年齢引き上げが検討されるのはこれがはじめてではありません。

 

シニア参入の引き上げは前にもISUでも根回ししてなかったのがいけなかったのが、賛同をえられず、正式案として本会議で採択される対象にもならなかったのです。

今回、ペアだった元オーストラリア代表のアンドロフスカヤが自殺した件がどうやら再度この案が浮上したきっかけとなったようです。2007年ジュニアで優勝するも、シニアにあがってからは苦戦していました。20歳でした。原因は公表されていたのかしら。書き置きがあったらしいので、推察はできているのかもしれません。

https://www.sports.ru/figure-skating/1087066675.html

を日本語訳したかぎりでは、スポーツキャリアに関するうつ病に苦しんでいた、ということでした。

アンドロフスカヤの死とシニア年齢引き上げが結びつくのかどうかはわかりませんが、提案者がオランダのダイケマ会長なんです。前回の総会でオランダが年齢引き上げを提案したのも会長の後押しがあったのじゃないかと。

これ、アルトゥニアンあたりも支持している考えです。なにせ、15でチャンピオン、その後、キャリアが伸び悩んだり、拒食症や疲労骨折(おそらくは栄養不良がひきあげの一つ)で苦しむというパターンが定着しています。平昌金メダリストで人気も高いザギトワが引退か、という説が何度もささやかれるのがこのせいです。ロシアなど実際に勧める声もありますしね。メドベにしても、プルシェンコが引退したほうがいいのではなどと発言してますし。

年齢をひきあげても、過激なダイエットをして拒食症候補が多いと思われるロシアがほんとうに選手の健康を考慮するようになるかはわかりません。だけど、少しはちがってくるのか?という気がしないでもないのです。

というのは、今の採点法、特に女子は子供の体でしかできないなんちゃってジャンプに高い点をあたえるような変なことになっています。女子の4Lzって、すべからくプレロ、フルブレードのもので、実質は3Loのとびすぎでしょう。それはアリエフ、サマリンにもいえることなんですが。実は昌磨君の4Fもそうなんだけど。

だけど、男子の二人は飛び続けているとはいえ、トゥルソワやシェルバコワが4Lzを飛び続けられるのか?というとまだ未知数です。私見では無理だと思ってます。女子は成長で回転がにぶるのは科学的な統計もでている事実です。鉛筆体型がジャンプに有利といわれていますが、女子が鉛筆体型をたもてることなどありませんのでね。また、柔軟性があるからむりやりひねれる、というのもあるでしょうし。子供の柔軟性は当然ながら、大人になると消えていきます。男子より女子のほうが柔軟性は保ちやすいですけど。

となると、年齢制限あげたほうが、はじめから大人の体向けの技術の習得をめざすようになってトレーニング方法がいまのようなものではなくなってくるのでは、なんて思わないでもありません。

その前に、子供のなんちゃってジャンプに高い得点をつけるようなおおぼけのジャッジたちの姿勢をあらためるべきなんでしょう。女子と一部のロシア男子の4Lzにはすべて3Lo判定をしていたら、少しは事態がましになってたでしょう。年齢制限ひきあげとともに、ジャッジ教育をなんとかしてほしいです。一部(というか大半かも)の4Lzが3Loであることを宣言して、なぜそうなのかを画像とともに検証したビデオでもつくって公表し、警告を発します。それも誰でもわかる形で。コミュニケーションにも明記する。なおかつそれでも点をやるようなテクニカルや一般ジャッジは出場停止処分にする、ぐらいのおもいきったことやらないと変なジャッジはとまらないでしょう。本当に選手の健康を守りたいならそれぐらいやったらどうでしょうか。

ともあれ、私個人は年齢引き上げに賛成です。

思うに、男子のピークは一直線です。18歳ぐらいで体ができてきはじめたころぐらいから23~24ぐらいまではケガしないかぎり一直線に上昇カーブをかくのでは。個人差あるし、24以降でも伸び続ける選手はいます。疲労度の調整がうまい場合はとくに。

だけど、これまで観察したかぎり、女子のピークは二つあります。ふたこぶらくだみたいに。

一つ目のピークは15歳前後の体型変化がはじまる前。

二つ目は体型変化の体になれて技術が熟してきた20台。

一つ目のピークと二つ目のピークでは時差があります。人によってそれこそちがうけど長ければ5年あるだろうし、リーザみたいに途中でよい年がある、みたいなのもあるんでしょう。個人差大きすぎて、一概にはいえないかもしれません。

途中、ふしぎなピークっぽいものがきたとはいえ、このふたこぶラクダ説、わかりやすく支えてくれるのはリーザですね。体型変化にふりまわされたスケーターです。15歳のシニアデビューではどれほどあばれるんだ、と思ったら、次の年から体型変化でしずみ、オリンピック代表になれませんでした。17歳のソチの翌年はよくてあっさり世界一に。だけど、そのあとまた沈んで平昌の代表になれず。ミーシンが無理なダイエットをさせなかったというのもあって、きわめて女性的な体型をしてます。ダイエットは全然してないとは思いません。2019のチーム対抗戦のリーザは最高のきれをみせてましたが、あのときは体重しぼっているようにみえました。おそらく短期的なダイエットをしたのでしょう。これでしたら問題はきわめて少ない。真央ちゃんがやってましたよね。どちらも、拒食症にはなってないし、栄養不良による疲労骨折もおこしていません。

