「疑う心」がイライラに火をつける


 先日、私のもとに、三十代の女性が相談に来ました。

 彼女曰く、「夫が信用できなくて、イライラしている」とのことです。

 よくよく聞いてみると、家に入れるお金が少ないのに、外で飲み歩いている、たぶん浮気もしているだろうと言うのです。


 私はそれを聞いて、「たぶん、その通りかもしれませんね」と答えました。実際には彼女の取り越し苦労かもしれません。それなのに、私は気休めをいわずに、最悪のシナリオを手渡してみたのです。

 すると彼女はうっすらと涙をためて黙りこんでしまいました。

 少し間をおいて、私は尋ねました。



「あなたはご主人と離れたいのですか」と。



 彼女は「やっぱり夫が好きなんです。ただうそをつかれるのがいやなんです」と反論しました。



 私は「夫を問い詰めず、しばらく放っておいたらどうですか」と提案しました。するとしばらくして、夫は家にいつくようになったそうです。そして夫は彼女に「最近、力が抜けてるなあ」と言ったそうです。



 お金を入れない、家にいつかないのは、夫としては失格です。しかし、夫にも家にいつかなくなる理由はあったはずです。



 ただ夫を糾弾しただけでは、ダメ夫はますます逃げていくでしょう。

 それなら疑うことをやめて、夫を放置しておきましよう。



 放置されると人は不安になります。疑いはさらなる疑いしか呼びません。ダメ夫を受け入れろとはいいませんが、放っておくぐらいはできませんか



 仏教では、この「放っておく」というのが、心の修行だと言います。

 目の前に起きていることに善悪の判断をしてイライラせずに、ただ見守ること。



 あたかも空を流れる雲を見つめるように。遠回りですが、きっとあなたはうまくいくことでしょう。