立夏直前の土用期間ではあるが、仕事の合間に六本木宿泊滞在した。まずは早朝出勤も兼ねて、朝6:45~7:00にエントランスに到着する。流石にこの時間はフロント廻りも若手スタッフが一人常駐するに留まる。事前に日比谷線乗車のタイミングで電話してGCCに滞在計画を聯絡した通りの行動パターンであることも併せて伝えておいた。

まずはフロントに到着するとチェックイン登記のためのドキュメントが準備されていた。そしてデューティーマネージャーの坂井さんから御挨拶を受ける。ベルスタッフ同道の下、10Fクラブラウンジに上がる。

ちょうど朝食時間開始のタイミングでグランドクラブマネージャーの西原さんより御挨拶を受けて、自分がいつも使用する奥の間(ミーティングルーム開放)に通された。早速朝食準備のため、ビュッフェ台に向かう。ここ最近はどのホテルもライブキッチン或いはエッグステーションの設置が通常設備となってはいるが、六本木は恐らく消防法のこともあるのであろうか、未だそうした動きは見られずに卵料理はバックオフィス(厨房配膳部分)から適宜ピストン輸送状態で補充されていく。カテゴリー8となったTYOGHとしては、この点、弱点部分となってしまったのは否めないであろう。後刻になるが、この点は西原さんにお伝えしておいた次第である。朝食は申し分ない。まさしく海外渡航した時のことを思い出しつつ、HKGGH、SHAPH、PEKGH、TPEGHの朝と同様に若手スタッフのサポートも受けながら、朝食時間も比較的落ち着いて過ごすことができた。伺う限りは宿泊の稼働率も落ち着いた塩梅で、なおかつゲストの動線がスクランブルになることもない。このあたりは客層の違いもあるのであろう。

そして西原さんより御提案を受けた。まずは待機部屋をあてがわれてはいるが、9:00前後を見込んでプレミアムレベル、ディプロマットスイートにアップグレードとの旨、即時快諾する。此までの滞在では高稼働のこともあってか、マネージャークラスのアサインをもってしても、待機部屋を渡り歩くといった状態だっただけに、二階級特進以上のサポートを受けることとなった次第である。これは予想以上の展開であった。これぞまさしく、海外渡航気分はいやが上にも盛り上がってくる。そうした想いを内に秘めつつ、まずは待機部屋(クラブアクセス・ゲストルーム・ツインタイプ)へと向かう。ルームキーをかざして入ると、それでもなお、広めの部屋だなという印象だ。東京タワービューではあるが、まずは荷物を広げずにバスルームを使うに留める。西原さんには再度確認したが、部屋の設えは随意使用して構わないとのこと、ウォークインクローゼットは使わず、窓側ソファー廻りに荷物や着衣を置くに留めつつ、早速風呂に入る。シャワー、バスタブの水圧も問題なしである。2003年開業の建築ではあるが、開業25周年の暁には、水廻りもメンテナンスが必要であろう。高層階はどこのホテルでも感じることであるが、水圧の維持管理については実際にゲスト側からスタッフに伝えていかないと行けないといつも思っている。バスタブも大きめのもので身体を浴槽に沈めた瞬間、まさに海外渡航滞在の時と同様の安堵感が脳裡を埋め尽くしていく。まさに至福の時間である。待機部屋でさえもことほどさような感覚である。引越前のはやる心を抑えつつ、テレビを観ながらその時間をじっくりと待っていた。念の為、グランドクラブに引越可能かどうか電話で伺うと、ちょうど準備が整ったとのことである。ならば、ベルスタッフ同道の下に引越も併せてお願いする。ルームキーもここでチェンジすることとなる。やおらベルスタッフが入室してくる。このタイミングでルームキーを交換する。そして1613号室から1820号室へと引越作業と相成った。エレベーター廻りも落ち着いており、他のゲストと交わることもなく、そのまま18Fへと上がる。そして廊下を歩いてしまったが、不覚を取った。1820はエレベーター直近のコーナールームの位置ではないか!自分自身、1813かなと勘違いしてしまった。ベルスタッフからも失笑されてしまう(笑)。思い直して1820へと戻る格好となった。

