調子にのってかいて、前と別記事になってしまいました。前回の記事の続きみたいなものです。
3Lz 3F CCoSp4 2A+3T+2T 2A FCSp3 2Lz 3S Stsq3 3Lo FCCoSp4 ChSq1
昨年の持ち越しプロです。衣装は新たになりました。この大会はジャンプミスが響きました。SPも3Fのコンビができなくて、点を落としたのですが、FSでもコンビネーションがまずひびきました。3本跳べるのですが、決まったのは1本のみです。あと単独の3Sにもミスがでました。全体的にジャンプが安定していない状態でしょう。3月のジュニア世界選手権では3Lz+3T+2T、3Lo+2T、3Lz+3Tを跳んでいました。
あまりマスコミに目に付けられていませんが、真瑚ちゃんのジャンプ、実はなかなか高い評価を得てるのです。まず目につくのは、これまで得たGOEで一番高いのが、
単独 3LZ 1.60
コンビネーション 3Lz+3T+2T、3Lz+3T、3F+3T 1.30
これがどういうものなのか、他の日本人女子とくらべてもらうとわかるかと。以下、昨シーズンのGOEの最高得点です。コンビネーションと単独で一番高いGOEを取っているジャンプを上げます。ただし、チャレンジャー・シリーズ、GPS、WCのみでB級試合は含みません。一方、全日本はいれます。ジャッジの質がいろいろ取り沙汰されていますが、B級試合よりA級のほうが相対的に高いだろうという希望的観測をもって。B級はGOEをはじめとする評価が試合によってけっこうばらついていまして、いれないほうがいいと判断しました。全日本は、全米、ロシア、カナダあたりとちがい、たいへんまじめにつけている印象があります。単独とコンビを1本ずつ足したのを()でつけます。真瑚ちゃんは2.90です。データはSkatingScores http://skatingscores.com/からとりました。
紀平ちゃん 3A+3T 1.86 3A 1,71 (3,57)
花織ちゃん 3F+3T 1.40 3Lo 1.87 (3.27)
新葉ちゃん 3Lz+3T 1.30 3S 1.40 (2.70)
舞依ちゃん 3Lz+3T 1.26 3Lo 1.30 (2.56)
知子ちゃん 2A+3T 1.40 3S/3Lo 1.10 (2.50)
優奈ちゃん 3Lz+3T 1.10 3Lo 1.30 (2.41)
真凜ちゃん 3F+3T/2A+3T 1.30 3Lz 0.90 (2.20)
理華ちゃん 3F+3T 1.10 3S 1.05 (2.15)
単純に考えたら、3番目です。日本女子としては、という断りをつけるべきかもしれませんが、ジャンプのGOEは比較的取れるタイプでしょう。
しかし、この比較、自分でもいまいちよくないような気がしてきました。得意なジャンプのGOEくらべてるだけですもんね。SkatingComの違うデータをくらべてみましょう。以下、ISUイベントにおけるジャンプのMean Raw GOE Markです。これは最高点と最低点を含めたISU全試合のジャンプ平均値です。
真瑚ちゃん 1.59
舞依ちゃん 1.04
新葉ちゃん 0.96
花織ちゃん 0.90
真凜ちゃん 0.60
知子ちゃん 0.41
紀平ちゃん 0.38
優奈ちゃん 0.14
理華ちゃん -0.31
なんと真瑚ちゃんトップです。いくら、ジュニアがシニアよりも要素が一つ少なく、参加しているISU試合数も少ないと思われるとはいえ。あと、紀平ちゃんみたいに高難度ジャンプに挑むタイプは、失敗がどうしても増えますので、GOEが低くなるということを示していると言えるかもしれません。
さらに面白データがあって、2017-18シーズンの平均GOEのランキングがっていうのがhttp://skatingscores.com/ladies/に掲載されています。
1位 トゥルソワ 1.20
2位 メドベ 1.17
3位 コストルナヤ 1.15
4位 ザギトワ 1.02
5位 ケイトリン 0.96
6位 真瑚ちゃん 0.95
7位 カロリーナ 0.83
8位 舞依ちゃん 0.81
9位 新葉ちゃん 0.77
10位 知子ちゃん 0.73
びっくりのデータじゃないですか?なんとジュニアのトゥルソワが1位、コストルナヤが3位です。それもメドベをのぞいてこの2人、ぶっちぎりに近い...ジュニア女子の年齢ひきあげ案がでるはずです。
メドベや知子ちゃんなど、ケガがあった選手は、ケガの影響でジャンプミスなどがあり、損していますし、ジャンプに波のある選手も損です。それにしても、真瑚ちゃん、なんとケイトリンと僅差の6位。ジュニアのほうが体が軽くて、ジャンプを跳びやすいっていうのがあるんでしょう。トゥルソワとかコストルナヤ、そして真瑚ちゃんがシニアにあがって2年以上、今の数字を保てるかどうかは大いに疑問ではあります。
でも、それにしても、データをみるかぎり、真瑚ちゃんってポテンシャル高くないですか?前季と今季はちがうはずですから、あくまで参考データですけど。
