昔、えらいお坊さんがいました。


そのお坊さんの所に、ある日、若いサムライが訪ねて来て、本当に地獄はあるのか質問しました。



『りっぱおサムライに見えるけど、地獄が解らないようではたよりない。あんたのような者は、刀かけのクソぶくろというのだ』


と言葉をきたなくいいました。



だまって聞いているこのサムライに、お坊さんは次々と悪口をいいます。


じっと耐えていたサムライも、ついに我慢できなくなって、持っていた刀に手をかけ『武士をバカにするにもほどがある』


と言って、切りかかりました。



お坊さんはヒョイと身をかわして、逃げ出しました。


しかしついに追い詰めました。



『このくそ坊主、動くなー』



と言って刀を切りおろそうとしたその時、


お坊さんが『そこが地獄だ』


と叫びました。



その突き刺さるような一言は周りに響きわたりました。


サムライは、頭から水をかけられたようにハッとしてわれにかえりました。



                                                             つづく