僧侶の世界には師厳道尊という言葉があります。

『師とは厳しいものであり、そして修行は尊い。』という意味です。



田崎早雲というすぐれた画家がいました。

彼は才能にめぐまれ、若い時からどんどん頭角を現して来ました。

そんな時に起こりやすいのが『慢心』すなわち『うぬぼれ』です。

当時のすぐれた画家、谷文晁から『なんだこれは、この程度なら足でも描ける』と言われ、「今にみてろ」それから3年間、ひたすら努力してきました。

師匠にもう一度、谷文晁先生に観ていただけるようにお願いに行った時に、師は一通の手紙を出しました。

『早雲という青年、見どころあり、ただし慢心の相あれば、これ戒めておく』と書かれていました。

三年後にして知った先生の深い愛。

この試練あればこそ、青年は、後に明治の画壇に早雲ありといわれるようになったのです。