両親に断られて夫と二人で公園に行った日、
菖蒲がずいぶん咲き揃っていた。

そもそも菖蒲を見せたくて
両親を誘ったのだった。

土曜日ということもあり
ずいぶん人が出ていた。
初めて駐車場に誘導の人がいた。

ずいぶん風の強い日だったが
お天気は良かった。

「こんな大風の日にずいぶん人がでますねー」
後ろの方でどこかのおばあちゃんの声がする。
知り合いの人と話しているのだろうと思った。

菖蒲の写真を何枚か撮って
別のエリアに移ろうとすると
また同じセリフが聞こえてくる。

振り返ると鎌を持ったおばあちゃんが一人で立っている。

「そうですね」と答えると
色々話しかけてきた。

手に熟れすぎた梅の実を2つ持っている。

夫に「おいしいですよというわけにはいかないですよ」と言って
渡してくる。

夫は
「これは食べられないよ」と言っているけど
おばあちゃんは同じセリフを繰り返している。

夫はひとまず受け取った。

いつもだったら私にすぐに助け舟を求めてくるところだが
初めて一人で対応している。
おばあちゃんの話を慣れた様子で聞いている。
自分のおばあちゃんと話しているみたいだ。
ここに植わっているこの大きな木が苗のときに植えた話とか。

しばらく色んな話をして
おばあちゃんも嬉しくなってしまったのか
「おあいそでもしたいところだよ。
 すぐそこなんだから。(すぐそこに住んでいるという意味だろう)」

「おばあちゃん、向こうを歩いてきますね」夫が言うと
「歩いてくるって車で来たんでしょう?」と言っている。
「うん、歩いてくるから。お元気で」

こんな風に私に頼らず他人に接している夫を初めて見た。

やはり人によるのだろうか。

自然体で話せる相手とそうでない相手。

こんな風に誰とでも自然に話せたら
ずいぶんと生きやすいだろうな。