何年か前、
会社の人で仲良くしてくれていた人がいた。
それまで心を閉じていた私の中に
無理やりこじ開けて入ってきたような人だった。
その人と毎日くだらない話をした。
私が会社でも笑うようになったのは
その人のお陰だった。
なんでその人が私に目をつけたのかわからない。
私の中に楽しそうな要素や
人懐こさ、自分と気の合いそうなところなんて
会社にいる私からは全然見いだせないだろう。
全く心を開かない私に
どうしてあんな風にこじ開けてまで入ってきたのかわからないけど
その人は見出していたのかもしれない。
何か分かり合えるものを。
そのうち私はその人と関係が悪くならないように
少しずつ我慢し始めた。
本当はされたら嫌だったことや
言われたら嫌だったことを
なんとなくへらへらごまかしながら
毎日楽しく過ごす方を優先させた。
そしてあるとき言ってしまった。
「あんたとは合わないんだよ」
それ以降、すっぱりその人は私と話さなくなった。
私は動転した。
私のあの一言がそんなにも影響があったなんて。
私にとっては思い切って言ったという言葉でもなかった。
衝動的に口から出てしまったというようなものだった。
だからなんでこの人がたったこの一言で
急に私を拒絶したのか全くわからなかった。
そのあと、私はたくさん弁明をしたけど
一切聞き入れてはもらえなかった。
そしてその人は間もなく会社を辞めた。
私とこの人が会うことは二度とない。
修復できなかった。
私にはこういうところがある。
誰かに対して人の気持ちがわからないと
イライラすることがあるが
私自身が全く人の気持ちがわからないということを
このところ痛感している。
言葉はナイフになる。
たった一言で取り戻せないような傷をつける。
それまで何年も仲良くやってきたと思っていた。
それをたった一言で。
それは私が自分の気持ちをちゃんと相手に伝えていないからだと思っていた。
我慢し続けてきたから、臨界点で破裂してしまったんだって。
これは社内では何度もしてきた経験だった。
でもそれまでの経験は相手との関係を壊したくないという思いはなかった。
恨んでいたからこそ、破裂したと思っていた。
大切な人を言葉で失わないように
これは私の深い心の傷ではあるが
思い出すたび胸が痛むが
もうこんな過ちはしないと
深く心に刻んだ出来事だった。