ケーキ王子の名推理(スペシャリテ)読了。

「ぼくは今日、明日のきみとデートする」で出会った七月隆文さんの作品。
繊細で淡く、水彩画のような言葉での描写がとても好きだ。


時々、本当に時々、
突然本を読みたくなくなる時がある。
読もうと思わなくなる、と言うべきか。
つい昨日までは読んでいたのに、読みたいと思っていたのに、
なぜか急に読みたい気持ちが消え去る感じ。
それがちょうど一週間くらい前に来た。
毎日読んでいたのに、新しい本も買って早く読みたいと思っていたのに、
ふっと消えて無くなってしまう。
そんな風になると何だか心に冷たい風が吹き抜けるみたいで寂しくて、世界が少しだけ小さくなった気がする。
そうやって一週間が経って、それでもやっぱりあまり読みたくはなくて、でもこれなら軽くさらりと読めるかも、と手に取ったのが
「ケーキ王子の名推理」だった。
悲恋が大好きな私は、正直そんなに心に残りそうな作品ではないかな、と思っていたのだけれど。
でもやっぱり七月さん作品なら、というよくわからない諦めと期待と一緒に読んだ。


軽やかでふわりと笑ってしまうようなテンポの良い未羽と颯人の会話が心地よくて、
細やかだけど大胆で、頭の中にイメージがどんどん浮かんでくるようなスイーツの描写。

ベタな展開だけど、パステルカラーで彩られた(ように感じる)言葉たちが
未羽や颯人たちそれぞれの心を私に見せてくれる。

彼氏に振られてもやっぱりスイーツが大好きで、結局スイーツの方が大事!な未羽の純粋さや強さがかっこよかった。
そう考えると未羽は颯人よりもずっと大人っぽいのかもしれない。
颯人はスイーツ関わる時、普段の"冷酷王子"とは違ってとてもまっすぐで、パティシエになりたいと思ったきっかけの日から変わっていない純粋さがあって、なんだかんだで未羽を気にしたりと優しくて、これこそ本物のイケメンか、と(笑)

未羽が言った、「美味しいケーキを食べた」という幸せ。
「悲しい気持ちをすうっと溶かして、幸せ気持ちに変えてくれる」。
この物語を読んで、その気持ちがわかった気がする。
本を読みたいと思えなくなって、寂しかった心をふわりと溶かして、
あたたかくて甘い気持ちで満たしてくれた。