解錠して入るや、これは非常に使い勝手のよい広さも余裕と奥行きのある設えである。いっぺんで気に入ってしまった。台北か、香港か、いつも使用するスイートの感覚が即座に蘇ってくるが、ここは東京である。こうした重層的な想念が展開されていこうとは!ベルスタッフと少し談笑したが、○○○GHとの比較ではこうですね、と話すと、スタッフは二人とも吃驚していた。まずはルームの設え理解と共に、心の初期設定が必要である。ウォークインクローゼットも特大である。ここだけでも居住できるのではないかといった按配だ。セーフティーボックスに貴重品を入れて、鞄は今回はリビングに置いたままとし、着替えやスパ利用の水着などをクローゼットに置く。エントランスからリビング部分、ベッドルーム部分、そしてバスルーム部分を何度か歩いて部屋感覚を入念に掴んでいく。このときには此まで現地滞在した時のスイートとの比較を頭の中で反芻する。そうすると、初めてのルーム利用でもだんだんと馴染みの空間に変化していくのだ。そしてまたバスルームを使い始める。鷹匠湯としてどのホテルでも自分自身としては風呂の使い勝手についてはこだわりを持っている。この点、日本人だなとしみじみ思う。そしてリビングルーム設置のライティングデスクの使い勝手をいろいろ試しつつ記憶に留めていく。ソファー部分にも全部座ってみて落ち着き加減をチェックしていく。テレビもその國のデフォルト放送局をいつも流しておくが、となればNHK総合第1チャンネルとなろう。こればかりはここはやはり東京だなと現実を受け入れる。あとは各部屋の電気スイッチの類いをチェックしていくのと同時に、全部電気は付けてみてダウンライトの故障がないかどうかも併せて確認していく。こうしたあたりもゲスト側の利用状況から客室サイドのマネージャーには報告をいつもしている。

リビング共通の設え部分には、ボトルウォーター、ネスプレッソマシーン、氷、茶器、電気ポットを並べられているが、早速御湯を作ると同時に、ゲストサービス経由で氷を持ってきて貰う。ゲストサービスの部署は、ゲストからのリクエストを一括して預かるところであるが、ルームサービス同様に、ゲストのリクエストの順番通りに対応していくのが本来の筋なので、ゲストからのリクエストが集中すると、時と場合によってはかなりの時間がかかることもある。そのあたりも見越してゲストサービスの連絡を早めにしておいた。やがて氷が運ばれてくると、安堵した次第であった。

窓の外の景観は、東京タワー、三田方面、麻布の中国大使館、そして、清掃局の煙突と並んで富士山も望める絶好のロケーションである。麻布十番方面には高層マンションが建ってしまい、どうしても圧迫感はあるのであるが、今後は眼下の六本木地区についてはこれ以上再開発はさせないよう念じるばかりだ。

暫時部屋で心の初期設定を続けていく。客人用のトイレ部分、自分用のトイレ部分、腰掛けてみると、客人用のトイレの方が幾分大きめの便器が使われていることがわかった。こうしたあたりも非常に大事なことである。エントランスにあるオブジェも陶磁器がライトアップされているものが設置されているが、ここの電気は制御できないようで、自然採光による陶磁器の色は結局わからずじまいであった。

午後茶時間を迎える。10Fグランドクラブに顔を出す。喫茶アイテムを一通り試飲試食する。また夕刻直前には三田任務のため、館内を離れる。往路は銀行経由都営大江戸線、復路は三田東門からタクシー移動してみた。仕事帰りのタクシーは洵に上機嫌となること請け合いだ。所要7分で六本木に帰宅できたのは何よりも僥倖を言わねばなるまい。

