自分が自分に寄り添うということ

朝、出勤するときによくすれ違うハローワークの人、
少し前まで私が出る時間がもう少し遅かったから
その人は駐車場の誘導をしていて、
歩行者の私をいつも通してくれていた。
それで顔見知りになって、毎朝挨拶するのが楽しみになった。

今は私が出る時間が少し早くなって
その人が道路にコーンを並べて台車を押して戻ってくるとき
すれ違うようになった。

誘導前にこんな仕事もしていたんだな。

すれ違いざまに
初めのうちは挨拶だけだったけど
そのあと
「今日は暑くなりますよ」とか
「行ってらっしゃい」とか言ってくれるようになった。

「ねー、暑いですね」とか
「行ってきます」とか
たいした返事はできないけど
遠くからでもあの人だとわかると
にこにこしてしまう。

ポジティブ心理学というものの記事で読んだことがあるが

「顔見知りにあいさつすると、幸福感は高まる。」のだそうだ。
この記事を読んだとき、私はこの人のことを真っ先に思い浮かべた。

確かにそうだ。
名前も知らない人だけど
朝この人に会えたら嬉しいし、
会えなかったらちょっとがっかりする。

ハローワークの誘導の人は有期契約なのか
突然人が入れ替わったりするけど
私がここへ越してきてからもう15年くらい経つけど
いつも誰か一人はこうやって仲良く(?)なれる人がいた。

その人たちはいつも私を支えてくれていた。
その人たちは私を支えているつもりなんて全然なかったろうけど。

こないだ夫が見ていたテレビで
エリートOLが9億円貢いだっていう再現ドラマをやっていた。

昔あった本当の話みたいだ。
大手銀行に勤めていた女性銀行員が
どこで知り合ったのかは知らないけど
男の人に貢ぐために結果9億円も横領してしまったのだという。

その女の人は自分のためには全然横領したお金は使っていなかった。
全部その男の人に貢いでいた。

後からこの女の人が言っていたという言葉が
とても私の心に残った。

正確ではないと思うけど
「壁を作って閉じこもっていたから
優しくされてのめりこんでしまった」っていうような内容だった。

私がハローワークの人にのめりこんでるわけでは全然ないのだけど
これは私への警告かなと思った。

最近、不倫の話がとても多いけど
私はあんまりというか全然嫌悪感がなくて
むしろ女の人が言ってることがよくわかるとさえ思っていた。

でも、この銀行員の人の話を聞いて
よくわかった気がした。

私もずっと一人で頑張ってきたと思っていた。
ずっとずっと、自分を支えてくれていたのは自分の言葉で、
誰にも頼らずに、たった一人で生き抜いてきたと思っていた。

銀色夏生さんが、本の中にこう書いていた。

「言葉だけに惑わされてはいけない」
【出典:私だったらこう考える / 銀色夏生 著】

これを見たとき
「私はずっと言葉だけに支えられてきたのにな。
 惑わされてはいけないって言われても」と思った。

この銀行員の人の話を聞いて
やっと夏生さんの言ってることが分かった気がする。

みんなきっと寂しかったんだ。
一人で、一人だけで頑張ってきた、そういう自負もあったと思う。
でも本当は誰かに見てて欲しかったんだろうな。

私は、これから自分で自分のことを見ててあげよう。
一人の私が一人で頑張るんじゃなくて。

これも銀色夏生さんと冨田貴史さんという人の対談形式の本を読んでいて思った。
この冨田さんという人の言っていることが
また私の祈りに対する答えが返ってきているかのように
私が聞きたかったことをたくさん答えてくれている。
まだ感心するばかりで自分の行動へは全然落とせていないけど
世の中には私の知らない素敵な人というのが
まだまだたくさんいるんだなと思う。

「自分が自分に寄り添ってるっていうのは寄り添われてる自分と
 寄り添ってる自分がいるってことじゃないですか。
 分離してるんじゃないけど僕はやっぱり自分っていうのはふたりいると思うんですよ。
 すくなくとも。見守られてる自分と、見守ってる自分。
 なんかそのふたつの関係がいい感じ、みたいな。相思相愛」
【出典:本当に自分の人生を生きることを考え始めた人たちへ / 銀色夏生 著】

このところ、レミオロメンからバックナンバーへブームが移り

「気が付けば横にいて別に君のままでいいのになんて
 勝手に涙拭いたくせに
 見える全部聴こえる全て色付けたくせに」

っていうところが本当に大好きだったけど
これ、自分で自分にやってあげようと思った。

誰かに出会って、私の世界、白黒の世界に色が付いたと思ってたけど
これからは自分で。