私の大好きな金哲彦コーチもサバイバーだ。
この本にはガン告知、術後のフルマラソン完走など、金さんの走る意味が綴られている。
健康のため、ダイエットのため、人それぞれに走る意味はあるだろう。
4年前に再婚して、わずか2ヶ月足らずで「乳ガン再発患者の夫」となった…私の夫…
抗ガン剤治療に苦しむ私を励ますために「走ってみたかった」マラソンを走るようになった。
私は髪の抜けた頭を帽子で隠し、一緒にマラソン大会に出かけ、夫を応援した。
ある日、いつものようにフィニッシュ地点で夫のゴールを待っていると、雨でもないのに傘を高々とさしている初老の男性が目にとまった。
フルマラソンを無事ゴールした初老の女性がその男性に近づく…そうか傘は目印だったのか。
感動的なハグがあるわけでもなく、たくさんの言葉を交わすわけでもない。
でも私はその2人の姿に何故か感動した。
1年間に及ぶ抗がん剤治療で再発ガンが消え、少しづつ日常が戻ってきた頃、夫が「一緒に走りたい」と言うようになった。
「無理」だ。私は走った経験がない。
しかも乳ガン再発患者だ。手術もしている。
抗がん剤もした。そして50才を超えている。
でも「マラソンはゆっくり走れば苦しくないんだ」と夫は言った。「本当に?」
ならばゆっくり走ってみようか?
本当だ。ゆっくり走ると苦しくない。
だんだん長い距離を走れるようになった。
2人で走れるようになった。
夢だったホノルルマラソンを2人でゴールすること。それが今の私の走る意味。
そして
いつか出会ったあの時の
あのご夫婦のように
穏やかに年を重ねたい