いつもは利用することない車寄せ部分にタクシーが到着すると、ベルスタッフのお出迎えを受ける。いつもご苦労樣、と労をねぎらいつつ、エントランスからエレベーター廻りに向かうが、いつも利用する料飲施設も気になっている。あとで声かけしようと思いつつ、部屋に戻った。そして鷹匠湯に浸かってから、今度は夕刻のカクテルタイムを気に掛けつつ、10Fクラブラウンジに顔を出す。西原さん、そして若手スタッフの皆さんが迎えてくれた。いつもの奥の間は取っておいてくれたようで、午後には本来のミーティングルームとしての利用があったようである。奥の間の会場作成(デフォルト復元作業)の途中であったが、そのまま入室していつものテーブル席に腰を落ち着けた。西原さんとはいろいろ話の続きをしつつも、飲食アイテムを各々取りに自分からも出向く。食材アイテムは随意平皿に自分で並べていくが、ドリンクについては、シャンパン、クラフトビール、赤ワインをチョイスする。ここのタイミングでもマネージャー御自ら料飲スタッフ同様のプロ仕様によるサーブを受ける。気分はますます現地渡航のラウンジに居るかのようであった。併せて、「解樹」も銀製ティーポットに作っていただく。此ばかりは心臓のこともあるのでアルコール摂取時には必須となる。

ちょうど奥の間に腰掛けた瞬間にハウスキーピングマネージャーの藤田さんも御挨拶にお見えであった。まさに久闊を叙する格好となった。16F、18Fの水圧や空調設備、ダウンライトの稼働状況、其他、客室内を利用して得た印象などをお伝えした。連休期間ではあるが、客室稼働は落ち着いているという。インバウンドもアングロサクソンゲスト中心に利用されており、殊に家族利用も目立っているのがこの時期の特徴である。普段の平日はやはりビジネスユースが卓越しているが、客層の広範な取込もいつも以上に重要であるとの共通認識を得た。また、カテゴリー8に昇級した殊に伴い、無料宿泊アワードについてもLGLO会員向けには8も使えるよう提言した次第である。

一献傾ける時空は滞在気分を盛り上げてくれると同時に、此までのホテル利用の来し方行く末に想いを馳せることにも繋がっていく。さらに、今夕においては西原さんとこれまでの六本木スタッフによくしていただいた時の話題も共有した。自分自身も仕事柄、ホテル業界に学生を送ってきたが、若手スタッフの離職についてはいつも心を痛める次第である。就職して3年目、4年目あたりがどうも何か境目となっているかなと思っている。マネージャークラスからの叱咤激励といって悪ければ、ソフトな指導といったあたりもOJTではさらなる改善が必要となっているかと愚考するのだが、実際はゲスト対応同様、最終的には「人対人」であるだけに、その当たり所といったあたりにも思いを巡らせる必要があろう。

カクテルタイムのラウンジはいつもながらゲストが殺到することも多く、またアルコールも入ることもあってか、担当スタッフの気苦労も並大抵のことではない。ヴェテランスタッフはこの点、ゲストに対する応用動作は手慣れたものであるが、若手スタッフは飲み手の心理を理解しているとは言い難い側面もちらほら散見することがある。このあたりは、一献傾ける習慣を持っているか否かといった人間的な側面にも想いを馳せていかねばならないであろう。

かくして、カクテルタイムは洵に以て優雅な時空となった。流石に奥の間にまでゲストが入ってくることはなく、ほぼ貸切状態で過ごせてしまったのはまたこれもスタッフの皆様に頭の下がる思いである。

部屋に戻る際には乾き物とバナナとを戴いてエレベーターを上がった。部屋では解樹摂取に留めつつ、やはりアイスクリームが食べたくなったので、ルームサービスに内線を入れると、ちょうど多忙な時間となっているようであったので、自ら隣のウエストウォークにあるローソンまで出向く。このときはフロアが同じ高さではないことに注意したい。アイスを三種類見繕ってまた部屋に戻ってきて味わっていく。リビングのソファーエリアに座ってテレビを観ながら過ごしていると、どことなく自宅で寛いでいるかのようなある種の「錯覚」に陥入してしまった。初めての部屋利用ながら、ここまで馴染むことができたとは!やがて、部屋を真っ暗にして外之夜景をメインに堪能しつつ、iPadで音楽を愉しむこととした。こうした使い方ができるのもまさにスイートルームの醍醐味である。夜景から飛び込んでくる仄かな灯りに時空はまさに過去へと誘われる。これまでのホテル滞在で得た経験、そして昨今の科研費渡航で経験したHKGGH、TPEGHでの夜景堪能経験ともオーバーラップしていく瞬間はこの上もない境地である。そしてここは六本木再開発の象徴とも言えるエリアであることにも想いを馳せていく。戦前は日本陸軍の第一聯隊(赤坂區)、第三聯隊(麻布區)、そして陸軍大學もあってまさに軍隊華やかなりし頃に六本木は賑わったことであろう。そして麹町區には近歩一・二が駐屯していた。今の武道館があるあたりである。

