一年程前のことだが、たまたま何かで年配の女性が日常着として作務衣を着用している写真を見て、いいなと思った。

作務衣のようなものって、旅館の浴衣とか、人間ドックやレントゲンなどの時に着る衣服とか、そういうものしか着たことがない。
私も、作務衣を日常着にしたいなと思ったけど、なぜかハードルが高くて実行できず、今の自分には無理だ、こんな生意気な趣味をするのはまだ早い、もっと歳を取ってからの楽しみにしようと元々の純粋な憧れに難癖をつけ却下し、放置していた。
 
だけどこの前、放置していたこの願望の事をふと思い出し、もう一度自分に相談した。
 
作務衣なんて着た事ないし、ちゃんと着れるかどうかわからない。着心地がいいかどうかもわからないし、似合わないかもしれない。そんなの着ていたらヘンかもしれない。
 
でも…試しに一着だけ買ってみようかなと思った。失敗するかもしれないけど…。
今だってもう年配だし、わざわざ楽しみを先までとっておきたいのは何のためか?と考えたら何も理由はなかった。ただ、やった事がないから怖くて不安なだけだった。大袈裟かもしれないけど、未知の世界に触れる恐怖もあった。だけど勇気を振り絞って、いいんじゃないかと考え直し、ネットショップで茶色の綿の作務衣を購入した。
 
数日後作務衣が来た。わーなんかいい感じ…和風な感じにそそられ、袖を通してみた。
 
上衣も、下のズボンもぴったりで、まだ新品で数秒前に着たばかりなのにもう数十年も着ているような感じで体になじみ、自分の体の一部みたいにフィットしてきて、すごい!と思った。
やはり、日本人の体型や日本の気候に合うように形作られているからなのか、こちらが合わせようとしなくても作務衣の方が自然にこちらに添って合わせてくれる感じ…
 
日本人だけど和服とは無縁の生活をしてきた私にとって、この上衣の形は、はじめは少々突飛に思えたが、着れば着るほどその着やすさに感動する。
 
しめつけなく、ゆったり着れて、襟元や袖、腹周りや足元から空気が通り、快適。
夏には本当にいいと思います。
 
まだ日常着として着られる程に着こなせず、今は寝巻きとして風呂上がりに着用しています。
 
昼夜問わず、和服を着て生活できるようになりたいな…と思ったけど、昼間に着たいなら着ればいいんだと今気付いた。昼間に着てはいけないという変な思い込みがあった。抵抗に逆らい、昼間も着てみよう。
 
奥の深そうな和服の世界に、ほんのちょっと触れただけだけど、もっと覗いてみたいなと思った。