ドイツは作戦的、戦略的に優位に立ちました。ドイツ軍戦車は、作戦的に素早く行動できました。一番弱いパンツァー1(機関銃2挺、装甲半インチ、道路時速25マイル)でさえ、フランス軍の重戦車シャールB1(75ミリと47ミリの戦車砲、数挺の機関銃、装甲3インチ、道路時速18マイル)をかわすことができました。
 戦略的には、電撃作戦に不可欠な戦車の進攻速度を、ドイツの優秀な内燃機関が可能にしました。もう1つの優秀性は、全戦車に無線機が装備されていましたことであります。無線で連絡し合えば、連携作戦がよりスムーズになります。連合軍はと言えば、大半の戦車に無線設備がありませんでした。これだけ優位に立っている上に、ドイツ軍戦車は組織の面でも優れていました。