夜の世界は時間軸にこだわらず縦横無尽に想いを馳せることができる。いつしか身体をベッドに横たえて睡眠を取ることとした。自分がいるのは台北か、それとも香港か、はたまた上海か、北京か・・・・・。

早朝にはいつもの時間に目覚めてしまったが、まだ早いのでまたそのままうつらうつらしていると二度寝してしまったようだ。惰眠を貪る至福もまた乙なもの、と自分にいいわけしつつ、6:45には床を離れて、外からの太陽光線を浴びることにする。翌朝は見事な快晴、東京タワーもくっきりと見える。昨日は雨に煙るタワーではあったが・・・・。そして富士山も少し霞がかってはいるが、しっかりと眼前に聳え立っている。非常にブリリアントな朝を迎えることができた。また朝一番の鷹匠湯に浸かる。こればかりは流石東京である。水質についてはやはり日本に軍配が上がるのも宜なるかなであろう。NHKニュースをテレビでチェックするあたりはやはりこれも東京滞在を再確認することとなったが、8時過ぎには朝食のために10Fクラブラウンジに顔を出す。

ちょうど10Fにエレベーターから降り立った瞬間に別のエレベーターからはアシスタントフロントオフィスマネージャーの髙森さんと偶然にも再会を果たした。1Fフロント廻りでお話をして以来、もうだいぶ御無沙汰ではあったが、そこはそれ、非常にフランクな感じでそのままグランドクラブラウンジに一緒に入った。朝の打ち合わせか何かであったろう。

また、西原さんとも挨拶を交わしつつ、いつもの奥の間へと向かう。その間、グランドクラブスタッフもラウンジ運営に忙しそうであったが、また奥の間のいつもの席に陣取って朝食を堪能する。昨日もそうであったが、朝食ながらシャンパンの用意もある。流石に朝なので、ミモザにして貰う。こうしたあたりは、嘗てのJLやCX、または往時のNWのFを思い出す。今となっては離陸前のシャンパン供応は廃止されてしまったが、90年代からしばらくはゲストサービスでも一般的であった。またこうしたところで往時のキャビンクルーとの一コマを思い出している。仕事から解放された日となったので、朝食もいつも以上にフルサービスでお願いしてみた。週末の朝ということもあり、食材の補充もシェフが頻繁に往来を重ねている。シェフにもその都度挨拶を重ねていく。昨今はどのラウンジにも洋食・和食の通常アイテムの他に、朝カレーが準備されている。これもまた愉しみの一つである。味わいはどちらかというと、アングロサクソンの好みとする濃いめでスパイシーな味わいだ。これもまた、以前の空港地上ラウンジや小腹が空いた時のFクラス供応のためのカレーの味わいを思い出す。Fキャビンでは90年代当時ほとんど常客としての軽食アイテムとして麺類やカレーの供応が一般的であった。通常ミール以外にも飲食は充実していたが、昨今は経営合理化で廃止されてしまい残念ではある。

部屋に戻って念の為メールチェックをする。仕事場からのものはなかったので安堵する。少しベッドで横になりつつ、身体を休める。やがてNagomiに行ってみようと思い立ち、水着・バスローブ着用にて階下に下りていく。ゲスト利用はほとんどなく、ロッカールームもプールやジャグジーも理想的な感覚で利用出来た。ここだけは撮影禁止エリアなので画像記録はしていない。非常に伸びやかな時間を過ごすことができた。ロッカールームの奥の間にある浴室は利用したが、サウナは心臓のこともあって見るだけに留めておいた。

