ブッダは三つの誘惑に出会いました。

第一は情欲。
第二は恐怖。
第三は民衆の意見に従う・・・という誘惑です。


最初の誘惑で、情欲の神(悪魔)はブッダの前に三人の美しい娘たちを並べて見せました。
三人の名前は願望・実現・後悔=未来・現在・過去です。


しかしブッダは感覚への執着から解脱していましたから、少しも心を動かしませんでした。


次に情欲の神は、死の神に姿を変え、化け物の大群にすべての武器をブッダに向けるよう命じましたが、ブッダは自分の中に永遠という不動の一点を見出していたので、時間の影響を受けませんでした。


だから飛んできた矢は皆、彼に捧げる花に変わっていました。

最後に情欲と死の神は、社会的義務の神に姿を変えて言いました。


「おいきみ、きみは新聞を読まなかったのか。きょう何をすべきかわからないのか?」


これに対してブッダはただ右手の指先を地面に触れただけでした。
すると宇宙の母なる女神の声が、どこからともなく雷のように響き渡りました。


「私の愛する息子であるこの者は、すでに世のためにおのれを投げ打った。
 あれこれ指図を受けるような者ではない。やめるがいい。」

すると社会的義務の神が乗っていた象は、頭を下げてブッダを礼拝し、
神の一族は夢のように消えうせました。


その夜ブッダは覚りを開き、五十年この世に留まって、自我の束縛を断つ道を人々に説いたのです。