そしてリーザは平昌以降、安定していませんか?本人いわく、今は過去よりも技術的に自分は優れていると発言してます。そうだと思います。3Aは安定してますし、4Tの練習動画みたかぎりでは、あれは不正でもなんでもなく認定されてしかもプラスつく質じゃないでしょうか。試合できめてくれる日が待ち遠しいです。しかもついでにいうと、スピンは極上とは思いませんが(ミーシン組ってみんなそう。プルシェンコにしたってディック・バートンさんが頭が飛んでいくかと思ったとけなしまくったでしょ)滑りの基礎はありますよ。クロスだらけだからわかりにくいけど、同門のサモドゥロワとくらべるといいとおもいます。クリムキンであれだけあおれるのもしっかりした基礎があるからこそじゃないかしら。昨年、突如として3Aの前にブラケットいれてたので目をうたがいましたが、やろうと思えばジャンプ前にステップいれられるはずです。ただしジャンプの成功確率は減りそう...ジャンプおたくのミーシン御大にとっては、ジャンプの成功と質のほうがだいじなんでしょうね。

もう一つ、ついでにいうと、アルトゥニアン戦略もミーシン戦略といっしょです。ネイサンはイーグルからはいるときはともかくとして、かなりの長大なクロスからジャンプしてますでしょ?アルトゥニアン本人が自分の生徒にはジャンプ成功させるために前にはステップをいれるなどはしない、と数度、インタビューでいってますわよ。あのインタビューを動かぬ証拠として、ネイサンのTRをなぜ5にしない。プルシェンコは一回のインタビューでそうなる憂き目をみたではありませんか。あのステップ前のクロスだけでも、プラス5つけるのは無理あります。ジャンプの質からいくと、リーザはすばらしい質でとんでるのにあまりプラスがつかず、空中姿勢とふみきりは抜群なものの、あとは?のネイサンが4とか5とるなんていったいどういうことでしょう。ついでにいうとクロスの質はリーザのほうがよくみえるけど。これは私の好みだけかもしれませんが。ネイサンのスケートはロシア式といっていいものなので、くらべたくなるんですよ。

 

カナダ方式とロシア方式はもう好みじゃないですか。私は昔からカナダ方式が好きですが、ロシア方式はすてがたいものがありませんか?雄大でディープエッジのカナダに対して、ちがった意味でエッジワークがすばらしく図形をきっちり描くシャープなロシア。私見ではロシアだあ、という滑りを今一番しているのはシニカツかな。現コーチのズーリンはナタリア・デュボワの弟子で、ロシア式滑りと言えばデュボワといわれるほど定評が高かったそうです。脈々と受けつがった技術があるのじゃないでしょうか。カナダ方式がかなりはいっている羽生君と、そもそもロシア方式といっていいネイサンとくらべるのはなにかちがうと思うんです。望ましいのは、違うスタイルだけどどちらもすばらしいというやつ。現状はとてもとても。だからネイサンのをくらべるなら同じロシア式がいいのじゃないかと。

 

だから常にくらべてしまうのは、ロシア方式、ミーシン方式の権化といっていいプルシェンコです。それもバンクーバーのときの。同じようなTRのあまりないスケートやっていて、ジャンプはともかく、スケーティングはだんぜん上にみえるプルシェンコがTR5点台でネイサンが9点台って...ジャッジの目がおかしいかなにかの陰謀かと思ってしまう。ジャンプも故障明けのバンクーバーはよくないですが、平均としては、さすが質を追求するジャンプオタクの自慢の弟子、というジャンプしてましたわよ。ネイサンは基礎点はほぼ常につき、プラスもつくジャンプですけど、基礎点+GOE1~3じゃないですかね。なにせ低くて幅がない小さいジャンプ。もう少し高くとんでいた時期はあるから高さは少なくとももう少しだせるはずです。幅は形式的に無理ですね。ロシア式で+4以上とるなら、すばらしい高さがほしい。そこまででるのかな。高さもださないのは、あのように徹底してリスク回避してるからでしょう。戦略的にはわからないでもない。問題はジャッジ。高さと幅がないと3以上つけちゃだめというのなどガン無視です。さらにはインおりの着氷ミスしても4やら5やら。それでいつも怒っているようなものですが。

なんだかまた話はそれました。怒りが大きすぎるせいか、いつもこの話してますね。すみません。話を女子のスケートのピークにもどします。

 