御昼過ぎに部屋に戻って再度メールチェックをする。仕事場からのメールは着信していない。ほっとまた胸を撫で下ろす。また暫時部屋で寛ぐ時間とする。ネスプレッソマシーンから珈琲を作るが、これは部屋のアロマ用としてそのままテーブルに置いておく。

鷹匠湯で身体を休めた後に、この日は少し早く午後茶時間を体験したくなり、10Fクラブラウンジに向かう。やはり殊の外、ゲストはそんなに見えていることもなく、飲食アイテムを見繕ってみる。ハンドメイドアイスクリームもあったので、チャレンジしてみたが、また不覚を取った。コーンが欠けてしまい、ヴァニラアイスの中に砕け散ってしまった。仕方なく、若手スタッフにやって貰うことにした。なんとかその場を切り抜けていつもの奥の間で戴くこととしたが、この時間は太陽光線の角度がフルスペックで当たる時間であった。他のエリアは遮光されていたが、奥の間はそのまま太陽を浴びることにして、スタッフと午後茶時間運用の様子を窺うに留めた。

やがて荷物整理もしなくてはならないことに気づき、一旦部屋に戻る。そろそろ出立の準備にも気を向けなければと思い立ち、部屋全体についても再度確認しつつ、荷物のパッキングをしていく。そして会計(チェックアウト)をする時間となり、また10Fクラブラウンジに出向く。このときは若手スタッフ2名常駐であった。幹部級スタッフは部署毎のミーティングかなと推測する。

そして部屋に戻り、荷物を纏めつつ退房する。これまでよくしていただいたことに感謝しつつ、また1Fの料飲マネージャーの伊藤さんにも「お詫び」を入れつつ、後ろ髪引かれる思いで館内を後にしたのであった。ウエストウォークを出てつかの間の戸外の空気を浴びたが、夏日そのものの空気感と同時にGWの週末だなあといった雰囲気に想いを残しつつ、地下鉄駅へと吸い込まれていく。またこの次も機会あらば、東京「渡航滞在」してみたいと思っている。

TYOHR、TYOGHとくれば、次はTYOPHである。以前六本木にて御活躍であったF氏もTYOPHへ転籍されたという。併せて感謝の意味合いも込めて、西新宿三丁目にもいづれの御時にか、宿泊滞在してみたいとも思っている。ハイアットも昭和から平成、そして令和へと時の移ろいと共に変化してはいるが、古き良き雰囲気については「不易流行」両面の価値判断は続けていってほしいと切に願う..やはりいつも思うのは、ホテルにおけるホスピタリティーは最終的には「人対人」である、という理之当然にして無為自然の境地であろう。

早朝出勤も気温との戦いに移行しつつある。わけても強風が吹いているときには寒さは一層感じやすくなる。午前中の仕事を終えた週末、先週賞味した大閘蟹系列のなかでも、麺料理を鍋焼きスタイルで出して戴いたアイディアには脱帽した。どうしてもその味わいが脳裡から離れられず、再び試してみたくなった次第である。

 

テーブルの上の食べ物

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。皿の上の食事と飲み物

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まずは席に落ち着く。今日は曇り空の中を結構歩いた。仕事場から一度中野に出向き、修理された眼鏡を引き取った後は、中野通りを青梅街道の鍋横交差点まで只管歩く。そしてその後は荻窪線で西新宿駅まで乗車、また定宿まで歩くという有様であった。こういうときには冷たい御茶の方が喉を潤すには心地よい。

 

松本料理長からまずは小菜が供される。本日は中華風カシューナッツに「松本醤(まつもとジャン)」である。この海老の風味がまさに香港滞在中に味わった記憶を刺戟してくれるのだ。定宿の料飲施設で紅瓜子斑を俟っていたあの瞬間に連なる香りが鼻腔を活性化させてくれる。これぞ、香港的な、あまりに香港的なプルースト効果ではなかろうか。