シニアレベルの女子では、GOEはSP7項目中ジャンプは3項目、FSの12項目中ジャンプは7項目あります。ジュニアだとFSは11項目中7項目。割合が半分以上になり、ジャンプの評価がGOEアップにつながると考えてまずまずいいでしょう。
山田先生が、「高くて好き」というだけあって、真瑚ちゃんは高さがあるジャンプをとびます。記憶がまちがいなければ、ロシアのサイトで昨シーズンジュニアで一番高くとんだ選手に名前をあげられていました。あと、3Lzと3Fの踏切が明快なタイプで、3Lzのほうが得意とはいえ、3Fも1,10のGPEついてます。高さがあって、ジャンプのあとの流れも悪くありません。
今練習中という4Sをとばなくても、ひょっとしたらがあるかもしれません。というのがSPにかなりの難プロを美穂子先生が振り付けていているのです。おかげでSPで出遅れたようなものなんですが、案外ものにできるんじゃないか?という気がするんです。
いかにも美穂子先生が好きそうな編曲でしょ?あの先生、ちょっと変わったアレンジが好きで、オペラは軽いボーカルのもの好きですから。佳菜子ちゃんのカルメンのときも、なにもこんな編曲のにしなくても、と思ったものでした。軽いボーカルと結びつかない昌磨君でも、シニアデビューのはポール・ポッツという、この曲にわざわざこの人を選ぶのか?というテノール。美穂子先生もあまりよくなかったか、と思ったのではないかと。翌年はうるさい、とまでいわれるミルバのボーカル、昨シーズンはカレーラスと重厚路線にしていました。
それから美穂子先生のもう一つの特徴は、音の使い方がうまいこと。たいへん印象的な使い方をします。ぱっと思い出すのが佳菜子ちゃんのSP Think of Me です。3:13秒ぐらいからみてください。ソプラノの声がコロコロといいはじめてから盛り上がるラスト部分の音と動きの連動がもうなんとも。あとは、昌磨君のピアソロプロです。あの音と共に跳ぶ3Aときたら。去年のオリンピックプロより、このプロのほうがよかったですよねえ。
真瑚ちゃんの場合はどうしているかというと、ボーカルのすべての音に反応しようとしているんじゃないかという振りなんです(^^;) で、ボーカルのない箇所も当然のように動きます。イメージは氷の上で歌を再現するってことじゃなかろうかと。ううう、なんてことを。漫然とすべるところってほとんどなくて、これでもかというほど要素をつめこんでます。あと、ふつうならあと数音使うだろうというレイバックイナバウアーも、さっとすませて次の要素をつめこむという...こんなやり方あるんだ。いいんですか、こんなむずかしいものをやって。音はめのレベルをはるかにこえてます。ここまでくると実験レベルかもしれません...
もともと音楽表現はできる人です。スケーティングがまずすてきです。膝の使い方がうまいといったらいいのでしょうか。氷の上をすらすらすらっと柔らかく進みます。それも音楽にのって。高いジャンプも、柔らかさのあるスピンも気に入っているとはいえ、一番好きなのは、音とスケートが簡単に一体化してしまうところ。音楽がすーっとはいってくるかんじがします。音がスケート靴を動かすんだろうかなんて思うときもあります。自分のプロはもちろん、昨年末に他の人のプロをすべったときもそうでした。あれをみて、そのプロの評価を3段階ぐらい自動的にあげてしまったんでしたっけ。
完成とはほど遠いとはいえ、この音楽とスケート/演技の一体化みたいなのがすでにあるんじゃないかしら。評価がされるレベルになるのはいつかはまったくわかりませんけど。山田/樋口組はおそらく指導者の方針なのか、音楽をよくきく選手が多いですが、おそらく、音楽的には佳菜子ちゃん、昌磨君とならぶきわめつけのレベルの一人でしょう。満知子先生の秘蔵っ子なんて報道もありました。昌磨君が最後だと思ってたのだけど、少なくとももう一人いたんですね。満知子先生、こうなったら、まだまだ引退しちゃいけません。1943年生まれの75歳とのことですが、先日引退したフランク・キャロル・コーチが1939年生まれですから、あと4年はがんばられなければ。いやいや、都築先生もキャロル・コーチと同じ1938年生まれでたしかまだ青木祐奈ちゃんのコーチされてます。佐藤先生ともどもまだまだやってくださいな。
真瑚ちゃんに話をもどすと、GPSで目立った演技をするかどうかはわかりません。昨シーズンの全日本ではSPでミスがあり、苦戦しましたし。でも、去年の世界選手権ジュニア銅メダルというのは、紀平ちゃんが不調だったという事情はあるとはいえ、まぐれとはいえますまい。シニアではコレオが増え、時間が長くなるというのが影響してくるかもしれません。だから絶対にくる、といいきることはできませんが、上位をねらうポテンシャルは持っていると考えていいでしょう。
GPSはカナダ大会とロシア大会に出場します。新葉ちゃん、松田悠良ちゃんとまったく同じです。悠良ちゃんは同門だし、心強いかもしれませんね。