リーザはこのふたこぶラクダのようなピークをどちらも経験しているスケーターです。おそらくメドベもそうなります。カナダにうつってちがう方式に挑戦しているのでいまいち安定度を欠いていますが、これ、年齢的なピークもあるのか、という気がしないでもありません。となると今年か来年あたり、これぞwoman skatingというのをみせてくれるのではないかと。もうすでにロステレでみせてくれたようなものですが安定していませんでした。北京にリーザかメドベがいってほしいのはこの二度目のピークをむかえた選手のスケートがみたい、というのがあります。カミラ・ワレリアはおそらくいくはずです。しかもメダル候補として。群をぬいた身体能力と音楽性にくわえて、第一のピークをむかえる年ですから。ロシア女子のオリンピック代表、あと二枚の行方に注目したいです。

他にも、カロリーナが安定したのは23以降だということを思い出してくださいませ。10代でいいときもありましたし、あのスピードは徐々にうしなわれましたが、その分、よりつややかな演技をするようになりました。30こえて自己ベストなんてだしたのは忘れられません。2018WCのSPでは1位だったはず。あれ、泣けませんでした?FSでは固くなってしまいましたね。残念。

ケガにないて10代をすごしたケイトリン・オズモンドも20代でWCチャンピオンです。引退してしまいましたけど、あのパワフルかつ女性らしいスケーティングの魅力。シングル女子ではなかなかみられないカナダの滑りで。ああいう滑りをしてしかもある程度ジャンプが安定していたカナダ男子はWCで勝ってます。ケイトリンがオリンピックやWCでメダルとったのはフックでもなんでもありますまい。


日本なら真央ちゃんをあげましょう。彼女もコーチを変更したので単純に比較しがたいのですが、あの持ち前のふわりとした優しい女の子らしいすべりが佐藤門下となってみがかれて、とくに20代、さらにしぼるならオリンピックイヤーはみあきることのないスケーティングじゃなかったですか?ソチの伝説のフリーも、当時、世界記録を達成したWCのSPはその代表格。美姫ちゃんはこのふたこぶラクダのピーク以外にも独自のバイオリズムがあったような気がするので、この図式にはちょっとあてはめられないのですけど。

あと知子ちゃん。前はエッジはつかえていたけど、エンジンが小さすぎるかんじで、小さなスケートにみえました。リンクを使い切ってないというか。それがちょっとしたフラストレーションに。うまいのだけど、出力が小さすぎるよ、みたいな。だけどオリンピックのFS、どうってことないようなクロスでリンクの外周をしていただけで、きれいだなと単純にみている自分がいました。正確にはあのときの知子ちゃんは19でしたが。そこから、ジャンプはともかくとして、スケーティングを生かした表現は楽しみでしかありません。彼女の場合は年齢よりも食事をかえたのが大きいのかもしれませんが、基礎を築いた上に、着々と技術が向上しないとああならないのでは。

2001年1月2日生まれの新葉ちゃんは来年20歳ですね。彼女も体型変化とともにひどいケガをして、浮き沈みの激しいスケーターでした。昨年の全日本あたりから安定の兆しがありませんか?そう思いたいだけかもしれませんが(笑)でも、このままいけば、10代でかなわなかったオリンピック出場が今度こそかなう状態になっているのでは。彼女の場合はスケーティングはもともとすごかったので、体調管理だと思います。これがやっと自分にあう方法を見つけたのか、というかんじのインタビューがありました。注目したいです。練習のときなみの3Aがでたら絶賛の声があがりそうじゃないですか。

そうそう、もちろん鈴木明子ちゃん。拒食症にないた選手が20代でオリンピックに二度もいきました。最高のピークはソチのオリンピックイヤーの全日本でしょうか。あれをソチでやってたら?なんていうのは楽しい妄想になってます。メダルとれてると思いませんか?

ジャンプはどうしても第一のピークほどにはなりますまい。でもスケーティングを正しく評価してほしいな、なんて思います。まだ10代の新葉ちゃんもまざってますが、上にあげた人たちは絶対に20代のほうがいい滑りしてますから。青木佑奈ちゃん、川畑和愛ちゃん、北京代表はむずかしいとおもうんです。でもミラノなら?というのも楽しい妄想です。ケガに泣き続けている佑奈ちゃんなんて、第二の明子ちゃん型をめざしてほしい。それでいくなら白岩優奈ちゃんもそうかも。いやいや川畑さんのあのダイナミズムと優雅さはケイトリンと共通点あるかもしれません。どちらも、ちょっとコントロールしきれないという問題あるし...二人ともすでにほぼ完成している基礎がある選手です。基礎が後押しするんじゃないかな。できればそれまでスケートを続けてますよう。

なにがいいたいのだ、こいつ、といわれそうなので結論かくと、

今の状態だと、第一の短時間ピークが終わった段階で引退せよ、という議論になってしまうのです。でも、第二のピークってかならずきます。現状、その前にやめてしまう状況になっています。もったいなさすぎます。

 

第一のピークはジュニアで、第二のピークはシニアで、という状況が一番のぞましい。もっとも大人の体にふさわしい技術は子供の体ではできませんので、第二のピークをめざしてつくるのであれば、第一はわからないということも大いにありえます。でもとにかく第二のピークが迎えられる状況をつくってほしいです。2歳年齢があがれば、可能性は広がるのではないでしょうか。そうすると、平均的な選手生命は劇的に伸びます。そしてファンも面白いものがみられるはずです。