そのとき、釈尊は霊鷲山に居られました。
その近くの林の中でソーナという名の比丘(男の僧侶〕が人一倍熱心に修行に励んでいました。
彼は大金持ちの家に生まれ、なに不自由ない暮らしをしていたが、ある機会に釈尊の説法を聞き大いに感動し、両親の反対を押し切って釈尊の弟子になったのであります。
他の人より遅れて弟子になったソーナは負けまいと自分を鼓舞し厳しい修行に励みました。
そしていつしか精進第一のソーナと呼ばれるようになったのです。
幾年か過ぎたが悟りを得られないでいました。
それで、人の何倍もの努力をしていたけど、まだ努力が足りない、精進が足りないと自分を責めました。
また数年が過ぎたがまだ悟りを得られない。反対に悟りは自分から遠のくようにさえ思えたのです。
「いくら精進しても自分には悟りを得られないのではないか。修行は辞めて家に帰ろう。家には財産もあるし、楽に暮らせるのだから」ソーナは諦めの心境にありました。
弟子が危機に立っているのを見抜かれた釈尊は、彼のもとへ足を運び心境を尋ねました。
ソーナは自分の思うところを隠さず述べました。ソーナの話を聞き終えた釈尊は、ふと思い出して静かに尋ねました。
「ソーナよ、あなたは家にいたころ琴を弾くのが大変上手であったそうだが・・・」
つづく