
「あさっての夜、フランスに行く。
5年はベナンに帰ってこない。」
そ、そんな・・・。

彼とは、1年前のアブランクーでの
エコツアーで知り合った。
フランス人の彼女と参加しており、
今年めでたくその彼女と結婚したのだ。

フランスで一緒に暮らすために
ビザを申請している、と聞いてはいたけれど
まさかこんなに早くビザがおりるとは思わなかった。
その電話を受けるつい数日前に、
彼の家に遊びに行って色んな話を聞いたばかりだった。

彼は8人兄弟の長男で、
田舎に生まれ本当に貧しい生活をしていた。
学校も学費が払えず卒業ができなかったし、
家ではいつも料理や洗濯など
お母さんの手伝いをしていた。
彼はコトヌでタクシーの運転手をしていた。
お金が無いときは、バイクタクシーの運転手をして日銭を稼いだ。
そんな時、学校の研修でベナンに来ていた、
そのフランス人の彼女と知り合ったのだった。
「彼女が僕の人生の全てだ」 と
言い切るほど今では奥さんとラブラブなのである。
初めは、フランス人がどうしてわざわざベナン人、
しかも身分が高いわけでもないタクシーの運転手と
結婚するのか不思議で仕方がなかった。
その理由が、今なら分かる。
彼は絶対に嘘をつかないし、
ベナン人としてはめずらしく時間をきちんと守る。
仕事に誠実。
私が嫌だと思うことをやらないし、言わない。
私のことを1人の友達として見てくれ応援してくれる。
そして何より話が合うのである。
彼曰く、お母さんの教育と
色んないい出会いが
自分の性格に影響を与えたのだという。
貧しい家に生まれた彼は、
みんながどんなに手に入れたくても手に入れられない
フランス行きのチケットを今手に入れた。
真面目に誠実に生きてる人を
神様はちゃんと見ててくれてるんだなぁって思った。
けれど、こんな大事なことを
私以外の友達誰1人にも言わないで
こっそりフランスに旅立つらしい。
焼きもち焼きのベナン人が行う
グリグリ(アフリカ独特の呪い) が怖いからなんだって。
大きな荷物のリュックも他の家に隠して、
こっそり準備をするという徹底ぶりであった。
私がベナンに来るときは、たくさんの友達が
送別会をしてくれて応援してくれたけど、
ベナンの文化ではそうはいかないらしい。
誰か1人がいい思いをするのを嫌う、
出る杭は打たれる文化なのだ。
なんだか寂しいな・・。
出発の当日、お別れを言いに行くと
彼は半年後私が日本に帰るときに
フランスの空港で会ってくれることを約束してくれた。
彼は私が心から信用できる
数少ないベナン人の友達の1人。
本当に本当に寂しいけれど
半年後、フランスの空港で
幸せいっぱいの2人を見られるに違いない。