そしてお待ちかねの蟹黄麺、しかも鍋焼きスタイルでの真打ち登場と相成った。濃厚な蟹黄の他に蟹油もさらに添えられてある。そして火傷しないよう注意しつつ舌尖上のカーニバルへといざなわれる。舌先での味わいのみならず、喉元を過ぎる時のあの「回甘」にも似た戻り香というものもポイントとしては外せない。鍋焼きスタイルにすればいつもよりも身体が火照ってくる時間差がほとんどないことに気づく。やはり火加減というか、高温をホール席でもキープ出来るのはこの上ない口福である。麺は鍋底に沈んでいるので最初は蟹黄のみを只管賞味し続けつつ、ときどき松本醤をウエハースのように要所要所で味わう。これを無限ループのように繰り返していくと、昨今の地球温暖化で賞味時期がずれてしまったまさにこの今という時空の価値を玩味できるのだ。

やがて麺が現れてくると、蟹黄もほどよい温度に落ち着く。そこで麺を一気呵成に啜っていく。この第二段階にもまた先程とは異なる口福を体現できるのはありがたい。

 

そんな口福時間もやがてお開きへと進んでいく。周囲のテーブルには、中国語圏出身とおぼしきゲストの方が日本語で同道した客人と会話しているのが耳に入ってくる。どちらかと言えば、学者先生のような風情を漂わせている。質実剛健な出で立ちの方のようだ。昨今では商業施設ではなかなかお目にかかれないタイプのように見受けられた。

 

食事後はロビー階の様子を参考までに窺うことにしている。やがて来月になれば定宿としての宿泊滞在も俟っている。昨今は当家事情の関係でなかなか宿泊は叶わないが、宿泊部スタッフの皆様ともまたその暁にはいろいろと意見交換出来たらと念じている次第である。

11月も後半に入り、二十四氣の中氣「小雪」が10:36に回座した。仕事を終えてから大閘蟹を賞味した次第である。

まずは前菜から味わって行く。これまでの中国シェフ招聘イベントでもおなじみの食材も並ぶ。まさに今年の来し方を回顧するにふさわしいラインナップである。松本料理長特製としてさらに点興を添えている。

次に蟹黄を遇った「湯」が登場する。二週間前に味わったときはいささか薄かったが、先週になっていつもの濃厚さを感じ取ることができた。本日も濃厚な例湯を安心して味わうことができた。

大閘蟹の味わいを表現する四字句に「九圓十尖」がある。旧暦の九月は雌、十月は雄が旬を迎えるという意味であるが、昨今の地球温暖化による酷暑も相俟って、現在では11月に漸く雌が、そして12月には雄が旬を迎えるまでになった。

やはりこうなってくると、勤労感謝の日前後にまずは今年のあたりを見る程度がよいのではないかと思えてならない。果たせるかな、次にやってきた清蒸大閘蟹は中身の充実した逸品を味わうことができた。わけても蟹黄をそのまま頬張る一瞬間は錦秋の時節を感じるにふさわしい。濃厚でねっとりとした味わいを確かめるように舌尖上に転がしていく。

ここで清蒸とくれば、今度は清蒸石斑魚の出番となる。鶏油に紹興酒を加えた汁(ソース)を絡めていただく。一尾まるごとを賞味したのは2ヶ月前の香港であった。事前予約がなければ普通は切り身で出してくる。それでもなお、酒香を豐かに感じつつ、皮に含まれるゼラチンも美味しくいただけた。

さらに蟹黄を遇った拌麺と続く。普通は白の平皿で出すのが定番であるが、なんと今日は小さな土鍋仕立てときた。これは新たな試みである。山口調理長の腕も一層冴えてくる逸品である。あつあつの状態で食べる麺料理、たかが麺と侮る勿れ。この演出方法はこれからの季節にぴったりである。味わうほどに、また次回にもぜひと思わせるところが後を引く。

 全体を画像で総括する。また来月も賞味の機会をじっくりと俟つこととしよう。

いよいよ仕上げの時が来た。寧波からのシェフの王さんが考案した甜点、そして時節柄の栗を遇ったもの、また最後には口中をさっぱりとさせる葡萄の点心で〆ることとなる。