今日も彼女が来た。
彼女のおかげで僕の曜日感覚は正確に働いている。
いつもの席でコーヒーをたのみ、文庫本を取り出す。
水を一口飲んで外を見ている。
コーヒーを運ぶ僕はそんないつも通りに行動する彼女をじっと見ていた。
「おまたせいたしました。」
ありがとうと小さく言った。
僕はいつもこの瞬間に全声力を使っていた。
今日の仕事がすべて終わった気分だった。
入り口で音がした。
ぼくはそっちを向こうと首を動かしかけた時彼女が顔を上げた。
びっくりした。
いつもと違う行動を取る彼女を僕は初めて見た。
なんて嬉しそうな横顔なんだろう。
こっちを見てくれなくても、その顔を見れただけで満足だった。
足音が近づいてきて、彼女の目の前に当たり前のように座った男は「コーヒー」と僕に向かって言った。
突然のことに僕は固まっていた。
「あのー、すいません。」
男がもう一度話しかけてきたその時、彼女が初めて僕の方を見た。
「大丈夫ですか?」と言われ我に返った。
「は…はい。コーヒーですね。かしこまりました。」
僕は早足で戻った。